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2024年4月の記事一覧

『7月のダークライド』ルー・バーニー(著)加賀山卓朗(訳)

ルー・バーニーどうしちゃったの!? というほどつまらない。『11月に去りし者』が大好きなので全部読むと決めたけど、その決意がゆらいでるよ。これなら『ガットショット・ストレート』の続編を訳してほしかった。 大麻づけの青年が根性焼きされた子供を目撃、気まぐれな善意から福祉施設に通報するも、忙しくて全然とりあってもらえない。子供が頭から離れない主人公は自分で救うことを決意するが…。というお話。 軽薄なハードボイルドというか、ただの力なき正義のお話で、ストーリーは平凡だし、各キャ

『言葉人形』ジェフリー・フォード(著)谷垣暁美(訳)

『最後の三角形』が素晴らしかったので、こちらも読む。 こちらは幻想小説選りすぐりとの事だが、オチで現実に戻されたり、ホラーなのがちらほら混じってる。ファンタジーが読みたいんだよ! と、ちょっと残念。 ただ、後半はピュアな幻想小説が続く。『レパラータ宮殿にて』は寓話としても完成されてて大好き。 トータルだと、『最後の三角形』のほうが好きかな。 以下好きなのピックアップ。 〈熱帯〉の一夜老人宅に無防備にしまわれていた黄金のチェスセットを盗んだ、とバーテンダーが告白するお話。

『あなたは月面に倒れている』倉田タカシ(著)

ベストSF 2023[国内篇]、5位の本作だが、個人的にはぶっちぎり1位。すばらしい想像力に感動した。 設定もりもりの近未来SFから、段々と幻想小説になってゆく構成も楽しい。後書によると、誠実なのが前半だそうな。更にtwitter文学出身で驚き。 この人の作品、今後読むたび、これはどっちなんだろうとドキドキするんだろうな(笑) 以下お気に入り。 二本の足でスパムメールが実体化して玄関に訪ねてくる未来のお話。しばらく音沙汰のない友人宅を尋ねると、そこにはスパムが溢れていて