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ニューブレイカー2024〜黒原拓未〜

 今シーズン新たに殻を破った選手を紹介する企画、「ニューブレイカー2024」。第四回は、広島のブルペンを前線で支えるようになった中継ぎ左腕です。

名前:黒原拓未(くろはらたくみ)

 こちらが広島・黒原拓未選手です。黒原選手は左投左打の投手で、和歌山県北西部の海南市出身、1999年11月29日生まれの24歳です。
 黒原選手は和歌山の超名門校・智辯和歌山高校に進学すると、高二秋からエースに。高三夏には甲子園にも出場し、2回戦の大阪桐蔭戦で好投したもののチームは敗戦。卒業後は甲子園が所在する西宮市にあることで有名な関西学院大学に進学すると、4年時にはエースとしてチームのリーグ優勝に貢献しました。
 そして、2021年ドラフトで隅田知一郎選手、山下輝選手の抽選をはずした広島にハズレハズレ1位で指名を受け入団。背番号は大野豊氏らが背負っていた「24」に決まるなど初年度から期待値はとても高くありました。
 プロ1年目から12試合に中継ぎ登板しますが、防御率は6.52とピリッとせず。2年目の昨季も5試合の登板に止まりますが、今季は中継ぎにピタッとハマり9月9日時点で42試合に登板、47回3分の2を投げ防御率も1.89とすこぶる安定しています。

強み:チェンジアップ

黒原選手の強みは変化球にあると筆者は考えます。左ながら最速150キロオーバーのストレートもとても魅力的な球種なのですが、そのストレートがあることでより変化球が活きているように感じます。
 黒原選手の球種配分はストレートが半数を占めそこにカットボールやチェンジアップ、スプリットを織り交ぜるといった比率ですが、特筆すべきはチェンジアップです。
 ストレートの被打率が.185とこれでもかなり低いのですが、チェンジアップは.103。ストレートの被打数が65、チェンジアップの被打数が39と一概に比べて言える訳ではありませんが、この低さは目を見張るものがあります。
 黒原選手のチェンジアップはジャイロなど水平成分の回転数が少なく、ストレートの回転を遅くしたような回り方をするため、ストレートと見分けのつきづらいものになっています。低めへの制球も良いため、真ん中低めのボールゾーンの被打率は15打数0安打、12奪三振と脅威の数字を誇っています。

 こちらの動画の3:18の部分から見ていただけるとお分かりになると思いますが、本当にボールが来ません。一瞬時が止まったような錯覚を起こします。

課題:左打者へのアプローチ

 今季のスタッツを見ると課題を見つける方が困難でしたが、強いていうならば左打者への投球アプローチでしょうか。左右別の被打率を見てみると、対右は被打率.135とよく抑えられていますが対左は.244と1割以上の差ができてしまっています。セオリーをいうならば左投手は左打者に強いはずですが、なぜでしょうか。
 答えはアウトハイにありました。対左打者のコース別被打率を参照すると、次のようになっていました。

 ご覧の通り左打者に対してはアウトコース主体に組み立てている黒原選手ですが、アウトコースの高めに抜けたボールは被打率.455とほぼ半分の確率で打たれています。しっかりと逆方向に弾き返されてしまっていますね。
 しれっとど真ん中の被打率が.000なのもすごいですが、もう少し内角で勝負を決めにいってもいいんじゃないかな、とは思ってしまいますね。

得意打者

中日・細川成也選手とは4打席の対戦で、4打数0安打、2奪三振とよく抑えています。また細川選手の同僚であるカリステ選手とも6打数1安打3奪三振と好相性を発揮しています。
 他にも、阪神・佐藤輝明選手からは5タコを記録していますね。左打者の被打率は少し高いもののこの選手からはアウトを積み上げています。

苦手打者

阪神・大山悠輔選手とは5打席の対戦で5打数2安打の.400、ホームランも1本打たれるなど悔しい思いを経験しています。また、同チームの前川右京選手からもホームランを1本を浴びるなど、阪神に若干の苦手意識があるかもしれません。
 しかし、大山選手とDeNA・蝦名達夫選手以外に2本以上ヒットを許した選手はおらず、今シーズンの被打率の低さを表していますね。

黒原選手のプレー動画

 昨シーズンまでの二段モーションをやめ、巨人・菅野智之選手のような腰を捻りながら振りかぶって投げるモーションにしたことでボールに威力が伝わるようになり、打者から空振りを取ることが多くなったそうです。実際映像を見ていても左腕からクロスファイヤーにストレートが決まる様は気持ちがいいですね。
 ピンチでも動じることなく、自分のピッチングができていることが今シーズン飛躍の要因なのかもしれませんね。

一口情報:練習の虫

 黒原選手が同チームの選手やスカウトなど、様々な人から言われていることに「練習への取り組みがいい」ということがあります。この言葉は誰かが黒原選手のどこがすごいか、という趣旨の質問を受けた際に多くの人が答えているそうで、それだけ練習に熱心なんだということが伺えますよね。実際、黒原選手を推したスカウトの方も、投球よりもまず練習に対する姿勢を評価したそうです。
 それだけ直向きに努力をしてきたということは、今シーズンの活躍はもう運命付けられていたのかもしれませんね。

まとめ

 今回は広島・黒原選手について紹介しました。現在はどちらかというとビハインドでの起用が多くセットアッパーという位置付けではないかもしれませんが、これから中継ぎのスペシャリストになっていくのか、はたまた当初期待されていた先発として白星を積み上げていくのか、とても楽しみな存在ですね。
 最後までお読みいただきありがとうございました。

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