ERP会計:2-1 在庫はなぜ「悪」か? 不良在庫を焼却処理

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 ちょっと前に、エレキギターの2大メーカーのひとつGIBSONが、売れ残ったギター数百本をショベルカーで踏み潰して破壊したというショッキングな映像が話題になった(注1)。
 ギター愛好家からは強烈な非難の声があがったのだが、この手の在庫処分は、古くは2002年、その頃深刻な経営難に陥っていた良品計画社の社長に着任したばかりの松井忠三氏が、なんと100億円分の商品在庫を焼却処分、つまり燃やしてしまうという荒療治をおこない、その後のV字回復につながったという有名なエピソードがあるように、とりたてて珍しい話ではない(他にも、バーバリーや、H&Mも同様の処理をおこなったが、時代の違いか、こちらはネット「炎上」した例がある)。
 にしても当時の良品計画の売上はせいぜい1千億円ちょっと、その約1割に相当する商品を燃やしてしまったというのは尋常ではない(GIBSONのギターは1本50万円が4-500本あったおしても、2億円少々という規模だ)。
 では、なぜ、そこまでして、在庫商品を処分する必要があったのか? 一般には、社員の意識改革のための一種の演出と理解されているようだが、実は演出としての焼却処分は、実際には効果半分だったようだ。松井氏自身がインタビューで語っている。
 「マーチャンダイザーは欠品リスクに備えるために、どうしても在庫を多めに抱えてしまう。なので、焼却処分の現場にマーチャンダイザーを連れて行ってその様子を自分の目で見てもらいました。なのに、また半年すると在庫が溜まってきました。売れる量の倍作っていたからです。しかし二度失敗すると気付いてくれるんですね。今までの作り方では駄目だと。ここから改革に拍車がかかってきました。」(注2)
つまりショックを与えただけでは実質的な効果は上がらず、同じ過ちを繰り返している自分に気づいたときにようやく、人は変わることができたというのだ。
 以上、不良在庫抑制のためのインパクトのある施策として、破壊・焼却処分を紹介したが、実はまだ、どうして在庫が「悪」であるのかについては、いっさい説明を加えていない。次回は、その点を見ていこう。

注1)動画

注2)インタビュー記事 https://hiptokyo.jp/hiptalk/hiptalk_03_ryouhinkeikaku/

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