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いわゆる「腹式呼吸」をするために必要なこと

発声時の身体の使い方として広く知られているのが「腹式呼吸」という言葉

しかし個人的に思うのは、言葉そのものが広く使われすぎて「何を目的に」行うかという事や実際に「どのように」行われているのかという事等は解釈にかなりの幅があるように感じます。

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というのも腹式呼吸を行っている時に身体の中で実際に起きている事を見る事は出来ず、発せられた声(結果)で判断するしかないため身体の使い方に対する解釈は無限にあると考えています。

その中で最大公約数的に受け入られている考え方が、教科書やボイストレーナーの方々が仰る内容になるのではないかと考えております。

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そこで今回、人の身体に関わる仕事をしている立場から、腹式呼吸を行う目的や効率的な行い方について機能解剖を基に述べていきたいと思います


腹式呼吸をする目的

なぜ腹式呼吸を行うのか?という事を考えた時に様々な事柄が挙げられますが、私個人として思うのは「喉周りの筋肉の余計な緊張を防ぐ」ことにあると考えています。

理由として声を出すためには声帯が動く必要があり、声帯は喉頭と呼ばれる喉仏の辺りに位置します。

喉周りの筋肉は喉頭の位置を調整し、声の高低や通りにも強く関係します。

↓喉頭に付着する筋肉は画像のようにたくさんあります

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声を出すための仕組みは、肺から送り出された空気が声帯を振動させる事で声という音に変換されます。この時に声帯周囲の筋肉が緊張し声帯が上手く振動できなくなると思うような発声が出来なくなり、無理な発声方法や怪我(ポリープや声帯結節など)に繋がります。

↓画像の黄色い線は空気が通る様子を表しています。青くなっている部分が声帯

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腹式呼吸はあくまで「呼吸」なので、声帯を動かすための筋肉が必要以上に使われる事は好ましくないように感じます。

そこで大事になってくるのは「呼吸のために主となって働く筋肉をしっかり働かせる事」です。

主となって働く筋肉のことを「主動作筋」と言い、主動作筋をサポートするために働く筋肉を「補助筋」と言います。

吸気においての主動作筋は「横隔膜」と呼ばれる肋骨を介して肺を動かすための大きな筋肉になります。

腹式だろうが胸式だろうが呼吸をする以上は横隔膜は働きます。


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↓吸気に働く筋肉は画像に描かれている筋肉であり、青く塗られているのが横隔膜

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↓呼気に働く筋肉は画像に描かれている筋肉。腹筋などが関わります

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横隔膜の機能を理解する

横隔膜の機能をいくつか挙げると

●吸気時に収縮し下位肋骨を引き上げる

●呼気時に体幹内の圧力が上方へ移動することを下方へ抑える

●喉頭周囲の筋肉と協同して呼吸時に空気を出し入れする

●腰椎まで付着し、最も強い組織は背部深層にある(おへその高さくらいの背骨に付着する)

ということが挙げられます。

ここまで色々と機能を挙げましたが、横隔膜自体は下に位置する内臓に邪魔されて大きく動く事は出来ません。

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肺の位置を理解する

「腹式呼吸」という言葉によって身体の意識をお腹の辺りに向ける事で、喉周りに位置する呼吸補助筋の緊張を抑制し「喉周りの筋肉の緊張を防ぐ」という事を可能にすると考えています。

お腹を膨らませて息を吸うというのはお腹を膨らませる動きと合わせてイメージしやすいですからね。

しかしながら、お腹に空気がたまるなんて事は絶対にありません。空気を取り込める内臓は肺だけです。

それにお腹は膨らませようが凹ませようが呼吸は変わらず出来ます。

加えて、肺の位置を見てみると画像のように

下はみぞおちの辺り、上は鎖骨の辺りまであります。

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鎖骨まで肺があるのに喉周りに力を入れないように〜なんて指導するのは人の身体の構造的には疑問があります。

ここまでを踏まえて、横隔膜の働きを妨げる事なく呼吸を行い喉周りの筋肉の緊張を抑制する事が腹式呼吸の目的であれば、この横隔膜や肺について理解する必要があります。

横隔膜が使われやすい状態になること

更に横隔膜が使われやすい状態になるためには、「息を吐くための筋肉を柔らかくする」ことが大事になります。

息を吸う筋肉がものすごく強くても、息を吐く筋肉が固ければ息を吸う筋肉の力を十分に発揮することは出来ません。

大雑把に言えば
息を吸う筋肉:胸郭を拡張させる
息を吐く筋肉:胸郭を縮小させる
ため、どちらかの動きを大きくしたい場合は反対の働きをする筋肉を柔らかくしなければいけません。

先ほどの呼気に働く筋肉の画像を見て一番分かりやすいのは、お腹の筋肉をマッサージしてほぐしてあげる事が息を吐くための筋肉を柔らかくする事につながります。

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以上から、

喉周りの筋肉の緊張を抑制することを目的として腹式呼吸をするのであれば、

●横隔膜の位置関係を理解する

●腹部の柔軟性を向上させる

ことが大事であると考えます。




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