ERP会計:1-4 ERPにおける会計処理 仕訳

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 先に見たように、ERPで会計処理をおこなう場合、仕訳(明細データ)に多くの属性情報をもたせておくのが一般的だ。これを手作業ですべて入力するとなると相当な労力が必要だが、ERPでは自動仕訳と呼ばれる仕組みを使って、これを自動化する。例えば売上であれば、事業部門、取引種別、品目等を指定すれば任意の勘定科目を割り振れるよう「パラメータ設定」をおこなう。ここで部門や取引種別毎に異なる勘定科目(内訳科目)を設定しておき、これを足し上げる勘定科目(合計科目)の親子関係もパラメータで設定する。制度会計上は合計科目レベルで報告するが、管理会計上(日々の業務分析等)には内訳科目を使用するとか、後日、新たにセグメント分類が必要になった(注1)というような場合でも、この親子関係のパラメータを設定変更するだけで済む。
 この自動仕訳の仕組み、当然のことながらERPが実装する受注・発注・入金・支払い等の業務システム(業務モジュールと呼ばれる)を利用すれば、そこでの取引の変更や取り消し等も含め、適切な会計情報の生成=仕訳作成がおこなわれる。逆にいえば、手作業で借方・貸方双方の勘定科目を意識して、振替仕訳を起こさなければならないケースというのは、ERPではきわめて限定的となる(注2)。
 他方、たとえば百万人単位の会員がいる電子商取引サイトを運営している企業が、請求入金を含む同サイトの運営管理システムはERPの外で運用したいと判断する場合もあるだろう。このようなケースでは、従来は、あらかじめ仕訳の形に編集したデータをERPに流し込むことで、会計情報として反映するというのが一般的だった。このアプローチだと、はじめに見た業務と会計のプロセス統合はある程度自動化できるものの、データ統合のほうは望むべくもない。ある日の売上が通常の変動幅を超えて落ち込んでいるので原因分析したいと思っても、元となる業務システム側にしか明細データは存在しない。
 こうしたケースに対応するため、ERP側に明細データを溜め込む仕組みも実装されてきている。すなわち、業務データ(どこの誰に、何という商品が何個、幾らで売れたというような情報)をそのままERPに流し込む。ERP側ではこうした明細データを保持しつつ、受け取ったデータの管理項目の組み合わせから自動仕訳を判定し、貸借バランスも取った上で仕訳を自動生成するという機能である。海外展開や他店舗展開等、現業システムを置き換えることが容易でないケースでは、このような仕組みを活用することで、データ統合のレベルを上げるというのも有効な選択肢のひとつだ。

注1) 企業が複数の事業をおこなっている場合、特定事業での売上や利益が全体の10%を超えるなど、一定の基準に達すると、これを独立のセグメントとして報告をしなければならないという規則がある。
注2) 管理項目がひじょうに多くなる結果、振替仕訳の入力画面が、従来の会計システムの多くで一般的だった貸借を「横方向」に並べる形式でなく、Excel表のように横方向に管理項目を複数連ね、行ごとに借方もしくは貸方を区分しながら「縦方向」に配置する画面レイアウトとなるのが一般的だ。見慣れない画面のため、当初は違和感を覚える向きもあるようだ。が、そもそも利用頻度が低いうえに、いくつもの管理項目を入力するには、実務上もこのほうが効率的なため、実際には運用開始後には慣れの問題となるようだ。

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