見出し画像

【小説】未来から来た女(13)

☜【小説】未来から来た女(1)から読んでみる

「そうか?オレのスマホを見たんだな!」

「私が・・・いつ?見たって?」「ゆうべ、オレが寝たあとだよ!リビングのテーブルの上に置きっぱなしだったから・・・見たんだろう?」「悠太のスマホの何を見たって言うのよ!」「・・・」無反応の美穂の表情を観て、自ら墓穴を掘ってしまった!ようだと、悠太は慌てた。「見られてマズイことでもあるの?」「・・・あるわけないだろう!」「だったら見せないさいよ!」「・・・」「見た!とか見なかった!に拘るようだから・・・見られてマズイことがあるってことでしょ!」
 最悪の状況に回避策が見出せないまま、あっさり美穂にスマホを渡す羽目になってしまった。最後の望みは、美穂の機械音痴に頼るしかなかった。ところが、アイとの画像を見つけ出されるのに、時間はかからなかった。
 次の瞬間、悠太は自分のスマホが飛んで行くのを、スローモーション映像で観ていた。「ガシャン!」美穂が投げつけたスマホは、サイドボードのガラス扉を突き破り、はずみで床に転げ落ちる。すぐさま、悠太は駆け寄って、蜘蛛の巣状態になった液晶画面を撫でながら、「壊れちゃった!じゃないか・・・」とつぶやく。「あなたって!いう人は、・・・スマホと私と、どちらが大切なの・・・」美穂は涙声でか細くいう。アイと悠太の愉しそうなツーショット画像で、今の今まで、思い違いであって欲しいとの微かな願いが、打ち消され、現実のことになってしまった。せめて、お相手の女性が、アイ以外であってほしかったと思う美穂である。
「未来から来た女」だなんて創作して、悠太に改心を促そうとした優しさは、成果を結ぶどころか、悠太との仲を壊してしまいそうになっている。
 きのう、交差点で、躓いて実際に抱き付かれた老婆が、あまりにも私にそっくりだったから、「未来から来た女」を創作してしまった。真正面からだと、どうしても感情的になり、罵声の浴びせ合いになるのを、避けたかったからだ。大好きな悠太が、自分の前から居なくなるのが怖かったからだ。


【小説】未来から来た女(14)へ読み進める ☞

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?