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麻雀初日に何を教えるか?

 桜と花粉が舞い散る新年度4月にふさわしい話題ということで、「なぜ早稲田麻雀部に出入りする麻雀プロは4年で卒業できないのか?」という話題と麻雀部の新歓の話題、どちらが良いか迷ったのだが後者にした。これは赤ウザクと同じくらい難しい何切るだったと言ったら過言である。
 さて、昨年度の雀魂学生麻雀リーグ等で対戦のあった多くの大学の学生麻雀サークルが近頃一斉に新人勧誘を始めている様子がTLに流れてきて、どこも同じだなぁと思いながら2年生の新部長の下で私も麻雀部の新歓に励んでいる。授業は4月13日からスタートするのだが、これ以前から多くの新入生が麻雀部を訪れており、昨今の麻雀熱を感じるばかりだ。私にとっては自分が新歓に来ていた時も含めれば3回目の春となるわけだが、毎年新歓にくる人は多くなっているように見受けられる。熱狂が外に伝わっているのだろうか?
 一応皆に「麻雀歴は?」と聞いているのだが、ネト麻はやったことあるけどリア麻は初めてという方がほとんどである。しかも、そのネト麻もほとんどは雀魂とのことだ。雀魂すげ〜!授業開始前からここまで人が集まっていた覚えはないのだが、おそらく雀魂がリリースされてから徐々に人気を博すようになった頃(「新春!にじさんじ麻雀杯2021」が開催されたあたりだろうか?)、雀魂で麻雀に触れてみた高校生が大学に入学してきたのかなぁ〜と個人的に考えている。
 ただ初めて麻雀に触れますという方ももちろんいる。ここ数回の活動では私がこういった層の新入生にルールを教えているのだが、当然こうなる。

麻雀何から教えるの?教えるにしても順番は?

 これは本当に赤ウザクより難しいと言って良いだろう。う〜ん…
 今回は私が初心者講習で悪戦苦闘している記録を残しておく。他サークルで新歓をしている方には是非ご意見を頂戴したい。

麻雀の基本形:4面子1雀頭を作ろう

 麻雀牌の名称を教え、どのような順番でツモっていくのか教えたら、続いて麻雀の基本「4面子1雀頭を作ろう!」の話を始めるわけだ。神域リーグで獅子奮迅の活躍を見せたVtuber歌衣メイカさんの動画リンクをお借りするとこんな感じの話をする。というか実際に見せている。非常に簡潔でわかりやすい。

 しかし、4面子1雀頭を作ろう言ったそばから、初心者が形を組めるのであれば牌効率という言葉は生まれなかっただろう。当然ながらそれなりの量の練習が必要になる。そこで今年の新歓では少し工夫した練習方法を試してみた。

形を組む練習〜3色数牌麻雀〜

字牌を抜いた数牌だけの山で形を作るトレーニング

 メタビート発案、字牌無しの3色数牌麻雀である。字牌を整理する過程をすっ飛ばして、数牌だけで手組みをしようという試みである。字牌を切り飛ばす手間を省くことで短時間での局回しを可能にし、形のトレーニングの密度を増やせることが大きな利点となる。流局まで聴牌に行きつかないということもまずないので、門前で聴牌して立直するという基本的なゲームの進行を確実に経験できるというのも教える側としては都合が良い。上の画像からも分かるように、このタイミングで立直の仕方について教えている。牌効率の基礎中の基礎となる
「孤立した牌から捨てていく」
「端の牌より真ん中側の牌の方が使いやすい」
「中盤に迷ったらグループ分けして一番不要な6グループ目を払う」
といった程度のことを教えれば大体なんとかなる。別に「完全ー向聴の取り方が〜」とか「手役が〜」みたいな小難しい話は全スルーで良い。とりあえず初心者の新入生が手を動かして実際に牌を並べてみることに意味があると思っている。まずは形を組み上げてゆき、あと1枚というところまで来たら立直をしようというテーマで5局ほど打てば多くの新入生は形を自力で組んで立直を打つことができるようになった。
 山から字牌を抜いて通常三麻(108枚)の設定にすればすぐに準備ができるので、気になる方がいらっしゃれば試してみてほしい。

役は何を教えるべきか?

