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2023年1月の記事一覧

『キュレーターの殺人』M・W・クレイヴン(著) 東野さやか(訳)

ワシントン・ポーシリーズ3作目。1,2作目はポーが事件に巻き込まれてるので、そろそろ別パターンが来るかなと思ってたら、まさかこう来るとは…。勘弁してくれと祈りつつページを捲ったよ…。 お話は、クリスマス明けに、別々の場所で3人分の指と謎のハッシュタグが発見されるというもの。指は生前に切り落とされたものと、死後に切り落とされたものがセットで置かれており…。 中盤まで、ポーの洞察とティリーの分析が冴え渡り、まさかそんなという繋がりが見えてくるも(読んでて何一つ予想できなかった)

『ルビンの壺が割れた』宿野かほる(著)

いやぁ無理筋。Twitter の読了タグで話題になってたので読んでみたが、失敗。小一時間で読めるのが救い。 とある男女(50過ぎ)のメッセージのやりとりを通して、様々な秘密が明らかになってゆく小説だが、昼メロにどんでん返しをつけてみました! という感じ。無駄なエロ、無駄な演劇、いまさらすぎるラスト一文、終始残念。普通、娘の話が出てきた時点で通報するだろ。 ただ、人間の薄汚さを描く、という点は成功している。人間って気持ち悪いよね。 それにしても、新潮文庫はこんな薄い本にも

『グッゲンハイムの謎』ロビン・スティーヴンス(著)越前敏弥(訳)シヴォーン・ダウド(原案)

『ロンドン・アイの謎』が傑作だったので、作者が亡くなり代筆と知りつつも、期待を込めて読んだが、ミステリとしてはイマイチ。 ただ、続編としては善戦してて、テッドやカット、サリムたちにもう一度会えたのは幸せ。 とはいえ、どうしてもロンドン・アイと比較してしまうので、ただ美術館から絵が盗まれただけというのは魅力が薄い。テッドでさえ、おばさんが逮捕されたから渋々捜査してるし(笑) さらに、警察が無能だったり、捜査が単調だったり、肝心のトリックが美術モノとしては絶対やってはいけないや

5,6巻読了!『筺底のエルピス』シリーズ オキシタケヒコ(著)

第1巻 絶滅前線めちゃくちゃ面白い。そして濃密。出し惜しみなしの全力疾走という感じ。膨大な説明を見事にこなしつつ、既にクライマックスのヤバさが滲み出ている。絶対ラスボス黒鬼じゃん。CLAMP『X』みたいになっちゃうじゃん。どっちがなっても地獄じゃん。と戦々恐々。正直、続きを読むのが怖い。 お話は退魔異能バトルかつSF。人を常ならざる凶行に走らせる魔・悪霊・鬼といった存在と主人公達が戦ってゆく。普通この手の作品だと、魔は人々の負の思念とかなのだが、本作では異次元からの攻撃プロ

『ブラックサマーの殺人』M・W・クレイヴン(著)東野さやか(訳)

ストーンサークルに続く、ワシントン・ポーシリーズ2作目。序盤から面白すぎて一気読み。嵐の中ポーが追い詰められボロボロで逮捕されるシーンから始まるのあざとい(笑) 本編はポーの冤罪逮捕疑惑から始まる。ポーが過去に、血痕はあるが死体は無い案件で、容疑者が絶対サイコパスなので強引に刑務所にぶち込んだ事が発端。死んだと思ってた娘を名乗る女がふらっと出頭してきて、DNA検査で本人と確認される。冤罪じゃねぇか! とポーが追い詰められてゆく。 警察からは怒られるのだが、ポーや上司は冤罪

『星霊の艦隊1』山口優(著)

AIとの百合SF。そして戦記モノ。 ブラックホールを使った量子コンピュータAIが人となり、人権を求め戦ってゆく。光速の数万倍のスピードで、さらに複数の次元も自由に行き来するドッグファイトが見どころ。その戦闘機が美少女に変身したりもする。アニメのノベライズっぽい一冊。 人類が銀河中に広がっている未来のお話で、科学技術はかなり極まっており、ブラックホールも完全に制御して、量子コンピュータとして使っており、そこで動くAIは物理法則を自由に書き換えられるレベルに達してる。人間は性転

『その昔、N市では』マリー・ルイーゼ・カシュニッツ(著)酒寄進一(訳)

不気味、ホラー、理不尽、嫌系などの短編集。知らずに読んだので、しょっぱなから、ん??となったが、ネガティブなだけでなく、詩的だったり微妙に美しかったりする奇妙な魅力があり、なんとも奇妙な読後感。酔ってるが気持ち良いのか悪いのかわからない、みたいな。 カシュニッツは戦後活躍したドイツの作家。半世紀以上前の作品だが、編者のチョイスのおかげか、今の作品と言われても気づかないかも、というレベル。不思議な話ばかりなのに、芯が普遍的なんだろうね。人間はそうそう変わらない、ということが楽