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「生理のおもしろ話、もっと共有したい」バービー×瀧波ユカリ“女のホンネ”対談

「私、性教育についてすごく調べたことがあるんです」

こう語るのは、お笑いコンビ・フォーリンラブのバービーさん。「女性たちに、もっと自分のカラダを好きになってほしい」との想いから、実体験をもとにプロデュースした下着も発売予定です。

普段、体を張って笑いを届ける姿とはまるで別人のようですが、性や女性のカラダについて真摯に向き合う一面にも、注目が集まり始めています。


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そんなバービーさんと同じ北海道出身で、世代も近い#NoBagForMeメンバー・瀧波ユカリさんたっての希望で対談が実現。偶然にも、衣装まで息ぴったりなお二人が、生理のことはもちろん、女性を取り巻く社会の空気感など、1人の女性、1人の作り手としての本音をとことん語り合いました。

新しい扉が開かれたラジオ出演

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バービーさん
1984年生まれ。出身は北海道夕張郡栗山町。お笑いコンビ・フォーリンラブのボケ担当。

瀧波(以下、瀧) 武田砂鉄さんとのラジオの書き起こしがすごくおもしろくて、今回ぜひ対談させていただきたいと思ったんです。あと、同郷じゃん!と思って。

2018年8月30日放送のTBSラジオ「ACTION」では、パーソナリティの武田さんとともに、これまでのバービーさんのパブリックイメージとはまったく異なる領域のトークを展開。読書家な一面やお笑いに対する価値観など、教養高いパーソナリティが浮き彫りとなり、ネットを中心に大きな話題をさらった。

バービー(以下、バ) ありがとうございます。あのラジオはすごく反響がありました。

 ずっとバービーさんをテレビで観てきたけど、同じ名前の別人なんじゃないかという内容で。思わず、記事をさかのぼって写真を確認しちゃいました。

 本当にあのラジオで、扉が開いたというか。ハフポストさんのような、今までまったく関わりのなかった媒体さんからもたくさんお声掛けいただきました。

 ただ、ブッ刺さる人もいれば、痛くもかゆくもない人もいるんだなって。意識のアンテナの張り方次第で、こんなに反応が違うんだと改めて気づきました。

 私の周りで刺さった一部の人からは、「そんなふうに思ってたんだ……」みたいな戸惑いの空気を感じましたね。特に、テレビでゴリゴリに演出してくれてたような人。でも、今までのお仕事に関しては、基本的には変わらずですね。

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 ただ、あのラジオがきっかけで、お仕事の幅も一気に広がりました。ずっと夢だった連載やラジオのお仕事を新しくやらせてもらえたり。インタビューでも、私の話すことをさらに高いレベルで要約してくれる方もいて、取材を受けるだけで、今はすごく勉強になっています。

 メディアの人は、きっとあのラジオからバービーさんの新情報がザクザク出てきて、大喜びだったんじゃないかな。

 下着から町おこしまで、いろんなジャンルの話をしましたからね(笑)

 下着といえば、遂に「バービーのブラ」完成したんですよね。いつ発売なんですか?

 2月5日です。自分でデザイン画を描いて、知り合いのツテをたどりまくり、当たって砕けろでピーチ・ジョンさんに持ち込んだものが、ようやく。

 実は、何社も練り歩いて、プロデュース企画について相談してみたんですけど、ほかは全然ダメで…。

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ピーチ・ジョンとの初めての打ち合わせに、バービーさん自らデザイン画を準備。妥協を許さずに何度も試行錯誤を重ね、構想からなんと2年以上をかけて形にしたという。(画像:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000293.000009170.html)

#NoBagForMe が始まったときと似たようなことが起こっていたんですね。 (#NoBagForMeプロジェクト発足のきっかけは、こちらの記事をどうぞ。)

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サイドボーンでアザができたバービーさん自身の体験や、SNS上で寄せられたリアルな悩みを反映したブラジャー。アンダー90cmの取り扱いは、ピーチ・ジョンでは初めて。

 ブラジャーはサイズが細かく決まっているから、開発が大変ですよね。

 サイズ展開はカップがC〜G、アンダーが65cm〜90cmで、まさか小さいサイズが作れなくなるとは……。このコラボがいい感じにいけば、今後もっと幅広く対応していけるんじゃないかなって期待しています。

 この間のビジュアル撮影で、私がテンション上がってヒモTバックになっちゃったもんだから、どこまで表に出せるか……ピーチ・ジョンさんは「もうやめてくれ」って思ってるかも(苦笑)

 でも、「すべてのおっぱいが、気高く胸を張れる毎日を送れるように」という想いを込めて作ったので、たくさんの女性につけてもらいたいです。

生理の“おもしろ話”、もっと共有しなきゃ損!

