ERP会計:1-11「日本企業の予算管理の実態」

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 企業予算制度研究会による10年ごとの調査に基づく著作。タイトルには ”ERP” の文字は無いが、随所に、ERPが予算管理実務に与えた影響・貢献が、各種調査により明らかにされる。

 以下、本書のポイントをいくつか紹介しよう。

 2012年調査では98.8%の企業が予算制度を持っている。が、右肩上がり経済の時代が終わり、企業の経営計画策定のあり方にも変化があった。

 ひとつ目は、計画対象とする期間が短くなったことだ。92年調査では5年以上の長期計画を作る企業が約半数だったのに対し、2002年には2割を切り、2012年も18.8%に過ぎない。逆に、5年未満の中期計画は92年の70%が2012年は87.2%と、より短い期間で成果をだすことが求められるようになっている。

 ふたつ目は、管理メッシュが細かくなったことだ。かつては成長率や市場シェアへの意識が高かったものが、昨今の管理対象の中心は、売上(2012年に75.5%)や売上高利益率(同52.2%)という自社の数値となり、これをより高い頻度で管理(月次管理の割合が、92年の55%が2012年は68.5%)するようになった。

 このような変化があったものの、現状の予算制度に満足している企業は全体の31%に過ぎない。最も多くの企業が上げている課題が、環境変化に対する予測の困難性だ(7割超が選択)。

 一方、予算編成や修正に際してのデータ収集については、大幅に省力化が実現された。本書では、そうした領域で特に有効だった施策として、ERPの導入が挙げられている。月次の予実差異分析をおこなう企業が全体の85%を超えるが、ERP導入により、同業務に要する期間が10.6日から8.5日と、2日以上の短縮を実現したとのことだ。

 ただ、ERPを導入した企業(2002年は導入済み30%と検討中35%が、2012年は導入済み42%と検討中21%)でこうした成果が出ているにも関わらず、「導入するつもりはない」回答は両調査でともに35%と、引き続きERPに懐疑的なラガード集合での動きは鈍い。

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