 4面子1雀頭を作れるようになったところで、次は役を教える段階に入る。いくら形を作っても役がなければ和了れないので避けては通れない。もちろん全ての役を教えても意味はないので、使いやすいのはもちろん分かりやすい役を教えたいところだ。また、この次に副露について教えているので、副露手にも対応している役というのもポイントが高い。そんなことを考えていたら渡りに舟か、渋川難波プロがこのような動画をアップしていた。こちらもリンクをお借りしておく。

 雑にまとめると立直を中心に、手軽さと打点の乗りやすさを評価して、断么九・役牌・混一色・七対子をまず覚えようということである。
 立直については「自力であと一枚のところまで来たら立直しよう!」と3色数牌麻雀のところで説明しているのですでに使えるということになっている。したがって残りの4役をどのように教えるかがここでの本題となる。

断么九(タンヤオ)

覚えやすさ: ★ ★ ★ ★ ★
狙いやすさ: ★ ★ ★ ★ ★
打点   : ★ ★ ★ ☆ ☆

 2〜8の数牌のみで4面子1雀頭を構成することで成立する断么九は雀魂看板キャラクターである一姫の伝家の宝刀ということでとても分かりやすい。「内側に寄せていくんだよ〜」という牌効率の基本とも実に相性が良いので役を教えるなら鉄板と言って良いだろう。ドラや立直とも相性が良いので打点力も悪くない。基本的な役を教えたらドラについても説明するのが良いだろう。タンニャオ!

役牌(三元牌:白/發/中・自風牌・場風牌)

覚えやすさ: ★ ★ ★ ☆ ☆
狙いやすさ: ★ ★ ★ ★ ☆
打点   : ★ ★ ★ ☆ ☆

 3つ揃えるとそれだけで役がつく字牌は是非マスターしたい。役牌は三元牌→自風牌・場風牌の順番が良いだろう。全員にとっていつでも役になる三元牌の方が条件が緩くて説明しやすい。私たちはこの時点で荘家と散家の区別や、東場・南場の区別等は全く教えていないので、ここで風について教えるようにしている。別に実況:日吉辰哉になっているわけではない。使える風牌の説明が少し面倒くさいが、これを使えるか使えないかで副露の幅は大きく変わるので避けては通れないだろう。雀魂のように自分の風が一目で分かれば良いのだが慣れてもらうほかないだろう。やはり雀魂は偉大だ。
 注意しなければいけないのは、反時計回りに「東→北→西→南」や「東→西→南→北」の順番ではなく、「東→南→西→北」になることはしっかり確認しておいた方が良い。麻雀特有の席順配置は日本人の直感に反する。

 さて、渋川プロの動画によると初級者が習得すべき残りの2つの役は混一色と七対子とある。渋川プロの説明を聞けば分かると思うがどちらも初級者に教える上で実に理にかなっている手役と言える。しかしこの段階では私たちは混一色は教えて、七対子はスルーしている。この辺りは教える人によってまちまちであるとは思うが私たちの考えを述べておく。

混一色(ホンイツ)

覚えやすさ: ★ ★ ★ ★ ★
狙いやすさ: ★ ★ ☆ ☆ ☆
打点   : ★ ★ ★ ★ ★

 混一色は字牌と萬子・筒子・索子のどれか一種類で4面子1雀頭を構成することで成立する。混一色は字牌を残さなければいけないので牌効率に反する、すなわち聴牌までの最短ルートから外れることが多いという難点はあるが、断么九と違ってドラだけでなく役牌とも組み合わせることができるため手軽に打点を作ることができ、副露手の切り札となりうる。何でもかんでも混一色を狙わないように注意して見守らなければならないが、分かりやすさは断么九に並ぶため初心者に教えるに値する役だと思う。

七対子(チートイツ)

覚えやすさ: ★ ★ ★ ★ ★
狙いやすさ: ★ ☆ ☆ ☆ ☆
打点   : ★ ★ ★ ★ ☆

 異なる種類の対子を7種類集める七対子、英語名の“Seven pairs”からもわかる通り、見た目からして非常に分かりやすい。なんなら4面子1雀頭なんかよりも覚えやすくて、初見の分かりやすさは初心者に教えるにあたって大きな魅力だ。また、ドラが2枚単位で乗るので高打点になりやすいのもポイントが高い。しかし、言い古されていることではあるが七対子のデメリットとして
①一向聴から聴牌まで行きつかない
②聴牌したとしてもなかなか和了りまで結びつかない
ということが挙げられる。
 ①については最大3種類9枚というかなり狭い受け入れは、素早く聴牌して立直を打ちましょうという初心者に教える基本戦術と反りが合わない。②についてはかならず単騎待ちになってしまうということももちろん大きいのだが、七対子の和了りやすさのために過度に字牌を残してしまいがちになるという別の懸念点にも通じている。初心者にはとにかく素早く聴牌して、たくさん和了ってもらうという基本方針と相性が悪いということで、最初の役を覚えてもらう段階ではスルーしている。また、昨年度晴れて卒業となった先輩も七対子という役が単純で分かりやすいゆえに「初心者に七対子を教えるとそれに偏りすぎてしまう」と言っていたことも参考にしている。

