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2023年9月の記事一覧

『文豪たちの悪口本』

罵詈雑言の羅列を期待したが、さにあらず。文通での口喧嘩がメイン。これはこれで笑えた。見事に自分の事を棚に上げ、他人をあげつらうなぁ(笑) 悪口のレパートリーは増えなかったが、文豪達の人となりがしれて楽しい一冊。 夏目漱石はロマンチックなイメージだったので、めっちゃ短気で笑えた。 また、文壇諸家価値調査表も馬鹿で下世話で最高。 作家達の才能やらを数値化して表にしているのだが、資産や腕力とか性欲とかあって、いらんやろと突っ込まざるを得ない。本章はそれにキレてる若手作家と出版元

『怪獣保護協会』ジョン・スコルジー(著)内田昌之(訳)

映画的エンタメSF。会話がユーモラスでめっちゃ楽しい。クズ(悪役)は出てくるが、シリアス展開ほぼなし。頭空っぽにして読める。 ジョン・スコルジーは『老人と宇宙』シリーズ以来久々。あれも楽しかったが、本作はエンタメに特化してるのでより楽しい。あとがきを読むと、コロナの閉塞感と暗い長編執筆のストレスが爆発した結果らしい。笑った。自身で本作を「ポップソング」と呼ぶだけある。 ただ、それゆえに、ひねりもサプライズもなにもないので、特段カタルシスもないのがもったいない。せめてクソ野郎

『探偵ブロディの事件ファイル』ケイト・アトキンソン(著)青木純子(訳)

探偵モノだが、ミステリというより群像劇。謎解き要素はほぼないが、犯罪被害者達の人生、生い立ち、変化してゆく様が明るいタッチで描かれ、ぐいぐい読ませる。 まず冒頭で3つの事件が語られ、その後、探偵や関係者一人一人の視点で現在の状況が語られる構成。 もう冒頭の時点で凄まじい濃度。げっぷが出るほど濃密な人物描写でニヤニヤしてしまう。だがそれが事件をより陰鬱にみせてしまい、リアルでつらい。 探偵のジャクソンは、浮気調査や猫さがしなどで生活してる冴えない探偵だが、仕事は実直にこなし

『ロボット・アップライジング: AIロボット反乱SF傑作選』

序文がロボット氾濫愛にあふれてて笑った。HELLSINGの”私は戦争が好きだ”を思い出すレベル。なので冒頭から人類へのラブレターみたいな作品が続いたので拍子抜け。もっと殺伐としたのが読みたいんだよ! さらに、反乱というよりは、設計漏れが大半で、人類は愚かだよねという話が多い。ちがうのよ。AIがいかに人類に愛想を尽かすかを読みたいのよ。という悶々とした読書になってしまった。 とはいえ、AIディストピアモノという意味だと、バラエティに富んでいて結構楽しめた。 以下好きなやつ