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【小説】未来から来た女(9)
キッチンから、微かに聞こえってくる。コーヒーメーカーが話すブツクサに起こされた。とにかく、寝覚めが悪い朝だ。未来の美穂だというばあさんが、脳に纏わり付いたまんまだ。『いま何時ごろだろう?』オレは、枕元にあるはずのスマホをまさぐりながら微睡んでいた。しかし、掌は一向に空を掴むばかりである。次の瞬間、勢いよく覚醒した。『ヤバい!』昨夜から、リビングのテーブルに置きっぱなしだ!でも、ここで下手に慌てると、美穂に怪しまれる。更にヤバい!ことになる。
神様!仏様!どうか美穂に覗かれてないように祈るばかりだ。昨晩、ふざけて彼女と裸同士でツーショットを撮って、確か消去していない。絶体絶命のピンチだ。機械オンチの美穂に望みを託す。
オレは、できるだけ平静を装いながら、リビングへ出る。頭をかきむしりながら、美穂の視線を気にしつつ、テーブルのスマホをそれとなく確認。とりあえず、トイレに向かう。しかし、心ここにあらず!で、出るべきものは、思うように出ない。不快のまま、リビングへ。
ソファーに腰かけながら、新聞に隠したスマホを、パジャマのポケットで確保する。この状態なら、一晩中、美穂の検閲を免れたようだ・・・が。
テレビのニュースは、昨夜の地震を報じている。「地震があったんだって・・・」オレはわざと、心の動揺を見透かされないように、世間話を振ると、美穂は大袈裟に、瞼をパタパタするばかりで、ノーコメントだった。。
そうこうしていると、未来の美穂だという、ばあさんの話が再開された。あのばあさんは、やっぱり!未来の私じゃないカモ!っていう美穂の真面目腐った顔に目がけて、オレはコーヒーカップを、美穂の方へ高く掲げながら、脳に纏わりついてる未来の美穂ばあさんを、思い切り剥がしてやった。それは、親指を立てて軽くウインクしたときの心境に似ていた。
ところが、それは束の間の勝利宣言だった。
ワタクシって、男運が悪うございましたの、というばあさんの言葉に託つけて、自分の男運は悪くないから、あのばあさんは、私の未来の姿じゃないんだよねって、オレの顔をしげしげと観る美穂。オレは視線のやり場に困ってしまった。『コイツ!何がいいたいんだ・・・』オレは俄かに雲行きの悪さを察知した。
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