 渋川プロは混一色・七対子について、字牌を無理なく手に残せることで守備力を担保できるという戦術面でのメリットを挙げていらっしゃった。もちろんこれはこれから麻雀上手くなろうという初級者にとっては重要な戦術であるが、私たちは初級者以前の1時間前に麻雀を始めた初心者に最速で形を作りましょうというテーマのもとルールを教えている。手組みの段階で字牌を手に残すという発想は最速で聴牌して和了りの抽選を受けるという基本戦術と単純に相性が良くない。
 その点を加味して、後々字牌を鳴けるようになるなら速度的に先手を取ることもままある混一色は教えるけど、七対子はもう少し後で良いんじゃないかなぁ〜ということで、私たちは「立直・断么九・役牌・混一色」の4つを最初に覚える役として教えることにしている。

教える必要のない役

 また、早く覚えるべき頻出役として他に挙げられることが多い「平和(ピンフ)」「門前清自摸和(ツモ)」あたりは教えなくても良いのか、ノーベル平和賞って名乗っているのに…ということを考える方もいるかもしれない。どちらも出現率は非常に高いが、結論から言えば初心者に教えるにあたっては明確にいらないと考えている。渋川プロの動画でも平和については言及されていて、その理由をまとめると、
①平和が成立する4つの条件(門前・面子は順子のみ・雀頭は非役牌・両面待ち)をすぐに覚えるのは難しい
②平和が成立する時は門前聴牌なので立直しているはず→平和を狙わないと役が消えるという状況になりえない
という2つの理由(特に②が重要)で、一直線に立直に向かう基本を抑えてほしい初心者には平和を教える必要はない、ということである。この点に関しては渋川プロに完全に同意するところである。同様の理由で門前清自摸和も門前状態なのだから立直しているでしょということでこちらもそのうち覚えていってもらえれば良いかなと考えている。平和や門前清自摸和を教えるくらいだったら対々和(トイトイ)などを教える方がよっぽど良いのではないだろうか?

副露(鳴き)について教える

手にある塔子と相手の捨て牌一枚を使って面子を作る副露(チー・ポン)は、基本的な役を教えてからが良いだろう。鳴いていったら役なしで和了れないということもままあるので、鳴くこと自体を教えるというよりかは、「こーゆー役があるから鳴いていけるね〜」的な教え方になる。副露の際の作法を軽く教える程度なので雀魂のチュートリアルを使うなどして、サラッと進めちゃって良いだろう。基本的には実戦の中で副露の作法や役があるかどうかなどを再度確認するのでここで時間をかける必要はない。

実戦練習

 役もいくつか使えるようのなったところで実戦形式で麻雀を打ってみる。実戦形式といっても最初は手牌を全員開けながら打つことになるが、教える側は打牌選択をできるだけ簡潔な理由付きで打っていく。大体
「ひとりぼっちの字牌を切っていくよ〜」
「2より3の方が内側だから使いやすいね〜」
「これは役牌だから鳴いてみるよ〜」
くらいの初心者がすぐ真似られる程度の内容で良いと思う。初心者の新入生には適宜助言しながら2〜3局ほどやればここまでのおさらいはできるはずだ。また、この辺りでドラについて解説しておくと良いだろう。ドラについては実戦形式の前であればどこでも良いと思うし、なんならしばらくは教えなくても良いという話もある。

採用役制限麻雀

 ここから手牌を立てて本当に麻雀を始める。これくらい準備すれば、なんだかんだ打てるようになっている。まずはここまでで教えた「立直・断么九・役牌・混一色」だけを使って麻雀をしてみる、がまぁ意外と進行自体は普通に麻雀になっている。新入生に後ろ見を1人ほどつけておいて困ったら助ける程度で良いだろう。これを数局やってゲームの進行に問題なければ役の制限も解除して、点棒授受を含めて練習すれば良いだろう。

 大体ここまでやれば他の経験者(ネト麻のみ勢を含む)の卓に入れても何とかなるだろう。ここから先は新入生のモチベーション次第というところになるだろうか。ここまで書いたことをするのに大体3時間ほどかかっているが、このくらいやれば本当に麻雀やったことありませんという人でもとりあえず自力で打てるようになる。初日で打てるようになれば上出来だろう。教えた新入生達がたまたま筋が良かっただけかもしれないが…
 あとは彼らが慣れるまで上級生がサポートしてあげて、徐々に上手くなってくれると良いなぁと考えている。
 早稲田麻雀部の初心者定着率はここ2年は0に近かったので、初心者が定着するようにと今年は色々工夫してみたがまだ手探りの状態なので、他サークルの取り組みなどを教えていただけると幸いだ。改善案等についても是非コメントをいただきたい。

それではまた…

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