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弟の死から10年経った
10年前、弟が死んだ日、まさしく地獄だった。
僕が住んでいる世界がガラリと変わった日だ。
目の前には冷たくなって、息のしない弟がいた。
荼毘に付すまで一緒にいたけど、解剖で体が傷つけられて、血も出ていて、皮膚は縫われていた。
弟なのに、生きていない。当時も今も状況が全く理解できない。今もまだ飲み込めていない。
家族の猫は死臭を嫌がったのか、弟に近づくのを嫌がっていた。
弟は前日まで元気だったそうだし、本人も寝ている間に死んでしまうなんて、知らなかっただろう。弟の部屋には、仕事帰りにコンビニで買ったであろうおやつがビニール袋のまま残っていた。
起きている間に、弟と言葉を交わすことのなくなった10年。とても長かった。夢の中の弟は、僕のイメージではなく、天国にいる弟が会いにきてくれたのだと思うことにした。
あの優しい性格、声、僕の記憶の中にしか無い。
僕の命よりも彼の命の方が重いはずなのに、僕が生き残っている事は腑に落ちない。
神がいるなら、時間を巻き戻し、生き返らせる様にしたいし、なんなら弟を助けなかった神を殺したい。
弟が死んで、僕は40歳を僕の寿命と設定した。その設定の年齢になってしまった。後は余生なのかな。
この10年、とても長かった。
辛い。
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