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これからの女性リーダーのために、私たちが今できることは?|「Women in Leadership」イベントレポート③

2021年3月、UN Women(国連女性機関)日本事務所の後援のもと、国際女性デーによせたオンラインイベント「Women in Leadership」を#NoBagForMe PROJECTが主導して開催しました。そのセッションの模様を全3回に分けてお届けします。

第3回は、最後のセッションとなる「平等な未来へ。女性がリーダーシップを発揮するには」。ジェンダー平等を実現するために、より多くの女性リーダーが必要です。そのために、私たちができることとは?

ゲストにお迎えしたのは、競泳元日本代表の伊藤華英さん、ストア運営や企業へのコンサルティングを通じフェムテック&ウェルネス事業を展開するfermataのAminaさん、そして女性のためのキャリア・美容・ファイナンススクールを手がけるSHEの福田恵里さん。モデレーターを務めるのは、#NoBagForMe PROJECTでディレクターを務める村山佳奈女さんです。

女性がリーダーシップを発揮するために必要なものは?



ひとつ目のテーマは「それぞれが考える課題」。異なるフィールドで活躍する3人だからこそ、抱えている課題もそれぞれ。
まず伊藤さんから語られたのは、スポーツ界における男性指導者の多さ、その背景にある女性の妊娠や出産、さらには生理に関する問題について。
 
伊藤:コーチ業ってすごく過酷なんですね。朝早くから練習がはじまり、夜は10時くらいまで選手と一緒に行動することになる。それもあって「大きな仕事は、女性に任せるのを遠慮してしまう」とおっしゃるスポンサー企業の方もいました。背景には妊娠・出産などの問題もあるのですが、女性が指導者になるまでのハードルはまだまだあるなと感じています。

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一方、ここ数年で変化の兆しも感じているとか。
 
伊藤:10年前は、生理に対する社会的な理解がまだまだない状況でした。女性選手の生理周期を男性コーチが把握しようとすると、親御さんからセクハラだとクレームが入るようなことも。また私自身、当時は生理に関する知識がなく、PMSによる気分の落ち込みを把握できてなくて。それをコーチに伝えたら、自分自身の精神力の弱さだと思われるんじゃないかと、怖くなることもありました。でも、競技力がどんどん向上するなかで、生理の問題は見て見ぬ振りができなくなっていると思います。


続くAminaさんからは、フェムテック業界の成り立ちについて説明がありました。ここ数年、日本でも広まっている「フェムテック」。これも、女性のウェルネスについて話し合う場がこれまでに少なかったからこそ生まれてきたといえます。
 
Amina:「フェムテック」という言葉は、もともと起業家と投資家の間で使われていた言葉なんですね。2012年にドイツの起業家が生理管理アプリを作るために資金調達をしようとしたら、まったく集まらなかったそうなんです。それは投資家に女性が少ないことも影響している。そこで「フィンテック」や「エドテック」から着想を得て、ビジネスチャンスがあることを「フェムテック」という言葉を使い、男性の投資家にわかりやすく説明したんです。そうしたらお金が集まったと。そのアプリは「‎Clue(クルー)」というのですが、現在は約190カ国の人々に広まりました。そうした波が日本にも届きはじめているのが今です。

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そして福田さんからは、女性のキャリアに関する課題について説明がありました。
 
福田:コロナ前から持っていた課題なんですが、女性が第一子を出産した後に47%が離職してしまうという調査結果があるんです。もちろん自分の希望で仕事を辞める人もいるとは思うのですが、一方で出産をきっかけにキャリアを諦めている人も含まれているんですね。また、2020年にはコロナ禍で一時的に74万人以上の女性が職を失われて、この数字は男性の2倍にのぼります

女性の非正規雇用率は、世界的にも大きな課題です。その状況を反映してか、国内では近頃、女性の「働き方への意識変化」も見受けられたそう。
 
福田:私たちの会社で1,000人以上にアンケートを取ったんですけど、コロナ前後でキャリア感がガラリと変わった方が多くて。なかでも副業に興味を持つ人がすごく増えていて、個人で生き抜くスキルを身につけようというニーズも増えているなと感じています。


