ERP会計:1-6 ビジネスアプリにおける音声認識入力の応用

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 先に閑話休題と称し、このサイトを執筆するのにスマホの音声認識機能を利用していると書いた。この音声認識、もっと他の事にも使えないだろうか。例えばERPをはじめとするビジネスアプリケーションへのデータ入力である。
 ERPへのデータ入力と言うと、まずは仕訳入力等の会計画面を思い浮かべたかもしれない。が、実際にはそれ以外のデータ入力のシーンの方が桁違いに多い。受発注、入出荷、生産指示等、現場で利用されるデータ入力では、ほとんど会計・勘定科目などというものは登場しない。
 中でも、もっとも利用者の多い画面のひとつは、経費精算だろう。アプリを起動し、「〇月〇日、〇〇社様訪問、タクシー代、1250円、新宿事務所からお客様先(渋谷区)へ」とか「〇月〇日、〇〇セミナー参加のための交通費、170円、メトロの新宿から四谷まで」等と口にすれば、そのまま日付、費目、金額、摘要等に展開される。不足項目があればチャットボットの機能が、「摘要欄の乗車区間はどうしますか?」などと聞いてきてくれる。領収書が必要なものはアプリからカメラに連動し、その場で取り込める。30秒もあれば、精算申請が完了だ。
 さらに言えば、上記の情報のほとんどは、ICチップ等からの連動で自動的に取り込むことができる。訪問先の顧客情報等の移動目的も、電子カレンダーに登録しておけば、後は予定と移動の実績情報を紐付けるだけ、といったところまで理論的には省力化が可能である。
 メリットは入力者だけにとどまらない。管理部門側でも、AIが摘要入力の不備をその場で指摘してくれれば、入力不備等について、後日、申請者に個別に連絡を取るなどといった、手戻りや時間のロスも発生しない。カレンダー情報と同期させておけば、経費精算忘れを防ぎ、さらに入力処理を促すことで月次決算の早期化も期待できる(注1)。
 交通費精算と同時に、SFA(営業進捗管理システム)の顧客訪問履歴にもデータを展開し、今回の顧客訪問ではどんな会話を交わしたかといった情報も、簡単に蓄積することができるようになる。あるいは余計な一手間が加わると感じられるかもしれないが、これまでなら社に戻って口頭で、あるいは週報等のフォーマットで上司に報告を行っていたわけで、行き帰りの隙間時間で、こうしたことが代替できるというのは大きな生産性向上につながるだろう。
 さらに蓄積された顧客との会話データについては、その内容をAIが自動的に判定(好意的な反応があったのか、逆にいまひとつウケが悪かったのか)、全営業担当から同様のデータを集めることで、会話内容とその反応についてのABテストを瞬時に行うことができる。ウケの良い話に特化すれば、自ずから営業成績も改善されるというものである。
 これらは決して夢物語では無い。部分的にせよ、すでに実用化され、実運用も始まっている、現実の話である。そして、さらにこの先もIoTセンサー技術や、ブロックチェーンの活用など、ビジネスシーンのあり方は大きく様変わりしていくことだろう。

注1) 既に冒AIスピーカーでは、カレンダー情報と現在位置と行き先のマップ情報を掛け合わせ、時間になったら、そろそろ電車に乗るために駅に向かってくださいといったガイドが、プッシュ型で自動アナウンスされるという段階に来ている。
活用例記事: https://www.dekirutabi.tokyo/entry/2019/01/31/224734

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