終焉を見届けに

曲を手伝ったグループからメンバーが脱退になった。

その発表がなされる当日の朝に連絡をもらった。残念だなという気持ちと同時に「もう曲が歌われなくなっちゃうな」という気持ちが湧いた。

手伝った曲は、メンバーが全員揃っていないと歌えない譜割りにした。また、そのメンバーたちのコトを歌詞に入れ込んでいるため、物理的に歌えなくなるのだ。当然そのコトは連絡をくれたリーダーも承知しているし、僕も承知している。そこに文句はない。

その最後のライブを見届けに行って来た。

ライブハウスも上限ギリギリまで開放する決断をしたため、中に入るとかなりの人数が居た。というかこんなに混んでいるライブハウスに来るコト自体が久しぶりだったな。なにせ急な発表、脱退だったので、ファンは当然感情が追いついてない。それでもほぼ満員になるほどにライブハウスが埋まったのだから、どれだけメンバーが愛されていたのかもよくわかる。

グループの出番になる10分前くらいにライブハウスに入り、後方の壁によりかかりながら出番を待った。しばらくして暗転。いつもなら煽り役のメンバーが声を上げて元気よく飛び出てくるのだが、今回はそんなコトはなく、静かにメンバーがステージに揃うと、そこからMCもなく連続して数曲に時間を費やした。ラストライブの湿っぽさもなく、明るい曲をただただ明るく歌い上げるメンバーたちを見る度に、複雑な気持ちになった。

5曲くらいが終わった頃だろうか。MCが入り、そこで初めて全員がしんみりした。明るく勢いのある曲が流れている時は、そんな感情すら押し殺してライブを見ているけれど、いざ「間」が出来てしまうとすぐに現実に引き戻されてしまう。

これは卒業ライブなのだ、と。

そしてさらに2曲が終わった後、最後に僕が提供した曲が歌われた。MCで「私たちのためだけに作られた曲です」と言ってくれたのが嬉しく、そしてそこで泣いてしまった。

涙の理由は自分でもよくわかっていない。曲が歌われなくなるコトなのか、メンバーが抜けるコトなのか、メンバーがMCで伝えてくれたコトなのか。色んな気持ちを抱えながら曲の流れている約4分を過ごした。

「私たちが次に進むためのキラーチューンを作ってほしい」

そういう依頼だった。光栄だったし、ありがたいと思った。同時にプレッシャーもあった。メンバーにも十分に確認を取りながら進めて、手前味噌になるが希望に添えるものが作れたと確信している。たぶんそれはファンの人たちにも伝わってくれていると、そう信じたい。

こうして僕の提供した曲は終焉を迎えた。

ライブが終わった後、混むのは目に見えていたから早々にライブハウスを出た。グループのファンの人(顔なじみ)がいたので、言付けと差し入れを渡してもらうお願いをした。

翌日にリーダーからお礼のLINEが来た。

考えがまとまっていないため、返事はまだ返せていない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?