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【小説】未来から来た女(10)

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新婚旅行か?大喧嘩して成田離婚・・・?
確かに、トレビでのコイン投げは、我ながら無様だった!後ろをよく確認せずに、コインを他人に投げつけてしまったっけ。謝ろうとしたら、外人さんだったので、手振り身振りでペコペコ平身低頭。美穂は、そんな男と連れだと思われたくないからと、人混みに雲隠れ。お互いを非難しあって散々だった。でも、考えてみれば、あの頃は喧嘩するぐらい、お互いに密な関係だったんだよなぁ~。
 それが、今はどうだい?お互いのことは、結構、無頓着になったもんだ。オレはそんな思いに耽っていたら、そのばあさんも、新婚旅行の土産に、マニアックにもイタリアでマービスの歯磨き粉をたくさん買って来たという。あまりにも出来過ぎた話に、居心地の悪さを感じはじめる悠太。オレは、美穂がつぎ足してくれたコーヒーが、カップに回転しながら増えていくのを眺め、千々に乱れる感情を隠そうと躍起だった。
 美穂が洗濯ものを干しに、ベランダへ出たすきにオレはBSをつけた。雲行きの悪さをかき消すためだ。ところが、その番組が悪かった。いい気になって解説者気取りになっていたら、干し終えた美穂が戻って来て、またばあさんの話を始めた。なんでも、ゴルフ好きだった、ご主人が、ある事件を境にピタッとやめたという。そして、オレにも最近、とんとゴルフに行かないのねと来た。雲行が悪いどころか、土砂降りになって来た。
 メタボで醜男のクセになぜかモテるという。それが、ばあさんのご主人ってか?それって、全くオレのことだろうが・・・。オタクの旦那さんは?って聞かれて、ご婦人の趣味はありません!って、美穂は胸を張ったって?美穂のヤツ!なにを?どこまで?知ってんだい?よそのご婦人に、少しは・・・いや大いに興味ある悠太は、忸怩たる思いを抱きつつ、俄かゴルフ解説者を演ずるのである。


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