思い出は給食と共に ①

一年生 野菜炒め


ぼくのにがてなピーマン。
にがくてへんなにおいがはなにくる。
おうちでは、ママがなるべく小さくしてくれて、それをたべさせてくれるからなんとかがんばってるけど…


今日の給食は野菜炒めと丸パン、チーズオムレツだ。

「はーい、給食当番さんは白衣来てマスクして付いてきてくださーい!他の子たちは、机を班の形にして待っててねー!」

6人の小さな子どもたちが白衣と帽子を被って、先生のもとに集まる。

「しもだせんせーい、マスクがビヨビヨでさがっちゃうー」

「はいはい、結んであげるからちょっと待ってね…はい、これで大丈夫でしょ?さ、みんな給食をとりに行きましょう!」

「「はーい」」


みんなで給食のカートを押しながらおしゃべり。

「今日の給食は何かな〜?」

「せんせー!きょうは、チーズオムレツだよ!わたしずっとたのしみにしてからおぼえてるー!」

「おーあかりちゃんすごい!じゃあ教室のみんなもお腹空かせて待ってるから急いで用意しよっか!…あ、コラ、走っちゃダメだよ!」


給食を配膳していると、何やら暗い顔をした男の子が。

「きょうのきゅうしょく、ピーマンはいってる…大きいしぼくたべられないかも…」

「ゆうきくんはピーマンが苦手なのかな?」

「うん。ぼくピーマンのにがいのにがてなの。いつも小さいのしかたべないの…」

「そっかそっか、そしたら給食当番のオマケって事で、自分の分をよそうときは、ピーマン1つにしていいよ!そのかわりそれはちゃんと食べようね!」

「うん。せんせいありがとう!ぼくがんばるね」

全員分よそい終わって席に着くと、日直の女の子が前に出てくる。


「きょうの、きゅうしょくは、やさいいためと、チーズオムレツと、まるぱんです。おいしいきゅうしょくに、かんしゃしてたべましょう。てをあわせてください、いただきます」

「「いただきます!!」」


「あー、ひろくんたべものであそんじゃいけないんだー!せんせーい!ひろくんがー!」

「はーい、みかちゃんありがとう。ひろくん、パンはおもちゃじゃないから丸めて遊ばないの。鼻にも詰めない!鼻に詰まったら死んじゃうから本当にダメよ!わかった?」

「…せんせいごめんなさい」

「あー!りっくんがわたしのおさらににんじんのせてくる!!」

「ぎゅーにゅーあげるー」

「こら!自分のものは自分でキチンと食べなさい!!りっくんはにんじんが苦手なの?そしたらあとひとつだけ頑張ってみようか!頑張れたら、残りは残しても大丈夫だよ」

「せんせーピーマンたべれた!」

「おおー!ゆうきくんすごい!」

「ピーマンにがくなかったよ!あしたからぼくピーマンにがてじゃないよ!」


きゅうしょくででたやさいいためのピーマン。
さいしょは、みるだけでにがいきがして、いやだったけど、だいすきなしもだせんせいに、がんばってっていわれたからがんばってみた。
やさいいためのあじつけがおいしいおかげで、ピーマンのあじが、ほとんどしなくてたべられた!
あしたから小さくないピーマンもちゃんとたべれるぞー!


二年生 ミネストローネ


みんなはクラスにすきな人っている??
ふふふ、わたしはね、あのね…

「みっちゃんは、すきな人いる?」
「えー、ぜったいにひみつだよ?あのね、せいやくんがすき…ひなちゃんは?」
「わたしはたくみくん!クラスでいちばんかっこいいもん!」
「せいやくんもかっこいいよ!でもたくみくんもかっこいいよね!」
「あのね、ここだけのひみつなんだけどね、学校のきゅうしょくのミネストローネに入ってるアルファベットのやつで、すきな人のなまえとじぶんのなまえが作れたら、りょう思いになれるんだって!」
「わたしもそのおまじない聞いたことあるよ!でもよそうときにえらんじゃだめなんだよね…」

