配偶者居住権2~評価方法

評価方法

  遺産分割などにおいて配偶者居住権の評価方法については、民法には規定がありません。

 法務省の民事局のサイトに掲載されている資料には「簡易な評価方法の考え方」として、

 建物敷地の現在価値 - 負担付所有権の価値 = 配偶者居住権の価値
 ※負担付所有権の価値は,建物の耐用年数,築年数,法定利率等を考慮し配偶者居住権の負担が消滅した時点の建物敷地の価値を算定した上,これを現在価値に引き直して求める

との記載と具体例が掲載されており、参考にするのもよいかもしれません。

 この考え方は、法制審議会民法(相続関係)部会において事務当局が示した考え方です。※平成29年3月28日第19回部会会議資料

相続税法による評価

 相続税法23条の2は、配偶者居住権の評価について、

建物の時価 - 建物の時価 × ※2{(建物の耐用年数-建築後の経過年数-配偶者居住権の存続年数)/(建物の耐用年数-建築後の経過年数)}×財務省令で定められた配偶者居住権の存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

と定めています。

※建物の耐用年数は、所得税法施行令129条の減価償却資産の耐用年数に1.5を乗じた年数とされ、6月以上の端数は1年とし、満たないものは切り捨てとされています(相続税法施行令5条の8第2項)

※2 分母あるいは分子の年数が0以下のときは0になります。

 配偶者居住権の目的となっている建物の価額は

  建物の時価 ー 上記の配偶者居住権の価額

 配偶者居住権の目的となっている建物の敷地を使用する権利の価額は、

  土地等の時価 ー 土地等の時価×財務省令で定められた配偶者居住権の存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

 配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の価額は、

  土地の時価 ー 敷地の利用に関する権利の価額 

となっており、基本的には上記の法制審議会の考えと同じです。

 もっとも、相続税の場合、建物の時価を固定資産税評価額(財産評価基本通達89)、土地の時価を路線価方式または倍率方式(財産評価基本通達11)で算出しますから、取引価格を基にした額とは異なります。

国税庁では、配偶者居住権の評価明細書を用意しており、それに従って記入することで評価額を算出することができます。


具体例

 被相続人 夫 相続開始時 妻75歳・子が一人

 築40年の建物に居住していました。

 建物の固定資産評価額500万円 土地の路線価1500万円とします。

 この場合に、終身までの配偶者居住権を設定すると75歳女性の平均余命は16年なので配偶者居住権の存続年数は16年として計算します。

 建物の耐用年数は22年×1.5で33年とします。

 そうすると、建物の耐用年数33年から経過年数40年を差し引くと0以下になってしまうので、建物の時価から控除する額が0円となり、配偶者居住権の価額は、建物の固定資産評価額500万円となります。

 敷地の利用権の価額については、路線価1500万円に存続年数に応じた複利現価率(16年:0.623)を乗じた934万5000円を1500万円から控除した565万5000円となります。

 結果、妻は配偶者居住権500万円と敷地利用権565万5000円と評価されるものを相続し、子は配偶者居住権付建物0円と敷地利用権付の敷地934万5000円を相続したということになります。


参考

 国税庁 配偶者居住権等の評価に関する質疑応答事例


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