性別関係なく、すべての人が活躍できる社会を目指して


女性には、自分を過小評価してしまう「インポスターシンドローム」に陥る傾向が強く、個人で活動する際の妨げになることもあります。「それを防ぐためにはメンタルのトレーニングも必要」と、Aminaさんは語ります。
 
Amina:ある講演で、WHOの元事務局長のマーガレット・チャンが「女性だからその椅子に座るのではなく、あなただからその椅子に座れるようになりなさい」と発言していたことをきっかけに、どうすれば自分らしくいられるかを考えるようになりました。私も自身を過小評価してしまう時があったので、「今わたしはインポスターシンドロームに陥ってるぞ!」と意識するトレーニングをしました。
 
また、福田さんの経営する「SHE」で展開するキャリアスクール「SHE likes(シーライクス)」では、コーチングを取り入れたサポートをしているそう。

福田:スクールには、具体的なビジョンが見えている人もいる一方で、自分の生き方に疑問を持ちつつも何をしたらいいかわからないという方も多くて。それで、精神的に不安定になってしまう方もいらっしゃるんです。
その対策として、SHEではコーチングを取り入れて、その方の人生のあるべき姿を言語化するようにしています。あと、約束事として「私なんか」という言葉は使わないようにルール化していて。それによって心理的安全性を保ちながら、学びを深められるようにしています。

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ちなみに、世界を相手に戦うトップアスリートはどのようにしてメンタルを鍛えているのでしょうか。
 
伊藤:私は現役時代にメンタルが弱いと言われていて、そもそも何が弱いのかわからなくなってしまったんですね。その答えを知るために、引退してから大学院に通って「メンタルタフネス」を研究して博士号を取得しました。それでわかったのは、ストレスがない状態とある状態を行ったり来たりすることが大切だということでした。
 
こうしたメンタル面のサポートに加えて、フィジカル面でアプローチできることはないのでしょうか? この質問に対し、Aminaさんから最新のフェムテック&ウェルネス製品について紹介がありました。
 
Amina:まだ日本では承認申請が通っていない商品もたくさんあるのですが、生理についてのプロダクトひとつとっても、なかには生理痛を緩和したり、痛みを数値化して見えるようにできるものも。日本では吸水ショーツや月経カップも話題ですよね。特に月経カップおよそのは経血量がわかるから、自分の身体について知るきっかけにもなると思います。

 

平等な未来を実現するために。リーダーたちの抱負


セッションの最後には、「『平等な未来』のために」と題して3名それぞれから今後の抱負が語られました。
 
伊藤:私は現在、「1252プロジェクト」という活動を通じて女子学生アスリートが抱える身体の悩みに向き合っているのですが、たとえば生理に関しても一人ひとり症状が異なるんですね。そうした違いを、男性・女性・LGBTQ関係なく一人ひとりが知っていくことで、世界に目を向けていくきっかけになる。いろんなステークホルダーとコミュニケーションを取ることで、SDGsにもつながっていくと思います。

Amina:fermataでは、「あなたのタブーがワクワクに変わる日まで」というビジョンを掲げています。これまで固定観念の中でタブーとされていた、女性の身体にまつわる課題を明らかにしどんどんオープンにしていき、価値観を変えていきたい。伊勢丹新宿店や銀座三越でポップアップストアを開催したりと、直接プロダクトに触れられる場をどんどんつくっていくので、これからもよろしくお願いします。
 
福田:SHEは、ビジョンとして「一人一人が自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中を作る」と掲げているのですが、そのためには世の中の格差や不均衡や分断を是正していかないといけないと思っていて。だからこそ女性のキャリアについて取り組んでいるし、これからは美容や金融の領域にも踏み込んでいこうと考えています。そうした動きを通じて男性・女性関わらず、すべての人がありたい姿になって熱狂している世界を作っていきたいです。

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 3人に共通するのは、性別関係なくすべての人が活躍できる世の中を作りたいという想い。それを感じ取れる意義深いセッションでした。
 
こうして、2時間に及ぶイベントはすべて終了。今日この場で話された課題を解決して「こんな課題も昔はあったよね」と懐かしむ日が来ることを願いながら、#NoBagForMe PROJECTは活動を続けていきます。引き続き、ご注目ください!
 
 
 
文・村上広大
写真・山口雄太郎

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