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喋るよ鳥ト少しだけ長く①#インタビュー

今回の公演「踊るよ鳥ト少し短く」に出演する3名に少しだけ長いインタビューをして、公演に関して・創作に関してお話をうかがいました。
ここでお話しをしていただいているのは、「演奏」として参加している千葉美紀依さん。
演劇のこと、音楽のこと、せのびのこと。やわらか~な印象でいつも稽古を見守っている彼女が、一体どのようなことを考えながらせのびの稽古場に参加していたのか。
彼女のやわらかさの中にある燃える何かがインタビューからも感じられる、そんなお話です。

それでは、はりきってどうぞ!


どんな感じですか、稽古場の雰囲気は想像していたものと違いますか?だいぶゆるい感じですけど

あ~、いや、あんまり想像してなかったかもしれない。稽古っていうのを。

演劇は初めてでしたっけ?

初めて、ですし、ハロー!エチオピア(※)を観るまでは、そんな興味もなく。劇団四季くらい。
※ハロー!エチオピア…演劇ユニットせのび第7回公演で上演した作品。脚本・演出村田青葉。2019年11月に初演、2020年2月に再演をしていますが、美紀依さんがご覧になったのは2020年2月のものです。

あ~せのびと全然系統がちがう…笑

演劇といえば劇団四季くらいの程度だったので、そんな。

小劇場演劇とかはあんまり観ないですか?

あんまりなかったですね。

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―ハロー!エチオピアを観たのってどういうきっかけですか?

夫が町家物語館に勤めだして、結構チラシとか見たりするようになって。すごい目に留まった。

―あ!あれか!森優さんのチラシですか!

はい、森優さん(※)の。
※森優…盛岡出身のイラストレーター。何度かせのびのチラシをデザインしていただいています。

―ありがとうございます。

いえいえ。

―アンケートにいろいろと書いてくださっていた印象があるんですけど、お!って思ったんですか?せのび、お!って。

お!って思いましたね。

―何が、とかありますか?

なんか、いい曲を探す時みたいな感じで。わたし音楽が好きなので、いい音楽を漁るのが趣味なんですよ、ネットで。特に、メジャーでリリースされているものを調べるとかではなく、個人の人がやってるのを。海外とか、誰も聴いてないぐらいの人が作ったのでも、それがいいとか悪いとかを自分の感覚で捉えたくて。だから、演劇も知ってるとか知らないとかではなくて、見たときに拾うって言うか。いいものはいい、悪いものは悪いっていう感覚でせのびを拾った、みたいな。ちらちらって他の劇団の方のもこれまでに観ていて。面白かったんですが、本当に他の劇団を知らないから、ハロー!エチオピアで初めてせのびさんをみたときに、お客さんに向けて話しているのじゃなく、人と人が話しているのを見せる、って感じ。だから、どこから見ても違和感がない。例えば会話が、どっちかの会話が聞こえなくても、小さくっても、その違和感はないし、それがすごい見てて心地よかったですね。

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―なるほど、村田の演出が。

なんかそういうセンスとか才能の部分なのかもしれないけど、結構、音への意識とかが綺麗だなと。音の面でも見てたんですけど。

―それは劇中でかかる曲が?

かかる曲が、というよりかは、その音の方向性というか。

―台詞でも?

台詞でも。綺麗だなと思うし、ロマンス(※)も、あれは他の方の脚本かもしれないけどすごい気持ちよくて、四方から音が聞こえてくるのが。そういう面から結構感動した…
※ロマンス…2020年2月の第7回公演の際に、ハロー!エチオピアとともに上演した作品。脚本は劇団こふく劇場の永山智行さん。

―ロマンスは、「音楽的だよね」って言いながら作ったので。雨のシーンとか、4人が別々の場所に立って四方から話す場面も音の綺麗さは意識して作ったので、それがちゃんと観ている人に届いてるんだなって思いました。実際、稽古を見ていて、今回の作品に音の綺麗さとかは感じますか?

うん、最初に本読みをしたじゃないですか。特に髙橋さんはきれいに声を発する方だなと思って。すごいきれいな音。音というか声だけど流れ方がきれい。村田さんが考える流れとは違うのかもしれないけど、髙橋さんが持ってる素質としてはすごい綺麗だなと思って。

―うんうん。今回は、どっちかっていうと無理して演じていると思うので。

うんうん。

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―慶さんはどうですか?

やっぱりその、ピアノを弾くというのもあって。村田さんが言った、こういう音でお願いしますっていうのにすぐ応える音感があるなっていう。

―すごい、音楽で捉えてる。

そう、音で。

―たしかにそうですね、うん、レスポンスが早いですもんね。初めて脚本を読んだときってどういう印象でしたか?

