第六章 開始④
飾りボトルだとマイクコールがないから、いまいち盛り上がらないよね……。
そこへ、安奈があたしの卓へとやってきて、しれっと隣に座ってきた。
「楽しい?梨紗」
あ、こっちも呼び捨て……。
当然、安奈も酔っているはずだ。
けれども、あたし達はだてにキャバ嬢をやっているわけではない。
お酒なら、潰れるまでとことん飲むから……。
「安奈は次何入れるの?タワーでもやっちゃう?何でもない日タワーとか笑」
「それもいいかもね。けど、一哉を煩わせるのは嫌だわ。あたし、まだブラックしか入れてない」
ブラックは、およそ三十万。
「何?あたしの勝ちでいいわけ?」
「この話し合いは、あくまでも途中経過を報告しているだけよ」
可愛くウインクをして、安奈は席を立った。
「客同士話すの禁止!」
空に、忠告をされてしまう。
空に連行されながらも、「次、あたしの番ね」
最後に安奈は、そう言った。
そして、一哉があたしの隣に座る。
「何、安奈と話してたの?」
「途中経過報告し合ってた」
「なんか、二人で企んでる?まさか、実は二人は味方同士だったり笑?」
「まさか笑」
「今日……終わったら、一緒に帰ろう」
「……え?」
「うち、来て」
「……うん」
一哉の横顔は、綺麗だ。
ちょっとくらい売れている俳優よりも断然にかっこいいと思う。
そこへ、思わぬお客様。
「梨紗!サイト見て来てみたら……大変な事になってんじゃんよ!」
愛梨だった。
「良かった、ストッパーが来たよ。愛梨ちゃん、梨紗を止めてあげて」
「梨紗、でも今んとこ勝ってるらしいじゃん?絶対に負けるなあ!」
「……」
愛梨は、当然あたしの味方なのだった。
そして、安奈の反撃が始まった。
「安奈さんのお席!なんとなんと!ドンペリプラチナ入りました!ありがとうございます!」
何?!
プラチナ。
一番高いシャンパンだ。
百万。
またまた、店内に拍手が沸き起こるのだった。
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