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【拝啓 富士屋ホテルさま】

こんにちは、野ばら子です。今日も元気に野ばら社で働いています。

自己紹介を兼ねた記事はこちらからどうぞ🍀

さて、野ばら社同様レトロでクラシックなものに目がない野ばら子です。

今回は、日本を代表するクラシックホテル“富士屋ホテル”へ行った記録です。

インスタグラムでフォローして下さっている方は、“変更点や、この気持ち、書ききれないのでまた別投稿でお目にかけます🙏”と書いたものになります。noteに載せられなかった風景もインスタグラムの方で紹介していますのでよろしければご覧下さい。

さて、本題。

リニューアルして、どこが変わったのか、変わらなかったのか、またコロナ禍でどうなってしまったのか…気になっていたことを見てきました。

特に“秘密の部屋の存在”に、秘密の花園のようなドキドキを感じ、書いていたら、すっかりラブレターになってしまいました。

拝啓 富士屋ホテルさま

富士屋ホテルさま、中でも宮ノ下のあなたは、乙女の憧れを詰め込んだ場所です。

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木製の回転ドア
真紅の毛氈
ヘリンボーンの床
真鍮のグレーチング

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猫足のバスタブ
クラシカルな制服
木製の使い込まれたルーム・キー

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温泉のとおるラジエーター
花御殿のそれぞれに花の名前がついたお部屋
メインダイニング・ザ・フジヤ…

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これらを前にどうしてあなたを好きにならずにいられましょうか。
2年のおやすみ期間を経て、
昨年2020年、142年目の創業記念日である7月15日にリニューアルオープンされましたね。

その間、多くの人がそうだったことと思いますが「リニューアル」という言葉に一抹の不安を感じたのは何かが新しくされてしまうのでは、ということに起因していたのでしょう。

2020年1月1日。
野ばら子は、オープンに先駆けて開始された予約のためのwebサイトを開き、あっという間に1年後までほぼ埋まってしまったカレンダーを閲覧していました。

当たり前だけれど再オープンを待っていた人がこんなにいるんだなぁと実感し、あなたの人気ぶりを嬉しく思ったのでした。

世の中では、未知のウイルスが猛威を奮い始めた頃。
諦めきれないので時折あなたの予約サイトを開いては予約状況をチェックし、「リニューアルって、どこをどうしてしまうというのだろう。あの、素晴らしいあなたの…」
と、いささかの不安に胸をちくりとさせながら過ごす日々でした。

2020リューアルオープンの日


いよいよ迎えた7月15日の朝10:00。
あなたのSNSにあげられたのは12コマを使ってのグランドオープンのお知らせ。
「RE-BORN」の文字「O」の中には富士屋ホテルのロゴ。

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テープカットの様子とマスクで参加する人々。
そして、”世界的にみても、今や珍しい、「そのままを変えない!大改修」”の言葉でした。 
行けなかった分、宮ノ下の様子を伺い知ることができて嬉しかったです。

その日のツイートがこちら。

全クラシックホテルの頂点、乙女の永遠の憧れと言っても過言ではないあなた。そのリニューアルオープンというビッグニュースをどうにかお伝えしたかったのです。
(ベーカリーピコットは少し前にオープンしていて、知人からお土産にいただいたもの。好きと発信し続けているといいことがあるものです、感謝。)

ある日、まさかの、もう、何がどうしてそうなったのか、ついに思いが通じて、すべての段取りができて、予約をとることができました。


変わったこと変わらないこと


何年かぶりに見るあなたは、変わらずオリエンタルで和と洋のどちらの美しさも兼ね備えた重厚な佇まいで宮ノ下に存在していました。
出迎えてくれるホテルマンの方も変わらない制服で親切で丁寧で品がよくきちっとされていました。

変わっていたのは、入り口にエレベーターがついたことでした。

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今まで、車椅子の方も重い荷物もホテルマンの方々があの真紅の毛氈の階段をフロントスペースまで持ち上げていたのです。
そして、「もともとここには何があったっけ」というほど自然にエレベーターは存在していました。

フロントへ続く階段の最上段の竜には、歴代の営繕さん(富士屋ホテル所属の造作、修繕担当部門)によって直された竜のひげまでが、そのまま残っています。

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そして、そこには「クラシカルで重厚な印象は変わらないけれど明るくなったフロントスペース」が広がっていました。
真紅の毛氈、階段、フロントの尾長鶏、マジックルーム、クリスタルルームの看板…

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位置が変わったものもまるではじめからそこにあったようにしっくりと場に収まっていました。
全てのものやパーツを出し、壁など耐震補強をし、ものやパーツは営繕さんや職人さんが修復し綺麗にして、元に戻す、または違う場所に移動して使用しているそうです。


途方もない作業です。


細かいヘリンボーンの床も一枚一枚はがして、綺麗にして、また元の通り戻したのです。
メインダイニング・ザ・フジヤの天井画(450枚強)も一つ一つ外し、汚れを落とし、もとに戻したそうです。

(ちなみにメインダイニングの竣工は、野ばら社創業の1年後・昭和5年だそうです。)

