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2021年8月14日(土)・塚本監督オンライントークレポート@あまや座

7年目の『野火』。この日の塚本監督オンライン行脚2か所目は茨城県の瓜連あまや座さんです。大内支配人の進行でオンライントークを行いました。

2021年8月14日(土) 11:55の回上映後
会場:あまや座
MC:大内支配人

2017年にオープンした茨城県・那珂市のミニシアターあまや座さんでは3回目の『野火』の上映です。
 
MC大内支配人の呼び込みで大きな拍手で迎えられた塚本監督。大内支配人より「トークの機会をつくっていただいてありがとうございます。今年も30以上の劇場さんで上映をされていると思うのですが、改めて7年目を迎えてどんなお気持ちですか?」と問われ、「まず毎年毎年30館以上の映画館でやってくださるということがここまでくると奇跡というか、本当にありがたすぎるというか、今まで前例としてあったかなという出来事です。6年前(7年目)の映画を毎年上映してくださって、そしてお客様もこうして来てくださるというのは本当にありがたいと思うと同時にやっぱり自分の方としてもどうしても少しでも多くの方に観ていただきたいという気持ちがあるので、何とか続けていくことができたらなと思っております。」と感謝を述べました。

また「今観ていただく意味」を問われた塚本監督は「コロナのこととかオリンピックのこととかもさることながら今政権をつかさどってる方たちというのはひとつのはっきりとした方針があって、そのことに関しては多くの方がそれぞれの意見を持ってると思うのですが、いずれにしても戦争をできる国にしようとしているっていうのは間違いないことです。実際に戦争をするかどうかは別にしても戦争のできる準備をできる国にしようとしていて。今の世界の状況を考えると心配になるというのはリアルにあることなので、準備しなくてはいけないという意見もあるのですけど。向こう3年がひとつの目安で、もともと戦争に行かれた方はだいぶもういらっしゃらなくなってしまい、痛みを実感で知ってらっしゃる方がいらっしゃらなくなるのを待ってこういう動きをしてるのがすごくよくわかるんですけど。戦争に行かれてない方で戦争体験者の方はまだいらっしゃいますが3年経つとそういう方々もだいぶ少なくなってくるので、訴える力が弱くなり、痛みを知らない方が頭で考えて用意した方がいいんじゃないの、危ないんじゃないの、って(意見の)ほうが強くなってくるとちょっともう止めるのは不可能かなと。自分は『野火』をつくったときからそのことがくっきりどうしてもわかってたので、何とか『野火』を毎年上映しなければと思ってたんですけど、どうにもそのレールが外せないような状況になってきちゃったなというのが実はあります。自分は映画に政治的なメッセージを入れようとしないので、映画を観て、どういうふうにしたらいいんでしょうとお客様に考えていただけたらなと思ってつくってるんです。ですからまた引き続き(『野火』を)観て、どうするべきなのかというのを身に迫る感じで考えていただくきっかけの材料にしていただけたらなというふうに思っています。」と答えました。

続けて「昔の作品から一貫したテーマがあると思いますが『野火』から『斬、』と具体性というか現実により近いものが多くなってるのかなと思います。その辺も監督の中での何か危機感が反映されてたりするのでしょうか?」と問われた塚本監督は「昔はやっぱりファンタジー映画をつくっていたので、暴力的な表現もわりとファンタジーとしての暴力でした。『野火』はそのころからもうつくりたい映画で、大岡昇平さんの素晴らしい原作を普遍的なテーマとして描けると思ってたんですけど、この『野火』をつくったときには普遍的なテーマであったはずがむしろ少数派の意見の方にだんだんになっちゃうんじゃないかという心配がありました。もう今つくらないともしかしたら上映しても誰も見向きもしてくれないんじゃないかっていうような心配があって、今つくろうと。あとはもうとにかくつくって観ていただくことで、戦場って本当はこうですっていうのを知っていただこうと思いました。僕自身は戦争の体験はありませんけど、大岡昇平さんの小説があまりに素晴らしいのに足して実際にフィリピンに行かれた戦争体験者の方に話をたくさん聞いて、その聞いた実感というのを盛り込んだので。その聞いた話に比べると100分の1、1000分の1の恐さでしか描けてないんですけど。(戦場は)この1000倍(の恐さ)だと思っていただければちょうどいいのかなと思っております。」と語りました。

お客様からの質問タイムでは主演もつとめる塚本監督へ「具合の悪い演技がとてもうまかった。田村一等兵を演じる上で参考にしたことは?」というご質問。「参考にしたことはないのですが、なるべく原作に忠実にやったつもりです。むしろ病気であることを忘れちゃいそうになるので気を付けてポイントポイントで咳を確実に入れたりとか。よく考えると田村はしぶといですよね、一番最初に病気になったわりには。途中血を吐いてそれが南国のすごい熱い日光の中で蒸発するんです。自分の菌が太陽の熱で蒸発していくところが小気味よく思ったと原作に書いてあったあのくだりが自分の中でもとても好きでした。病気になっちゃって軍からも病院からも見放されてある種の1個の何者でもない人間として美しい原野の中で自分の時間を楽しむっていうあそこが一番好きだったので。病気っぽいのはあそこらへんまでで、状況の中で一番必死になってけっこうしぶとく生きてるっていう自分でもギャグ一歩手前な感じでした。」と答えました。

最後に「この『野火』という映画は今の世の中が心配で仕方なくて(つくって)今もちょっとときどき胃が痛くなるんですけど。なんとか多くの方に観ていただきたいです。こういうふうに思ってと押し付けるものではないと思うので、実際の戦場はこんな感じだったっていうのを、僕が聞いたことをそのまま実感でこめてるので間違いないので、どう思いますか?っていうことを観ていただきたいんです。少しでも多くの方に広めていただけたらと思います。」とご挨拶。

大きな拍手に見送られトークイベントは終了しました。

あまや座さん、ご来場のお客様、ありがとうございました!

あまや座
あまや座 (amaya-za.com)

7年目の『野火』上映記録
8/14(土)~8/20(金)
8/14(土) 上映後、塚本監督オンライントーク
 
朝日新聞さんが記事にしてくださいました。
映画「野火」、茨城のミニシアターあまや座で:朝日新聞デジタル  

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