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もう恐22展示『con brio』+『silver lining』

もう恐22にて発表しました作品について解説を致します。

空間:ノア(@noasaido)『con brio』

衣装:竹千代(@take_chi_yo)『silver lining』

竹千代さんの作品についてはこちら

テーマ:アール・ヌーヴォー

silver lining

ーかつてプリンセスの夢をみた少女は恋をし、砕け、花と散る。円環の理により、その存在は癒しを司る聖として生まれ変わるであろうー

以前制作した、「美樹さやかの夢」のさやかは花と散る直前の、走馬灯の中のさやかでした。

そのさやかが円環の理である、まどかによって生まれ変わったら…という想いを込めました。

円環の理の支えとして、友人として、カバン持ちとして(?)、恋を知った彼女にしか出来ない救いもあるのではないでしょうか。

ひかりふる中にいるけれど、ひかりを照らす存在でもある、さやかちゃんです。(竹千代)

「アルティメットしちゃってますね、あたし(*╹ヮ╹ff)」(さやか)


公式で描かれたアール・ヌーヴォー調のイラストが以前から気に入っており、それをテーマに一度空間を作りたいと思い、竹千代さんに声をかけました。

アール・ヌーヴォーは19世紀に生まれた様式名で、絵画ではミュシャが有名ですね。植物のしなるようなカーブがそのまま装飾として使われているのが特徴的です。公式のイラストでも四隅の縁飾りや魔法少女の髪先がツル状のフォルムが現れています。

初めにジオラマは覗きこむようにして見て頂きたいと思いました。トンネル状の空間にして、展示場所の会場風景から最奥に佇むさやかちゃんの姿を切り離したいと考えました。イベントで展示をするようになってから、撮影時に机や荷物が入り込むのを避けたいという思いがあり、その課題が今回で解決出来ました。

同時に作品と鑑賞者が一対一で向かい合うことが出来る装置ともなりました。そして内部空間は「こちらの世界」と「向こう側の世界」に分けることにしました。竹千代さんの作られたさやかちゃんが円環後の姿であることを踏まえ、鑑賞者の居る「日常的な空間」と円環の理に導かれた先の「非日常的な空間」を区分しました。

::: 内部空間 :::

純白の衣装に合わせて最奥の空間は白で統一し、ここを「非日常的な空間」と呼び、手前の植物が敷き詰められた場所を「日常的な空間」の側としました。周囲の壁や天井は真っ暗にして覗き穴の向こうにさやかちゃんがいるイメージを作っています。

天井にはレースを切り取って分解したものを配置しています。ここではゴシック様式で多用されるフォルムの「尖頭アーチ」を使いました。写真は天井を展開させた状態です。中心が頂点となって両脇がカーブを描きながら下がっていきます。 

さやかのテーマ『Decretum』がイギリス民謡の『グリーンスリーブス』のオマージュ説に賛同し、イギリスならゴシック建築でしょという理由で美樹さやかに似合うと勝手に解釈しています。

ゴシック聖堂にならって尖塔アーチは規則的なリズムを作って並べ、両脇に立つ背の高い造花もアーチを一つ飛びに植え込んでいます。そして床面には様々な種類の造花を植え込みました。


美樹さやかといえば悲劇のヒロインである人魚姫のイメージが強いのですが、それとは別の面を表現したいと思いました。私が表現したかったのは、癒やしの願いで契約したさやかの力を象徴するような、生命力に満ちた空間でした。

元気で闊達で、めげない性格…そういう面もさやかを象徴する要素であり、空間全体が彼女を祝福しているような雰囲気に仕上げました。「生き生きと演奏する」という意味の<con brio>という演奏標語が名前に相応しいと思いました。ちょっとした遊び心ですが青い花やラズベリーなど、さやかを思わせるような植物も植えました。

作っている時に気がついたのですが、細長い造花は、ヨーロッパの墓地への道に糸杉が立ち並ぶあの光景を想起させました。意図したわけではありませんが。

※ちなみにこの写真は実際に行ったイタリアはパドヴァの墓地です。

最奥の「非日常的な空間」は手前の造花とは異なり、白のプリザーブドフラワーだけを植え込みました。アール・ヌーヴォー調のカーブを描くように背後の壁を切り抜き、その手前に花がすくっと立ち上がって咲くようにしています。

展示の際には照明を当てていますが、最奥の空間だけは天井と壁から光が入るように透明にしています。手前から覗き込むと、さやかちゃんのいる場所だけが光に包まれているように見えます。

「日常的な空間」から「非日常的な空間」を見る構成は自然と奥行き感を作り出す結果となり、フィギュアを飾るための背景としては面白い装置になったと思います。

植物のモチーフを使うことを共通点とし、私の方では竹千代さんに作って頂いた衣装をどうやって引き立たせられるかを考えていました。

今回の展示ではまだ未完成の部分もあるため、いつか完成形を作りたいと思っています。実は覗き穴である入口に扉をつけて、鑑賞者が扉を開けてから見る、といった仕組みにしたいです。他にも何点か修正したいところがあります。

ただし今年は仕事関係が立て込んでおり、イベントに参加することが難しい状況です。そのため今年はサークル活動が出来ない状態となります。GWのもう恐やキュポイベントにも色んな方から声をかけて頂いたのですが申し訳ありません。今回の作品が完成した際にはまた写真をアップしたいと思っています。

【忘れな草造形スタジオ ノア】

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