散歩と幼馴染

当たり前だが散歩をしていると人にすれ違う。その時、僕は決まって下を向いて視線を逸らす。その人に見られていることを認識したくないからだ。恥ずかしいし何見てんだよと苛立ちを覚える。それが嫌で下を向く。気づけば背中は丸まってきていた。

今日は少し好意を抱いている幼馴染にすれ違った。すぐに視線を逸らしたから確かではないがその雰囲気があった。紫のTシャツを黒のワイドパンツにタックインした如何にも若者だった。その子はこういう格好をする印象がなかったからドキッとした。

散歩ルートの曲道にその子がいたから急遽ルート変更して家に帰った。恥ずかしさと話しかけられなかった情けなさに苛立ち、ドキドキしながらしばらく歩いた。振り返ったがその子はいなかった。代わりに安堵と後悔がいた。僕は下を向きながら家の玄関ドアを開けた。

それから一息ついて二階の自室に戻る途中、窓から紫色が見えた。こっそりと遮光カーテン越しに見てみた。自分のストーカーのような気持ち悪さに嫌悪感を抱いたが見るのはやめなかった。その子は幼馴染の家に向かっていった。やっぱりそうだったんだ。

あの子も散歩とかするんだと吞気に考えていたが、自分に対する嫌悪感で今すぐ吐き出したくなった。とことん「社交的」という言葉に縁がない僕は、これからもこうやって内気な行動をとってしまうんだろうなと絶望した。もし、またすれ違っても下を向いて知らん顔してなかったことにするんだ。

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