マガジンのカバー画像

感想

362
運営しているクリエイター

2024年3月の記事一覧

『星、はるか遠く: 宇宙探査SF傑作選』中村融(編)

最初と最後の2編が断トツに良い。これだけでも読む価値あり。 他も、ギャグ、シリアス、スペオペ、等々、バラエティ豊かで読み応え抜群。切ない系多めかな。 宇宙探査SFとあるが、探査は冒頭1作だけでは? と、誰もが抱く疑問に訳者あとがきで釈明があって笑った。入植モノといったほうが適切な気がする。ほぼほぼ失敗だけど。 以下好きなやつ。 故郷への長い道 / フレッド・セイバーヘーゲン 著資源惑星を探してる夫婦の船乗りが、冥王星付近で巨大な針のような建造物を発見。重力アンカーで固定さ

『チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク』ジョン・スラデック(著)鯨井久志(訳)

ナンセンスギャグSF。自我を持つロボットが実験で人を殺す、という森博嗣が書きそうな出だしで胸が高鳴ったが、その後は厭世的、グロい、こってりで胸焼け気味。短編だったら良かったのに。 お話は、ロボット3原則を守らせるアシモフ回路が壊れたロボ、チク・タクが主人公。人殺しに端を発し、どこまで罪を重ねられるか、という実験を始める。 人を殺せるロボットというと、弊機こと『マーダーボット・ダイアリー』を思い出すが、本書は真逆。前者は愛がテーマだが、本書は憎悪と狂気のお話。ロボだけでなく

『最後の三角形』ジェフリー・フォード(著)谷垣暁美(訳)

どれも高レベル! 長編を蒸留したような短編ばかりで濃密。1日1編しか読めず、1冊読むのにめちゃくちゃ時間がかかったが、凄まじい満足感。 本書はジェフリー・フォードのベスト短編集の2冊。1冊目は本業の幻想小説で、それ以外、SFやホラー方面が集められたのが本書。しかしそもそもの土台が幻想的なので、SFやホラーを書いても幻想小説になってる。しかしそれが美しく素晴らしかった。 幻想小説苦手なのだが、稀にあるクリティカルヒット。1冊目も読まねば。 エクソスケルトン・タウン以外全部良

『SFショートストーリー傑作セレクション 異次元篇 次元を駈ける恋/潮の匂い』日下三蔵(編)

昭和の大御所たちのSFオムニバス。舞台が昭和で若干古臭いが、それが哀愁やホラー味を加えている。かなりいぶし銀なお話ばかり。 表紙は詐欺としかいえない(笑) 本編のどれも面白かったが、後書も良かった。昔の少年漫画誌には小説が載ってたというのに驚き。廃れちゃって心底残念。 また、体系的に本を読んでないので、作家の歴史がわかる解説がめちゃくちゃ助かる。今日泊亜蘭を知れたのはかなりの収穫。光の塔を読まねば! 次元を駈ける恋 / 平井和正 著事故で婚約者が死んだので、別の平行世界へ