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株価の大底はいつ?

【考察をした背景】

【自己紹介】
バイオ系の大学院を卒業し、不動産業界の片隅+αで生活しており、主な投資対象は指数先物(日経平均/米国/欧州)+日米個別株です。アクティブなのは指数先物で、個別株は年単位で保有しているものが多いです。

【株式市場の大底予想の意義と限界】
今年は下落相場です。1か月以上の下落が続いたり、売りの勢いが強くなると、このまま大底に行く!暴落する!といった暴落論者が湧いてきます。
注意深くそういった人たちの情報発信を見ると、暴落!暴落!を連呼しています。株価下落の勢いが強くなると2008年のチャートを持ち出し、適当に縮尺をいじって、類似性を唱える元ヘッジファンドマネージャー、元トレーダー、経済評論家等を名乗る人たちがいます。
相場の8割はレンジ相場と言われているので、上記の暴落論者は8割の確率で外しますが、彼らを信じて大底でショートしても自己責任です。
今回だけは違うからこのまま大底に向かっていくのか?いつも通りレンジ相場なのか?前者には理由があることが多い印象は受けますが、理由はどうでもよくて、相場の方向性を当てることが大事です。
経験上、下落局面では心理的に暴落に傾きがちです。我慢できずに中途半端な位置からショートすると、下落相場名物の激リバで踏み上げられることになります。これにやられて痛い目にあったことが何度もあります。精神的・資金的に耐えられれば、5%以内の損切で済み、プラチナチケットを入手できますが、確固たる相場感、忍耐力、一定程度の時間が必要になります。
喉元を過ぎればネタに出来ますが、投資効率が悪いです。
株式市場からだけだと相場の大底予想が筆者には難しく、たまたま関わりのある不動産市場が株式市場と密接な関わりがありそうだというのが、この考察のスタートです。
また、コロナショックのように急激に来るショックは、不動産関連指標の動向からは考察できないのが、この観点からの考察の限界です。
またリーマンショックは金融危機、コロナショックはサプライチェーンの崩壊による危機と言われています。次の暴落はQTを続ける中で、FEDと市場との対話がうまくいかなかったときに来ると予想していますが、正確にはどのような危機になるかは予想がついていません。
不動産市況とは無関係なところで大底の予測ができる方には、以降の考察は無意味ですので、どうか別のことをなさってください。

【不動産指標は遅行指標】

株式市場に大きな影響を与える米国不動産市況を中心に株価との関連を、日本の不動産業界のすみっこで働いている者の視点から考察していきます。
そもそもの不動産価格変動の基本ロジックは、
金利低下⇒収入に対する融資枠アップ(住宅取得能力増加)
⇒価格上昇です。
ヒトの足元を見ているふざけたロジックですが、これが現実です。現代の先進国における金利と不動産価格の関係性(多少のタイムラグはあります)でこの例外を知りません。(反例を御存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。よろしくお願い致します。)
経済指標CPIを見ると、高騰が止まらないのが住居費です。
FEDが目安にしている遅行指標ですが、株式市場と異なり、不動産市場にはリアルタイム指標がないため頼りにせざるを得ません。
以下では、不動産関連の経済指標を基に考察を進めていきます。
株式市場が下落局面であっても、不動産市場が崩れないと株価の大底にはなり得ません。
調べてみると、価格高騰が顕著だった米国西海岸や大都市部といった人気エリアで価格高騰が止まり、売却のために値引きすることも始まっているという情報があります。
不動産は株以上にシビアで、市況が悪化すると買い手がサーっと引いていき、なかなか損切りできなくなります。
不動産関連の経済指標が、大都市圏を対象としていたり、所有・賃貸をわけてデータ収集したりして、データの表面だけを見ていると終わりの始まりをとらえるのは難しいです。
そんな不動産関連指標で先行指標と言われているものはいくつかあります。
M2成長率、供給月数(販売数と在庫からの住宅の在庫解消までの期間予測)、30年もの住宅ローン金利スプレッド(30年もの米国債と住宅ローン金利のスプレッド)、新築住宅販売数、供給月数(Month’s Supply)、ケース・シラー住宅指数、債務比率、質の悪い不動産関連金融商品の動向あたりです。
直近の不動産市況の下落局面であるリーマンショック時とこれらを比較ていきます。
比較する前に、リーマンショック時との違いに触れます。ここで比較と予測の限界を感じてください。