最初は村田さんにお話をいただいてリーベ(盛岡市の櫻山神社の近くにある喫茶店)で読んだんですよ。で、読んで、最初は分からないまま読んでて。

―分からないですよね。

単純に面白いなって思いながら読んでて、途中から、村田さんの書く脚本もそうなのかもしれないけれど。最初はふわっとしていて途中からぎゅってし出すじゃないですか。それがすごい面白いなって思った記憶があります。あ!面白くなってきた!って。自分はそれくらいしか思ってないけど、村田さんに「今回の作品についてどう思ってますか」っていうのを聞いて。その答えを聞いているうちに自分の不条理な体験と結びついたりして、それでその感覚でちょっと弾いたりとか。

―そうですよね、稽古場ではいつも即興で弾いてます?…すごいですよね。

逆に、決まっているほうが引き辛くて。よくあるクラシックみたいな華麗な演奏って技術がすごいんですよ。で、練習量もすごいあるんですよ。でもわたしはピアノを習っていたときもちゃんとやってこなかったので、そういうことを。逆にそういうことをやれって言われると動かなくなっちゃう、指が。でも、自分の好きな音を弾いていいんだったら弾けるみたいなとこがあって。だから。

―じゃあもう、完全に美紀依さんが好きな音楽を弾いているってことですか?

その時の気分で…

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―楽器とかピアノとかにあまり触れたことがないのでわからないんですが、文を書くときとかと同じですか?こう表現すればわたしは気持ちいいのよ、みたいなのが分かるというか。

わたしは逆に文をスラスラ書けないから。例えば歌でも歌詞とかを考えるときに、すっごいぱっと浮かんだ単語とかをちょっとメモっといて、あるときにそれらが結びついたりとかっていう作り方をするので。文章っていうと難しいですけど…たぶん一緒。

―先日のnoteにも書いてたんですが、美紀依さんの演奏がすごい水っぽいなって思うんですよね。

わたし、結構水をテーマに音楽を作ったりしてて。だからそう言われるとすごく嬉しいし、たしかに定まったリズムではなく、均一なメトロノームとかのリズムとかよりかは、雨の音とか自然な音とかのリズムの方が好きで。そういうふうに自分の演奏にも表れてたら自由だなって思うっていうか。

―たしかに。自由さ。

そういう自然な音からリズムを得たりとか。例えばこうやって役者が稽古で話して発音しているものの流れでそのままインプットしながら、で、アウトプットしながら自分も演奏する、みたいな。

―村田の演出には納得できてますか?

あー、やっぱりその才能っていうか、なんだろう、すごい色々持ってる方なんだなと思って。

―ほお。

感受性じゃないですけど、捉える能力って言うか。だからすごいこれからどんどん上に行く方なんだなって思いながら観てました。違うな、って。

―違うんですか?

違うな、って。他の演出家の方は観たことがないんですけど、なんか持ってる人はちがうなって。人の真似とかじゃなくて、自分を持ってるなって思います。

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―ああ、なるほどなあ。美紀依さんは一つの音楽を誰かと作ったりすることもあるんですか?いつも自分だけですか?

自分で作ったのをちょっとアレンジしてもらうくらいの感じでバンドやったりしてますけど…。今回は誰かと作ってることになると思います。完全に誰かが作った曲に何か入れる、くらいのことはありますね。

―じゃあもう、スタートラインがみんな一緒の状態で創作をするってことは初めてなんですね。

そうですね。たしかに…。

―すごい面白いなと思うのが、なまものって言われる演劇で今回は音楽もなまものになるってことなんですよね。音が生で加わるのが、すごいわくわくします。そう考えると、こうして演奏をしてくださる方と出会えたことが嬉しいなって。

夫、様様です。

―今回、稽古を見ながら美紀依さんの方から演出に関しての意見やアドバイスが飛ぶようになったじゃないですか。それが、「演劇初めてだから…」ではなく、モノづくりに対する真剣さのように感じて。

心の中では、わたしがこんなこと言ったらちょっととかは思ってて。何か意図があってあえてそうしてるのかもしれないし。でも、一番お客さん目線に近いっていうのはあると思うので、ちょっとでも不自然に感じたら言うようにはしていて。言いたくなる、というか。

―すごい、うれしいことですね。

ははは。

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―では最後に、お客さんに向けてひとこといただけますか?

わたしは演劇を観た後に、感性がわーっと豊かになる感覚があるから、そうなってもらえたら御の字なのかもしれないけど。それはクリエイターだけのことかもしれないので…。なんだろう。何かを作っているひとはそうなると思うし、そうして創作活動をしている人に何か思っていただけたら御の字ではあるけれど。クリエイターでもそうじゃなくても、観た後に何か感じていただけたらと思います。


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ではまたここでお会いしましょう!
〈インタビュアー・文・写真 石橋奈那子〉

インタビュー企画
喋るよ鳥ト少しだけ長く②
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