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【小説】未来から来た女(12)

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「悠太!アイとは終わっていなかっのね」

 悠太の胸に美穂の鋭い言葉のヤイバが、グサリと刺さった。観念して血の気が引く音が、辺りに充満するほどの、急激な憔悴さが悠太を襲った。でも、悠太は辛うじて、「なに?言いだすんだよ!」と、乾ききった唇で言った。「なによ!何にも知らないと思ってんでしょ!」悠太は、その場に立っているだけがやっとで、美穂にそれ以上返す言葉がなかった。「・・・」
「私って?悠太のなんなの?妻なんかじゃないよね・・・」「・・・」
「確かに、アイは美人だし、スタイルもいいし、良家のお嬢さんだし、私より魅力的だし・・・悠太が大学時代から付き合っていたことも知ってるわ・・・」「・・・」「でも、私と付き合うようになって、終わったんだって・・・言わなかった・・・」「終わってるよ・・・とっくに」悠太の弱々しい言葉は、今の美穂にとって、取るに足らない応戦だった。
「初めは勘違いかとも思ったけど・・・女の感は確かだった・・・」美穂は、さっきのアイからの電話で、確信したという。悠太と逢って、遅く帰した翌日には、必ずと言っていいほど、二人の逢瀬が美穂に、バレてないかの確認電話が、入るのだと言った。悠太は聞きながら、アイのいじらしさに惹かれていく自分に、やるせなさを抱いていた。「どうなのよ?悠太って嘘つき!」「言ってるだろうが!終わってんだって!・・・嘘つきはオマエの方だろうが・・・」「なにが?嘘なのよ」「未来の私なんかを引っ張り出してきて・・・」「なによ!嘘なんかじゃないよ!」「タイムマシーンでもあるまいし、この世に居るわけないだろう!未来の美穂が・・・」「私の優しさが、未来の私を連れて来たんだから・・・」「・・・」悠太には美穂の優しさって言う意味が、まるで理解できなかった。

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