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2023年11月の記事一覧

『ファラデー家の殺人』マージェリー・アリンガム(著)渕上痩平(訳)

キャンピオンシリーズの長編。横溝正史の金田一のイギリス版という感じ。皆キャラが濃すぎて笑える。それでいて、とあるミステリ鉄板ネタのオリジンで、歴史的価値もあり。 また、客人は冷たい料理でもてなす等、イギリス文化が知れて面白い。 戦前のとあるイギリス上流階級の家で、身内が一人行方不明になってしまうも、その家には警察と渡り合える人間がいないので、キャンピオンに白羽の矢が立つことに。到着すると、行方不明人は死体で発見され、後日、さらに別の死体が館で発見され…。 この連続殺人、ど

『グレイラットの殺人』M・W・クレイヴン(著)東野さやか (訳)

今回は助っ人捜査。ポー達に危機が迫らないので安心して読めるなぁ、と油断してると、重い社会派テーマに殴られる。読後、日本も他人事ではない、というか、地政学的により悪いので、なんとも言えない気持ちになってしまった。 前回の事件が壮絶だったので、ポー達は全員1ヶ月の休暇をもらってたのに、MI5から半強制で殺人事件の捜査を任される。売春宿で男が撲殺された、というよくある金銭トラブルに見えたが、なぜか暖炉の血だけが拭き取られており…、という出だし。 シリーズ的には箸休めながら、ポー

『 ウォークン・フュアリーズ』リチャード・モーガン(著)田口俊樹(訳)

タケシ・コヴァッチ三部作最終巻。実に良い最終回だった。 シリーズ構成が見事で、今までの全ての背景やテクノロジー、回想で出てきた人たち等、全てがきれいに重なって、オールスター揃い踏みで実に濃密。当然大団円などではなく(笑)、その後の大激変を想像するだけで楽しい。 お話は、前作で大金を手にしたので、故郷で平穏に暮らしてるかと思いきや、僧侶を殺して回っているコヴァッチに困惑。 さらにヤクザとも揉め、ニューホッカイドウへ逃げることに。そこは過去の戦場で、今なお戦争兵器が闊歩している

『渇きの地』クリス・ハマー(著)山中朝晶(訳)

静かな調査モノかと思いきや、イベントてんこ盛りでかなり楽しめた。プロローグの様子から牧師の動機は復讐だと思ってただけに、ラストの真実が切なくて良い。主人公より断然主人公なんですけど(笑) お話は、携帯の電波もつながらない辺鄙な町で起きた銃乱射事件の真相を追うミステリ。 事件から1年後、ガザ地区帰りで心に傷を追った記者(主人公マーティン)が、リハビリがてら振り返り記事を書くため調査を始める。 しかし、山火事は起きるし、新たな死体は発見されるしで、事態はオーストラリア中の注目を