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映画「コロンバス」(2017)

ひたすら建築写真を眺めているような、静謐かつ贅沢な作品だった。モダニズム建築にはあまり明るくないのだけど、どこまでも続いていきそうな水平線、なめらかな曲線、見ていて心地良いほどの直角などといったモチーフが繊細に織りなす“建築美”には、やはり思わずため息がもれる。

実際その場へ赴き、自分の目で確かめてもきっと感動するだろう。しかし映像だからこそ堪能できる美しさや佇まいが確かに感じられた。映像という表現ならではの観客のまなざしを制限する暴力性が、この作品ではむしろ効果的に働いているのではないか。

かつてそこに建てられたモダニズム建築の数々。その周りで人々の人生が動いてゆく様子を見てとれる作品でもある。

ある建築家が倒れた。その建築家と息子との間には複雑な関係性がある。そんな息子と出会うひとりの少女はコロンバスで育った。彼女は建築が好きだという。薬物依存症の母と暮らし、彼女の看病のためにこの町を出られずにいる。

月日は流れる。彼らの感情の「どうにもならなさ」みたいなものを他所に、建築はただただそこに佇んでいる。そして時に彼らの記憶を呼び起こしたり、心を癒したり、人と人とを出会わせたりする。

映画の宣伝コピーの一部に「モダニズム建築への恋文とも言うべき映像美」とあるが、まさにそのとおりだと思う。コロンバスに今も存在する、サーリネン親子をはじめとした巨匠たちが手掛けたそれらへの愛と尊敬に溢れた映画でした。ずっと見ていたかった。

ケイシー(コロンバスで育ち、建築家の息子ジンと出会う)がサバっサバしていてよかった。その友達の男の子もめちゃくちゃよかった。仕事中に「アンタもこんなつまんない町出なさいよ!あたしはロス行くわよ!」みたいな、煽りつつマウントとってくるめんどくせえ女友達からケイシーを守ろうと「仕事続けて」みたいに言う彼、めちゃくちゃいい。幸せになれよ。

初日だったためか、映画館出たらぴ◯の出口調査に声かけられたので感想を伝えていたのだけど、説明が拙くて上手く伝えられなかった無念さたるや。「静かだけど映像として見応えがすごくあって」「つまりストーリーよりも映像重視ってことですかね?」「いえそうじゃなくて」を繰り返し、最終的に「ハイそんな感じです」とサジを投げて帰ってしまいました。寒い中ご苦労様でした。

感想書くにあたり参考にした記事↓

https://casabrutus.com/architecture/133081

映画「コロンバス」公式サイト↓

https://columbus.net-broadway.com

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