第七章 愛梨①
ホスト軍団。
もう、ホストなんて見たくもなかった。
昨夜のシャンパンの嵐を思い出して、吐きそうになる。
あたしは、真っ先に浜っちに宣言しておいた。
「浜っち、あたしは絶対に着かないからね」
「ダメ。梨紗、着いて」
「高宮さん来てるんだから、ダメだってば」
「最初は着けないから。後で着いてもらうから」
くそお、浜っちのヤツ。
何も知らないくせに……。
「よっちゃあん!」
あたしは、よっちゃんに助けを求めた。
「ホストの席には、着きたくないっ!」
「うーん、そうかもしれないけど、適当に話合わせておけばいいから!五人もいるんだから、トークは他の女の子に任せて、梨紗ちゃんは座っているだけでいいから頑張って!」
……よっちゃんのバカ。
とりあえず、高宮さんの卓に戻る。
「何だか、今日は混んでるねえ」
高宮さんは、呑気なものだ。
「そうだね……」
しばらくして、お呼ばれがかかった。
「梨紗さん、お願いします」
「高宮さん、ちょっと待っててね。新規に着いてこなくちゃならなくなった」
「おお、頑張って」
何が頑張って、だ。
そして……。
あたしは、渋々ながらもホスト軍団の卓へと向かうのだった。
「どうも、日向梨紗です」
「あ、日向梨紗!」
「本物だあ!」
口々にそう言われる。
黙ってくれ。
ホストは、一人を除いては大嫌いなのだから。
あら、愛梨が着いてるじゃないの。
じゃあ、トークは愛梨に任せよう。
「サムサラのホストなんだあ?」
「サムサラ?」
「すっごく有名な店だよね?やっぱ皆、かっこいい♪」
なんて、盛り上がっている。
愛梨以外の女の子達も、やけに楽しそうだ。
別に、あたしなんていなくてもええやんけ……。
「梨紗!サムサラの代表と、ナンバーワン、ツー、スリー、それに部長だって!サムサラの綺麗どころ全員と話せるなんて、幸せ♪」
なんて言って、異様にハイテンションな愛梨。
へえ。
代表さんか。
確か、サムサラは……。
代表は、社長兼代表だったはずだ。
そりゃあまあ、失礼な事はできないな。
改めて、きちんとご挨拶をするゲンキンなあたしなのだった。
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