 最近のバービーさんの活躍を見て、なんで#NoBagForMeのメンバーじゃないだろうと思っちゃいましたよ。

 まだ私が新たな扉を開ける前でしたからね。でも、プロジェクトはずっとTwitterで見てました。私だったらどんなパッケージのタンポンにするか妄想したり。

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 ユーザーさんたちも、自分ならどういうデザインがいいか、自分ごととして考えてくれていました。なかには、めちゃくちゃ熱くなる方もいて。

 Twitterだと特にそういう熱量を感じますよね。

 そうなんです。一時「デザインをなくしちゃえばいい」という声が続出して。もう真っ白にして何も書かない、みたいな。でも私は、それは“何もないことにしている”のと変わらないのでは?と感じたんです。

 何が正しいか、どれだけ多くの人に配慮できるかを突き詰めると、新しいものが生まれにくくなる。私たちの目的は、生理用品の選択肢を増やすことであって、誰にとっても100%を良いものを目指しているわけではないんだなっていうのは、プロジェクトを通して気づきました。

 私個人としては、どのパッケージに決まっても素敵だなと思ってました。

 ある程度の年齢になれば、レジに持っていく恥ずかしさがなくなってきますしね。でも、やっぱり10代の頃はハードル高かったなぁ……。おじさんがレジで、しかも子ども時代から顔見知りだったりするから。

 自分の住んでる町では無理でしたね。

 生理を茶化してくる人がいなければ、私たちもこんなに恥ずかしさを覚えなかったのかも。そういうイジりにだけは、温和な気持ちでは対応できないなぁ。毎月苦しい思いをしているからこそ。

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 本当にカジュアルに「生理だからイライラしてるんでしょ〜?」みたいな会話ってありますよね。そういう決まり文句から、間違った情報が入ってきちゃうこともありそうです。

 たしかに。女性同士でも生理の話ってなかなかオープンにしないし、共有しないですよね。

 しなかったですね。初潮の時期がバラバラなのは、共有しにくい一因になっていそう。

 私、初潮が中2くらいと遅めで、周りの子はもう一通り、生理のハラハラドキドキが終わった頃だったんですよね。

 最初の頃ほど、話しづらいですよね。1日に生理用品を換える回数ですら、かなり個人差があるって最近ようやく知りました。

 生理のとき、ちょうど女芸人だけのロケがあったんですよ。トイレにナプキンを持っていかなかったことを指摘されて「毎回換えるの!? 私、2〜3回飛ばしなんだけど!」ってびっくりしちゃって(笑)

 そんな発想自体なかったから、もっと早く知りたかったです。でも、まだ余白があると、なんかもったいないんですよねぇ。

 わかる! 白いところが完全になくなるまで吸収させられると、すっごく気持ちいいし、ギャザーさすがってなる(笑)。こういう満足感とか、もっと共有したいんですよね。

 下ネタじゃない“生理のおもしろ話”ってあるじゃないですか。一人暮らしのときに、剥がした個包装をその辺に放置していたら、リュックの後ろに貼り付いて、そのままヒラヒラさせながら外を歩いてたことあります。

 あはははは! そういうのあるなぁ。

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 私、VIO脱毛でツルツルにしてから、めちゃめちゃ“伝いモレ”するようになっちゃって。

 以前は、ナプキンの真ん中が吸ってくれたのが、今はもう見事に手前。肉がついてる分、圧力で前へ前へ押し出されるのかも。いつも平気でお尻辺りがちょっと赤くなってたりするから、周りに「また!?」ってもう呆れられてます。

 タンポンも使うんですけど、毎回ではなく、水に入るロケとか移動がすごく長いとき。あと、やっぱり脱ぎ仕事。“尻出し仕事”のときですね。

──生理中でもお尻を出す仕事があるなんて、ハードですね……。

マネージャーさん バービーが勝手に出してるだけです。

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 あはははは! そうそう、別に頼まれてないし台本にも書いてないのに「今日は出せるかな?」って下準備をしてね、勝手に出してます(笑)

 私も生理中はタンポン使ってます。あと、いま愛用中なのは「シンクロフィット」ですね。

 え、なんですか?(実物を見て)あーナプキンにプラスして使うんだ。すごい、これは発明ですね。

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シンクロフィットは、カラダにつけるタイプの生理用品。膣口にフィットして経血を直接吸収してくれる。愛用者の瀧波さんは「トイレが近いときも、いちいちナプキンまで換えずに済むし、美容室のシャンプー台でも安心」と力説。

 これ使うと、デリケートゾーンの隙間がなくなるんです。伝いモレしやすくなるなら、VIO脱毛した方たちにもっと知ってもらいたいアイテムですね。

 生理中でもきれいにしやすいのはメリットだけど、処理して初めてわかったんです。やっぱり、毛はOもあるべきだなって(笑)

 失って初めて気づいたんですね。ヒゲのある人とない人の鼻血みたいな感じですかね?

 いやいや! ヒゲほどの量は生えてなかったですけど!! でも、このシンクロフィットがあれば、だいぶ心配度が違いそう。

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性教育の入口をキャッチーに

──お二人は、生理中で体調が悪いといったことは、周りの人にオープンに伝えますか?

