5-4 自動化ツールとERPの併用による売上げアップ 2023/3/13更新

業務の自動化においても ToC (Theory of Constraint) を考慮し、トータルでのスループットを最大化することを目標とせねばならない。

もちろん、自動化ツールを活用したEUC開発によって、個々の担当業務を自動化することで、余剰時間を創出することに意味がない、とは言わない。

が、一定規模の企業であれば、ひとりのタスクで業務が完結することは稀であり、1人の担当者の業務が効率化されたとしても、後続業務でボトルネックが発生した場合には、そこで滞留する未処理タスクが増えるだけで、当該ビジネスプロセス全体としてのスループットは上がらない。

一例としては、顧客から引き合いが来た際に、従来は担当者のAさんがメールに添付された情報を目で見て、手作業で後続システムに転記していたものを、メール受信をトリガーにOCRによる自動読み取りを行い、その結果を後続システムに自動転記させるようにしたとする。この場合、確かにこのAさんが引き続き担当すべきは、読み取りエラー等が発生した際のイレギュラー対応のみとなり、かなりの業務効率化が行われたと評価すること自体は間違いではない。

しかし、実務的には、この引き合いに対して、様々な後続業務が発生するはずだ。キャッシュフロー最適化の観点から、どんな引き合いが来ても満額回答できるような手元在庫を保有しているケースは少ないだろう。
そうした場合には、顧客の要望を満たすためには、倉庫間の在庫移動はできないか、仕掛り製品の完成見込みがいつで、その内、幾つをこの引き合いに割り当てることができるか(逆に、他の引き合いには割り当てられないようなコミットをかけるか)といった調整業務が避けられないはずだ。
そして、現実にはこちらの業務の方がより複雑で、上流のメール読み取りのスピードだけが上がっても、このプロセスでの滞留が増えるだけで、顧客引き合いに対する回答スピードがあがるわけではない。

結果、より迅速に回答が行えた場合に期待される、受注増や販売機会損失の回避といった、本来的なビジネス価値向上には、ほとんどつながらないことになる。
プロセス全体を俯瞰し、ERPが持つ情報の一元管理性をうまく活用しつつ、ドラム・バッファー・ロープの長さが適切に保持できるようなビジネス設計が重要である。

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