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地方自治体DXは、本当にできる? (2)

先週からの対談は、地方自治体DXの今と未来について、武蔵大学社会学部メディア社会学科教授であり、総務省「地方自治体のデジタルトランスフォーメーション推進 に係る検討会」の座長である、庄司昌彦教授にお願いしている。

地方自治体の仕事は、国の法律で規定された手続きを代理で行なう「法定受託義務」と、自治体オリジナルの条例などに基づく手続きを行なう「自治事務」の2つに分けられる。この2つをDX化していくわけだ。

そのやり方や目指すところとして、令和3年にデジタル改革関連6法案が提唱され、成立した。それに従って地方自治体のDX化が進められる事になる。

とはいえ、自治体はそれぞれが独立した組織であり、法や条例に乗っ取ってもやり方や方法論が全然違う。これは都道府県ごとにも違いがあるし、同じ県内でも市町村によってやり方が違っている。それを標準化しようというわけだ。

だが標準的なやり方を押しつけて、馴染むのか、すんなり受け入れたもらえるのかといった問題もある。

(全5回予定)


小寺:令和3年にデジタル改革関連法案が6法成立をして、地方に対しては地方公共団体情報システムの標準化に関する法律――いわゆる標準化法が制定されたと。

庄司:今、それをいちばんやってます。

小寺:要するに、地方行政がいろいろ各地でばらばらにやっているのを、標準のシステムでやってみたらどうか、という話になったわけですね。

庄司:そうです。これが主要20業務というんですけど。住民票の話とか、地方税とか、生活保護とかですね。そういう、すごく基本的な20業務については、標準システムが持つべき機能というのを国が決めて、データの持ち方とかも国が決めて。

一応、その機能を持っていれば、富士通も日立もNECもどこでも、システムは作っていいと。機能は同じなので。

あとは画面の作りであるとか、ちょっとしたところの違いしかないと思うんですけど、そういうもので基本的には同じ業務をやるようにしましょう、ということですね。それを揃えていく作業を今、今年の夏に向けてやっているところです。

武蔵大学社会学部メディア社会学科 庄司昌彦教授

小寺:それは何か、裏ででっかいクラウドの一個のシステムにみんなぶら下がるんじゃなくて、ファイルの持ち方を標準化しようという話?

庄司:いや、持つべき《機能》を標準化するんです。例えば、ブラウザみたいなものはどれもだいたい同じ機能を持ってるじゃないですか。あんな感じですよね。

小寺:なるほど。で、地方行政の仕事って、法定受託事務があって。

庄司:それね、あんまり詳しくないんですよ、僕(苦笑)。

小寺:それから、地方独自の自治事務とのふたつがあって。法定受託事務は結局、国とか上のほうの代理なので、そこは標準化しやすいわけじゃないですか。元は1つのことを手足として動いているだけなので。

庄司:はい。

小寺:問題は、その自治事務のほうかな、と思うんですけれども。自治事務でいちばん国民と直接あたるのが、市民サービスのところだと思うんですよね。

庄司:はい。

小寺:そこはどうしても、対面とか、人と人とがやり合わないといけないところだと思うので、なかなかDX化だ、標準化だ、というところと馴染みが悪いところじゃないかと。そのあたりはどういうふうにコントロールしていくんですかね。

庄司:まさにその通りで。今、国が言っているのは、基本的には法定受託事務というか、国が自体にやってもらっている事務が中心です。でも、自治体DXってそれで終わりじゃないですよ、ということですね。まさに、自治体独自でいろんなことをやってますよね、と。

それも当然同じ思想で、もっと現代的なやり方はないか、とか、市民にわざわざ「窓口が開いてる時間に紙を持ってこい」というふうにしてませんか、とかですね。あるいは、オンラインで申請しても、職員の人が結局紙で打ち出して決済してるみたいな、そういう古いやり方をやってませんか、という目で、自治事務も含めて全体を見直さないと、それこそ2040年問題には対処できませんよ、というようなことは言ってます。

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