和歌おきば 2019-10 (降順)

短歌

みしなん 楼閣の卿(けぐわしう 王気(うけ)立ついろ のぞむ雅会(黒川伯爵のハロウィンナイトに寄せる沓冠)

心ある人や見つらむたまほこの石もシュヴァルの宮のひとかけ

目のあふて請けにしパイのあたたまるそばに珈琲からから挽けり

玉かぎるほのかに櫨の下葉より暮れぬる秋の色をしるかな

いづくにか我もさかゆく国あらむ——汝のゐぬところそこに幸あり(「さすらい人」に寄せる)

つききりに煮たるロイヤルミルクティー蒸らせば秋は深くなりけり

うそ寒の手にも親しオオサンショウウオけふのわれさへゆるされなむや

みやこより来たりしものぞオオサンショウウオいとほしさ何かまさらむ

ただいまと手よく洗ひオオサンショウウオ撫づるも主のなさけなりけり

たづねども見えぬ桂花の何方風に民のかまどの煙のりたり

実が入りて心葉にはふ草臥は心身二元かれざるしるし

自伏してたぎつ空虚の胸郭に籠めるをへせばⅠ音Ⅱ音

おとづれに睡もやすからぬ風をいたみ野分のまたの日もきづかはし

野分くる寝屋にわぶわぶうつぶせば呼吸性不整脈らうがはし

うちたれば指あげるべし休符なる音なき音のせぬぞこちたき

朝寒は枕をしけし伏して見む瞼のうらの幾何学模様

天雲のおくかも知らずわれふるや道かれがれの白彼岸花

いそのかみふりたる時雨われいつか行くかれがれのはみずはなみず

鋭意追い合おう永々家を覆う愛を言い合う良い相生を(母音の言葉遊び)

秋燈下鳴くや夜長の腹の虫いただきに文とぢて積みけり

夕月のかぶく家路をゆふつづのか行きかく行き宍と菜ぞ買ふ

つぶやける見えたき人はおほかれど面目玉のなきぞくやしき

俳句

鵯鳴けば今朝もわれなり夢おぼろ

朝冷の猫背もすらり金木犀

りんごジャム煮るや部屋着は初長袖

長き夜やファントムしっぽふる侘寝

やるき出ん秋思でんでん太鼓うて

夕月や横にならうまた縦にならう

秋の潮サリネラまだ見つからないの

ズッキーニ切る一足先のいちょうかな

おけら鳴く税駕や贅は減ぜなむ

涸池や渋皮栗のうまアイス

秋陰やおふとんのそりハイ出ガー

つくね棒けふは当たらず散る柳

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