ERP会計:3-2 キャッシュ・マネジメント・システム(後編) ネッティング

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 必要な資金をグループ内で融通することで、資金総量を小さくしようというのがプーリングだった。
 今回の「ネッティング」は、相互に売買取引のある複数の企業間で、お金の支払いと受け取りを、定期的に相殺し、差額分だけを支払う手法だ。
 友人間で、この間は私が8千円立替払いした。今日はあなたが1万円払ってくれたので、差額の2千円を払うね…というようなケースをイメージしてもらうと分かりやすい。
 2者間だけだと、さほどメリットが大きくないように思えるかもしれないが、当事者数が多くなったり、海外送金がからんだりすると、その効果が大きくなる。具体的に見てみよう。
1) 送金手数料の削減: 「相殺」を行わずに、双方向で送金を行えば、送金の都度、手数料がかかる。多角形の対角線をイメージして欲しい。4者間で取引があった場合には四角形の辺4本と対角線2本で計6本の往復で12回、5者間なら五角形の辺が5本と対角線5本で計10本の往復で20回の送金が発生する。これが差額決済なら、4者なら4回、5者なら5回の送金だけで済む。
2) 外国為替手数料の削減: 加えて、海外(外貨)での取引だった場合、円ドル、ドル円などの、為替手数料が送金の都度かかってくる。送金回数を少なくすることで両替の回数を減らせることに加え、相殺により送金額自体も小さくできるので、為替手数料も小さくなるという理屈だ。
3) 事務負担の削減: 送金回数が減らせれば、入金の消込や、口座入出金の付け合せ等の事務作業も減る。
4) バランスシートの圧縮: 資金繰り実務において、売掛金が満額支払われないケースに備えて、手元に余裕資金をおいておく必要がなくなるため、その金額分、BSを小さくでき、寝ているキャッシュも少なくできることになる。
 ERPと連携する形で、こうしたサービスのみを専業で提供するサービスプロバイダも存在し、メジャーなところではKyriba社などが知られている。
https://www.kyriba.jp/dictionary-j/multi-ERP-j

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