 相方のハジメちゃんには言いますね。ピルを飲むようになってからは大丈夫なんですけど、もともと生理がすっごく重いので、ぐったりしていたら「生理?」「うん」みたいなやり取りは普通にします。パートナーにも生理周期は報告する派です。

 私は仕事相手にはないですけど、家庭内ではオープンにしています。9歳の娘にも、特にこのプロジェクトが始まってから、生理について質問されるようになって、説明し始めて10分くらいでセックスの話になりました。

 もともと、性教育の絵本を渡したりはしていました。でも、初めて“性行為をして赤ちゃんが出てくる”“そうじゃないときに血が出る”っていう点と点がつながったみたいで、「スッキリした!」と言ってましたね。

 家庭内での性教育って、かなりバラつきがありそう。

 興味がないと子どもは全然聞かないですからね。親が話したいタイミングで伝えられるものでもなくて。バービーさんのご家庭ではどうでした?

 今思い出したけど、初潮が来たことを1カ月間ずっと誰にも言わなかったんですよね。

 私は瀧波先生と逆で、すごく早かったんです。小3か小4の頃で、当時は毎日おばあちゃんとお風呂に入って、洗濯板でパンツを洗っていたんですけど(笑)、1枚だけタンスの奥に隠したんです。後日それを母親が見つけて、「生理だったみたい」と事後報告しました。

 だから、何も教わってないんですよね。小さい頃に母親とトイレに入ってナプキンの使い方は知っていたし、見よう見まねでというか。すっかり忘れていたけど、やっぱり生理は相当恥ずかしかったなぁ。

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 ユニ・チャームさんって、生理の教育キットを学校で配ってますよね? 私、前に性教育について調べたことがあるんですよ。

 私の中ではみんなで教わった記憶があるけど、男の子と一緒に習う地域と、そうじゃない地域もある。生理が汚いこととか、恥ずかしいことだみたいな、意識差にも性教育は影響するとかで。

ユニ・チャームは長年、全国の小・中学校に初経教育のためのキットを無償配布している。生理の仕組みについては、小学4年生で教えることが学習指導要領に定められているものの、その方法や内容は学校や先生に委ねられている。

 ちょっと前に、アイドルが生配信で床に置いた生理用品が映って炎上しちゃったとか、正しい知識のない男性が少なくないのは気になっているんです。こんなに生理関連のCMが流れていても、まだまだ誤解がある。

──スマホに生理周期の管理アプリを入れていただけで、ネット上で「悲報」「炎上」と騒がれた声優さんもいました。

 そんなの、男子がカレンダーにジャンプの発売日を書くのと同じようなもんだから!

 いまは、詳しいと逆に男友だちからイジられたりする。たぶん、男の子は同性の目のほうが怖いんじゃないかな。

 男の子同士では、たぶん「彼女の生理が重くて大変でさ。お前どうしてる?」みたいな会話にはならない。「血のニオイするよな〜」とかそっちの話。ここは、発信力のある男性たちが、オープンに生理の話をしてくれるようになると、世の中が一気に変わっていくはず。

 ただ、イライラしている女性のトリセツ的な語られ方は違いますよね。「俺はケーキ買って帰るよ」とかってことじゃなくて。

 生理のケアってイライラの対応だけじゃないですからね。結婚して子どもを作るなら、男性にだって他人事じゃない。

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 実はいま、性教育ソングを歌いたいなと思っているんですよ。

 お笑いジャーナリストの、たかまつななちゃんが単独ライブで披露した歌があるんです。それを観て、すごくいい歌だから「もっと広めたほうがいいよ!」と話したら、動き出してくれて。私も一緒に発表方法とかを考えているところなんですけど。

お笑いを通して社会問題を発信しているピン芸人・たかまつななさん。株式会社 笑下村塾を設立し、全国の学校で出張授業や時事 YouTuberなど幅広く活動。お笑いを通して社会問題を発信している。

 たとえば「アダルトビデオのまねしても、女の子嬉しくない。女優さんの演技だよ」とか、「生理のときでも子どもできるよ」みたいなことを歌っているんです。

 これにEDMのアレンジをかけようって話しています(笑)。動画も作ってYouTubeやTwitterに流したい。そういうキャッチーなところから性教育に入れたら、おもしろそうだなって。

 いろんなジャンルで楽しめそうなのもいいですね。ボサノヴァ風とか、カフェでかかっていて、よく聴くとすごい歌詞っていう(笑)

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 めちゃくちゃ柔らかい声で、ものすごいエッジの効いたこと歌ってる、みたいなね。R&Bもいけそう。

 サンバも! あ、沖縄民謡もいいなぁ。

 しみる〜! 広がるなぁ。たかまつななちゃんみたいに、こういうアンテナが高くて若い世代の子たちがどんどん出てきているんですよ。

 いま、“女芸人”と“一般女性”の垣根は、ほぼなくなっている気がしています。昔は女性だろうと“郷に入っては郷に従え”で、先輩と飲みに行けば無茶苦茶にイジられました。でもいまは一般社会と同じ。女芸人に変なことを言ったりしたりするのはNGが当たり前だし、普通に「ブスいじりしないで」って言える子も増えてます。

 男性側も、特に若い子たちは女性への接し方の感覚というか、徐々にコンプライアンス的な感覚が身についてきているので、お笑い界にも希望があるなって感じています。

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(聞き手・構成:中道薫 写真:松原貴子)

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