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トム・ハンクスの「幸せへのまわり道」はコロナ禍で疲れた心を癒してくれる名品だった "A Beautiful Day in the Neighborhood"

トム・ハンクスの新作映画「幸せへのまわり道」"A Beautiful Day in the Neighborhood"(19年)は、日々の生活に疲れたオトナの心を癒してくれる名品だった。ぼくは香港のNetflixで観たが、あまりによかったので、2回続けて観てしまったほど。

なんといってもトム・ハンクスがいいのだ。2020年度アカデミー賞およびゴールデングローブ賞助演男優賞ノミネートも納得である。両方ともブラピに取られたが(「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で)、この役はトム・ハンクスでなければ、説得力がなかったろうと思う。

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原作は、雑誌「エスクァイア」に掲載された”Can you say … Hero?”というカバー・ストーリー。事実に基づいた話になっている。
1998年、記者ロイド・ボーゲル(マシュー・リス)は華々しく活躍していたが、ある日編集長から、とあるヒーローのプロフィール記事を書けといわれ、その取材相手が、長年続いている子供向け番組「Mister Rogers’ Neighborhood」の司会者フレッド・ロジャース(トム・ハンクス)だと告げられる。しぶしぶながら受けた仕事だったが、やがて取材相手と記者という関係を超えた深い交流が始まる。

記者ロイドは、絶縁している父(クリス・クーパー)を許すことができない。フレッドは初めてのインタビューで、ロイドの抱える問題を感じとる。
この映画の良いところは、子供番組のカタチを借りて、子供に教えるようにシンプルな言い方で、生きていく中で大事なことを押し付けがましくなく教えてくれるところ。

トム・ハンクスの、まるで生仏(いきぼとけ)のような(英語では、’Living Saint’と言っていたが)たたずまいと、ゆっくりとしたやさしい話し方。こんな人が近くにいてくれたら、どんなに楽になるだろう。どんなにありがたいだろう、と思いたくなるような人だ。

フレッドの妻は「彼だって怒ることもあるのよ」と笑うが、フレッドは怒っても、それをどう自分で処理するのかを知っている人。「怒ること」「許すこと」「愛すること」それらを考えて行動すれば、どんなに人生が楽になることか。映画を見てるだけでそれがわかってくる気がしてくるから不思議だ。

音楽も、穏やかな気持ちになる使い方だし、実際のTV番組でも使っていたのだろうが、ミニチュアの街の造形もなごむ。作り方もファンタジーのようで感動を呼ぶ。地下鉄の子供たちの歌声もうるっと来た。

コロナをはじめ色んなことで心が疲れてる人は、この映画を観ると、少しは心が楽になると思います。精神を落ち着かせる薬を飲むより、酒を呑むより、109分のこの映画の方がおすすめです(← ※個人の感想です・😄)。

日本では2020年8月28日劇場公開。

てなことで。

【追記】

※ネタバレあり

(なぜ最後にピアノを弾くのか?)

ラストのラストで、フレッド・ロジャース扮するトム・ハンクスは、テレビの本番を終えた部屋のセットを出て、スタッフと少し話してから、一人でグランド・ピアノへ向かう。そして、セット内の電気が暗くなる中「ダン!ダン!」と鳴らして、ピアノをまた弾き始めるところで、映画は終わる。

ぼくは最初、この場面はなくてもイイんじゃないか?余計なシーンじゃないか?と思っていた。だが、よく考えてみると、ここでのトム・ハンクスは、何かに怒っていたのだ。今まで一回も怒ったことがなかったのに、怒りを発散させるように鍵盤を叩く。つまり、彼も一人の人間だよ、といいたかったのだろう。決して「生きる聖人」ではない、生身の男だという(ある意味夢を壊す、残酷な)締めくくりだったのだ。そういう意味で、奥の深い映画だと感心したのでした。

(日本語字幕はありません↑)


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