携帯依存症BOX購入の巻
職場の小さなともだちに、「ほんをよむとね、いろいろなことをしることができるんだよ、そしてね、いろいろなことがわかるようになるんだって。だからね、ぼくはほんをよむんだ」
と、言われた。そういえば私は久しく本を読んでいない。
携帯電話を見過ぎて、毎週そこに送られてくる「携帯電話を触っている時間」はゆうに7時間くらいを超える日もあった。もともと本は大好きで、いつか読もうと思いながら購入した本が未読のまま、沢山部屋に置いてある。
このままでは、時間を無駄に使って人生もったいない!そうだ、もっとやることが沢山ある!そこで前の職場の後輩がこんな事を言っていたのを思い出した。
「携帯依存症BOXっていうのがあるんですよ。うちの弟は試験勉強の時に携帯電話をそこに入れなって親に言われています。入れたら最後、絶対に蓋は開かないんです。ゲーム依存症の人は、コントローラーを入れたりするらしいですよ」
これだ!私が探し求めていたのは!強制的にそれを出せないような状況を作りださなければいけないような気がした。さっそく検索をし、ポチリ。すぐに配送されてきた。しかし、説明書を読むと、本当に蓋が開かなくなるらしい。
そう思い始めると、蓋が開かなくなる事に対しての恐怖感がむくむくと持ち上がり、「緊急の電話が入ってきたらどうしよう……」とか、
「どうしても携帯電話が必要な非常事態になった時にどうしよう」と、考え始めるとキリがなくなって、そのBOXに電池を入れてからというもの、その前で「これは、入れてしまったら最後、もしかしたら大変な事になるかもしれない……」と、思いながらもう半年、いや1年くらいが経とうとしている。
携帯依存の弊害として、集中力の低下も挙げられると思う。目の前の事にまったく没頭出来なくなってしまった。また、読書をしようと始めて観ても、中々読み進む事が出来なくなってしまった。そんな自分自身の変化に愕然としてしまった。
日々、youtubeやらメディアの刺激の中に居ると、素朴な媒体の紙や文字の世界に入り込めなくなってしまったのだ。これは、まずい。ならばどうしよう。音読をすれば良いのではないかとおもいついた。
真夜中、布団の中で縮こまりながら声を出して読む。不思議と情景や内容が頭の中に入ってきた。すこしばかり作者が言いたい事もわかるような気がした。これは続けたいな、少しは自分の中に積み重なって、「いろいろなことがわかるようになる」のかもしれない。
そう思った時に、携帯依存症BOXのタイマーがじじじ、と音を鈍くだしながらまわるのが聞こえた。