4時間目がおわって、つぎはまちにまったきゅうしょくの時間!わたしもみっちゃんもきゅうしょく当番じゃないから、いっしょにアルファベットで名前を書いてみる。
「HINAとTAKUMI!できたー!」
「MITUKIとSEIYA…これであってるかな?」
「うん、だいじょうぶだよ!わたしのしたじき、ローマ字表だからかくにんしていいよ!」

きゅうしょくをとりにみっちゃんとならぶ。今日はミネストローネとあげパンの日だ。ミネストローネはりょうがきまってないからすこし多めによそってもらってもいいはず!
「はなちゃん、ミネストローネ多めがいいなー」
「わたしもー!」
「ふふ、2人ともあのおまじないをためしたいんでしょ。おーけー!アルファベットはえらんであげられないけど、いっぱいいれておくね!」
「わーい!ありがとうはなちゃん!」
「ありがとう!」

みんながせきについたところで、日直の子が前に出ていく。
「今日は、みんな大すき、ミネストローネとあげパンです。おいしいきゅうしょくにかんしゃして食べましょう。手を合わせてください、いただきます」
「「いただきます!!」」

ミネストローネの中に2人分の名前があったかどうかは、彼女たちだけの秘密…



三年生 カレーライス


オレとゆうきは1年生からのつきあいだ。
入学式の次の日、教室がわからなくてないていたゆうきに声をかけたことがきっかけでなかよくなった。
そんなゆうきから、今朝すごくおどろくことを聞かされた。

「転校する??」
「うん、おばあちゃんが病気みたいで、お母さんといっしょにおばあちゃんの家に住むことになったの」
「この前夏休みになったらいっしょにうら山のたんけんに行こうって話してたのに…」
「転校はどうにもできないからしょうがないよ…ごめんね」
「オレめっちゃ楽しみにしてたのに…ひどいよ」
あんまりにもびっくりして、思わずせきを立ってしまう。
「ごめん…」
なんとなく気まずくなって、ゆうきは自分のせきにもどってしまった。
あのなき虫ゆうきが?転校?新しいところでうまくやっていけるか?いつもオレが助けていたように、新しい学校でもだれかが代わりに助けてくれるのかな…それはなんだかすごくいやだし悲しい…

けっきょく、その日の午前中は一切ゆうきと話さないまますごした。午前中だけでこんなにさみしいのに、これから先ずっと会えないなんて…

「…たっくん、きゅうしょくの時間だよ!どうしたの?いつもは一番乗りできゅうしょく取りに行くのに…みんなもうならんでるから早く行くよ!!」
「おぅ。今行くよ…あかりんはゆうきの転校の話を聞いてどう思った?」
「わたし?まぁとつぜんだし、さみしいなぁとは思うけど、ゆうきくんなら他の学校でもうまくやってけるだろうし、一生会えないわけじゃないから…それだけかな?…そっかー、たっくんゆうきくんとなかよかったもんね。さみしいんだね」
「はぁ!べつにさみしくないし!オレらは、はなれていてもともだちだからな!」

きゅうしょくのはんは、ゆうきといっしょだ。
「ゆうき、さっきはごめん…引っこしはしょうがないことなのにひどいとか言っちゃって…引っこしてからも会える?」
「ううん、だいじょうぶだよ。たっくんがびっくりしてたことはわかってたから。もちろん、引っこしてからも会えるよ!お父さんが仕事の都合でこっちにのこってるから、夏休みのうら山たんけんはぜったいに行こうね!!」
「おう!楽しみだな!向こうの小学校でもがんばれよ!」
「うん!ありがとう!はなれてもたっくんはぼくの一番の親友だよ!」
この日食べたカレーはサイコーに美味しかった。

そして、さいごにみかんジャンケン!
「みかんジャンケンする人ーー!」
「「はーい!」」
10人ほど集まった中に、オレもゆうきもいる。
「転校するからってみかんはゆずらないからなー!」
「もちろん、のぞむところだよ!」
「「さいしょはグー、ジャンケンポン!」」
「勝ったーー!」
「くそ、負けた…」
「さんまなら勝てたのに…」
「やるな!ゆうき!」
「えへへ、ありがとう、たっくん。はい、一つぶだけあげる!」
「ケチかよ!でももらうー!ありがとう!」

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