【リーマンショック時との違い】


①不動産価格高騰したエリア:
リーマンショック時:都市部に限局
今回:全米
史上まれにみる金融緩和の影響で、資金が投資先を求めて全米の不動産価格が上昇したと言われています。
②債務構造:
リーマンショック時:家計に多い
今回:政府部門に多い
単純な比較はできません。債務に詳しくないので、ここで語ることもできません、申し訳ありません。

【先行指標の比較検討】

では、本題です。
指標の動向を見ていきましょう。
以下の①-③は特に有用な先行指標と言われていて、頭打ちから数か月遅れて不動産価格の上昇が止まると言われています。
【不動産関連指標(米国)】
①M2変化率
2022/10 M2は減少傾向
情報元リンク

実質M2マネーストック
Real M2 money stock (2022/10/22更新)  


②30年もの住宅ローン金利スプレッド
2022/10 住宅ローン金利、米国債金利上昇中、スプレッド上昇中
30年住宅ローン固定金利
情報元リンク

米国30年住宅ローン固定金利
米国30年住宅ローン固定金利( 2022/10/22更新)



③供給月数(Month's Supply)
在庫と販売ペースに基づく在庫の消化期間
2022/10 中古供給月数は横ばい、新築供給月数は上昇トレンド継続中

新築住宅データ:8.1⇒9.2は販売ペース鈍化が影響している(2022/10/27)

情報元リンク(中古住宅)
情報元リンク(新築住宅)

供給月数(中古住宅)の推移
供給月数(中古住宅)の推移(2022/10/22更新)



供給月数(新築住宅)の推移
供給月数(新築住宅)の推移(2022/10/27更新)



④不動産関連商品の動向
リーマンショック時のような火種になるような(クレジットランクが低そうな人たちを対象とした)商品は、あることにはありますが、SDGs風のいい商品を装っていて、まだ広く知られていないと思います。ゼロヘッジに記事があります。
記事リンク

不動産関連のゴミ金融商品
黒人・ラテン系を対象としたローン

➄住宅販売数
新規住宅販売数
情報元リンク

米国新規住宅販売数
米国新規住宅販売数(2022/10/22更新)





⑥ケース・シラー住宅指数


⑦住宅ローン延滞率
延滞率は長期的に見ても低いレベルで推移している。

【考察】

低金利になってタイムラグを伴って価格上昇するのが不動産価格の基本ロジックですので、今の価格高騰はオーバーシュートと言えます。
異例の規模まで膨らんだM2は不動産価格の下落を一定程度押しとどめる作用は持っている。しかし、金利上昇と価格上昇が共存し続けたことはありません。
価格下落の目処はわかりません。
リーマンショック時は、直近の高値から70%下落しましたが、今回は異例の規模の金融緩和で資金があふれています。単なる価格下落だけでない可能性があります。例えば、5-6年にわたって今と同レベルのインフレが続き、価格が下落すれば実質価格は約1/3になります(インフレ率6%/年と仮定して試算)。
住宅ローン延滞率は低く、クレジットスコアの低い層が大挙して購入していたリーマンショック時とは構造が異なります。

住宅ローン金利上昇でローン支払い額が増大、住宅取得能力は低下する。
販売がじきに落ち込むでしょう。
CPIには賃貸部門も含まれており、不動産の販売価格が下落しても家賃には反映されにくい(下落前の価格で取得しているため)。便乗値上げは容易に起こる(それでもローン金利の上昇よりはマシ)が、値下げは起きにくいのが賃料のやっかいなところです。
販売価格下落=CPI住宅部門の安定化、とする論調が一部にあるが、それほど単純ではないです。
だから、制御困難なインフレがしばらく続くと、高金利状態も続き、不動産市場は長い冬になります。リーマンショック後の不動産業界の長い夏は終わりを迎えようとしています。
景気後退とインフレが落ち着く兆しが見えるまでは、不動産は良い投資対象とは言えません。ワンルームマンション販売会社を始めとする不動産業界は、投資するカモを見つけるために、(高インフレ下であれば)”リーマンショック時よりも価格が下がらない⇒不動産は安定性が高い資産である”等のプロモーションを行うことが予想されます。いうまでもありませんが、実質的な価値は毀損しており、詭弁です。
そもそも寄ってくる商品はゴミという投資の基本に立ち返れば、このような勧誘は一蹴です。


【結論】

株式市場の大底はまだ先です。
2023年以降だと思いますが、いつになるかはわかりません(2022/10/20時点での予想)。

米国CPIの住居部分は年末から年明けにかけて上昇が止まる(2022/10/20時点での予想)。




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