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国登録文化財を守るという使命をこんなに完璧に果たして、よく2年で終わったなと思いました。
歩くとギシギシと鳴るのも以前のままですし(それですら、嬉しい)、印象は何も変わりません。
ほぼ記憶のあの場所のままで、快適に、耐震補強により安全になったのでした。

唯一建物を壊して新築された「カスケード・ウイング」でさえ、中のお部屋は、ステンドグラスや彫刻ごと移設され残っているのです。最上階には箱根らしく、広いスパができたそうです。

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リニューアルの際、新設されるスパの場所が屋内プール「マーメイド」の場所も候補だったと知り、やはり…と思いました。

「何を残すかという選択の連続だった」


以前のあなたには、クラシックというよりも「古すぎる」と言われてしまう場所がいくつか見受けられ、「マーメイド」はそのひとつだったからです。
結果的に、あなたを愛する方々は「マーメイド」を残してくれました。

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本当に印象も前のまま、ただただタイルや床や壁が新しくなり、イマドキにもジムが併設されていました。しかも、プールなのに、天然温泉を使用!これはホテルの室内プールでは日本初だとか。


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「何を残すかという選択の連続だった」と後から伺いましたが沢山の人に愛されてきたからこそ、リニューアルプロジェクトを進める方々がどれほどこの場所を「印象を変えずに残し、新しくする」ことに頭を悩ませたかが伝わってきました。
そして、それは「いいホテルなのはわかるけど古すぎる」と言っていた層も確実に虜にするだろう大成功。

嬉しかったところ
①お部屋の水回りが新しく機能的になったことでスパに行けなくとも、お部屋での入浴でも大満足。
そもそも温泉地、蛇口をひねれば温泉がでるのです(シャワーは温泉ではありませんが)。
②温泉のめぐるラジエーターのおかげで冬でも温度を保ち心地よい館内。

古き良きものを好きな人、審美眼とこだわりをお持ちの方は「本館」「花御殿」へ。
クラシカルな中にも都会の雰囲気と快適性を求める方は「フォレストウィング」へ。
ヨーロピアンクラシカルがお好みの方は「西洋館」へ。
まさに新生・富士屋ホテル。
この大改修により、老若男女を満足させるスーパークラシックホテルへ進化を遂げたあなたは次の140年もまたたくさんの人を虜にしていくことでしょう。


そして、今回一番驚いたこと。


それは、この改修工事で「残す」選択をしなければ永遠に葬られていたものの存在です。


秘密の部屋の存在


壊して新築すれば、費用は三分の一で済んだと聞いています。
でも、あなたに関係する方々はそれを選択しませんでした。
どれほどの企業が、同じ選択をとれるでしょうか。本当に素晴らしいことだと思います。
この場所に縁とゆかりと思い出がある全ての人の「記憶にあるあの場所」がなくならずに次の世代へと受け継がれていくことを喜ばしく思います。
そして、壊す方を選択していたら見つけられなかったという、秘密の部屋の存在!
そこは、鉄の扉で閉ざされた部屋。
鍵穴はかろうじてあるような感じだったけれど肝心の鍵は誰も知らず、存在すら聞いたことがない…
おそらく戦争時、接収される前に隠されたのだろうということでした。

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そんな大事な秘密を、隠した人(4代目・山口堅吉氏ではとのこと)は、家族にも誰にも告げずに死んでいくなんて、どういうことでしょう。
そこを開けてみると、出てきたのは
みかん箱にして60箱分の資料。
まるで、時が満ちてタイムカプセルがあけられたようですね。

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その貴重な資料は、「ホテル・ミュージアム」に展示してあり、またひとつ学びを深くすることができました。
「何かに守られているのだと思いますよ」とホテルの方も仰っていて、そもそも神社仏閣のような建築群ですが、美しいパワースポットでもある気がしました。

おわりに

明治開業、令和に新生したあなた。
行けばパワーをもらえる美しい文化財。泊まれる美術館。
その唯一無二の存在は、大改修によって更に特別になり、世界の誰もが「一生に一度は泊まってみたい」と思うに違いありません。
コロナ対策も万全だったあなたですが、時節柄どうぞご自愛くださり、これからもたくさんの方々と素敵な時間を共有されますよう心から願います。
わたしもまた必ず会いに参ります。

かしこ

令和3年7月15日
リニューアルオープンから1周年の佳き日に

野ばら子

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追伸:

「富士山の日」に販売開始している昭和28年の野ばら社『學友年鑑1953』より当時の「富士山と五湖附近図」です。
富士屋ホテル及び系列施設が米軍からの接収解除、施設貸与終了により、一般営業を開始された昭和27〜29年頃の地図ですね。

この地図には、“富士屋ホテル”は載っていませんが箱根や強羅、箱根湯本など当時の様子を表したものです。
詳しく見たい方は、全国のローソンにて印刷できます。

►【復刻】「富士山と五湖附近図」
https://shop.cvs-seal.net/shop?id=5fbccb3ce992459ce5226921


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