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【5日目1万達成記念】100人100色の学費値上げ反対論

こんにちは! 学費値上げ反対緊急アクションです!
「学費値上げ反対!」「教育は権利だ!」

東京大学学費値上げ反対緊急アクションは、6月28日(金)、全国を巻き込みかねない学費値上げに歯止めをかけるため、オンライン署名(change.org)を開始しました。開始時点で35名もの教員のみなさまからの想いのこもった賛同文を賜りました!学費値上げの影響を受ける学生の声や、教員らの反対活動への賛同文は署名ページからご覧いただけます。自分の人生を必死に生きて、足掻いている全ての人にとって、大学進学という選択肢をより良いものにするため、東京大学の学費値上げに反対します! 

そして、本日7月2日(火)は開始から5日目。
なんと大台、1万署名を突破しました!(現在は2万5000超
昨日7月1日時点では3000名を突破した段階でしたので、ご賛同いただいた皆さまの応援によって爆増した形です。ありがとうございます!

賛同が1000名増えるごとに、36人目以降の教員の賛同文を公開する予定でしたが、記念すべき1万を突破したため、急遽、現時点で集まっている賛同文を全文、公開することにいたしました。また、SNS(X/Instagram/Facebook)でも今後、全文を掲載するとともに、Xではお名前とご所属を公開しています。

賛同していただいた
教職員の皆さまからのコメント

6月27日(木) 21時-7月9日(火)8時時点
賛同順

東京大学の学費値上げは他の大学にも波及する可能性があります。東京大学は拙速な値上げをする前に、そもそも学費の家計負担が高すぎる現状を見直すよう、改めて政府に要求するべきではないでしょうか。また、政府はこの現状を踏まえ、抜本的な政策の転換を検討するべきではないでしょうか。
科学技術・イノベーション政策という視点からも、高すぎる学費負担は日本の将来にとって有害です。今日のイノベーションには理系だけでなく文系も必要されており、大学院以上の高度な専門的知識が欠かせません。しかし、高すぎる学費は既に日本人学生の大学院進学を阻み、先進国で見劣りのする学位取得率を示しています。更に学部の学費まで上がれば、大学進学自体をを控える人は増えるでしょう。(なお、授業料免除を拡充しても常に落選の怖れがあります。充分な説得材料にならないでしょう)。
何より、日本は国際人権A規約(13条2項b、c) を批准し、高等教育の漸次無償化の義務を負っています。政府は時代に逆行する施策を続けるべきではないと考えます。また、日本で一番長い歴史を持つ大学として、東京大学は改めて政府に無償化のための努力を訴え続けていくべきであると私は考えます。

隠岐さや香(東京大学教育学研究科・教授)

東大が学費値上げを検討せざるを得なくなっている理由は、何よりも、2004年の法人化以降、国立大学への運営費交付金が減額されてきたことによります。それを学費値上げによって補おうとすることは、たださえ私費への依存度がきわめて高い日本の大学の費用負担構造を、さらに悪化させることにつながります。東京大学が学費値上げに踏み切れば、それは他の国立大学に波及するおそれがあるため、ここで値上げを食い止め、大学を含む教育全体への公的支出を拡充する方向へと政府に舵を切らせることが必要です。

本田由紀(東京大学大学院教育学研究科・教授)

千葉大学ではグローバル人材育成推進の財源として2020年度から学費が値上げされましたが、学生への教育の質が真に向上したとは到底思えません。
安易に学費を上げるのではなく、教育への公的投資を根本的に増やすことが必要です。

松井宏樹(千葉大学大学院理学研究院・教授)

東大にも、そしてわたしが直接知っている学生のなかにも、実際に苦学生はいます。たまたま授業料免除が得られているあいだは学業を続けられるにしても、あるとき免除が不許可になったらどうすればよいのか。学業を継続できるか否かが、授業料免除の許可・不許可という確率的現象に依存していることの心労は、若い学生にとってどれほど大きいか。このようなことに対する想像力をすこしでも働かせるなら、求める政策はおのずから帰結するはずです。いまいる学生たちは、自分たちのためにではなく、将来の学生たちのために悲痛な声をあげています。わたしも賛同しないではいられません。

渡邊淳也(東京大学総合文化研究科・教授)

大学の財政状況の悪化を授業料の一律値上げで補填するというアイディアはあまりにも短絡的かつ稚拙で、未来の世代に対する見通しを欠いた、恥辱に満ちた選択でしかありません。すでにそうなりつつありますが、優秀な若者は、東京大学を見切って、受験すらしなくなると思います。わたしは2007年文科三類入学で、三鷹国際学生宿舎に入寮し、仕送りなしで、日本学生支援機構の第二種奨学金を借りて生活していました。親は学費だけなら出してくれるということで、授業料が安い国立大学しか受験が認められませんでした。さまざまな環境にある若い人の可能性を奪わないでほしいです。

髙山花子(東京大学大学院・総合文化研究科・特任講師)
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高等教育は一個人の経済的利益のためではなく、社会全体の利益に資するものであるべきです。教育費の私費への依存度を高める学費値上げは、高等教育における受益者負担の論理を強めることにつながり、賛同できません。東京大学は、学費値上げではなく、減り続けている運営費交付金の減額停止・増額を国に対して求めるべきです。

江原慶(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院・准教授)

東京大学は、女子学生の割合を3割にするという(全国水準から見ても控えめな)目標をかかげながら、2割のラインを維持するのがやっとの状況です。入学者が首都圏居住者に偏り、地方出身者の割合が低いことも大きな問題だと言われ続けています。さまざまな要因があるとはいえ、東大受験を思いとどまらせる理由の一つが、学費をはじめとする経済的負担の重さであることは間違いありません。そのことは大学当局も認識している。奨学金や家賃補助で緩和できるというかもしれませんが、そうした補助が確実に受けられる保証はない。学費の高さこそが、そもそもの問題の源なのです。この状況で学費値上げに踏み切るのであれば、東京大学は自分たちの抱える根本的な問題を解決する意志がないのだというメッセージを世界に向けて送ることになるでしょう。

斉藤渉(東京大学総合文化研究科・教授)

万人に開かれた公教育というこの社会のかけがえのない財産を守る運動に賛同します。東京大学には抗議の声を上げた学生と対決する道ではなく、学生と共に公教育への投資を求めて戦う道を選ぶことを強く求めます。

井関竜也(東京大学社会科学研究所・助教)

本アクションに賛同します。(1)大学大綱化による教養部廃止とその後の法人化に伴い、国立大学は運営交付金削減という「真綿で締める」政策によって、財務の悪化が著しい状況です。こうした政策失敗を学生負担に転嫁すべきではなく、抜本的な方針転換を政府に求める必要があります。これ以上政財界の思惑によって自由な知的生産を圧迫し、高等教育を「金持ち」だけの機関にさせてはなりません。(2)日本政府は、高等教育の漸進的無償化を行う国際人権規約b13条2項を批准していながら、現在に至るまで無視しつづけています。こうしたダブルスタンダードを容認することは、法治国家・日本国における、学問の府の自殺を意味します。(3)この度の値上げ「検討」には手続き的問題が多く、オンラインを強制された一方的な「対話」や録音・録画の禁止、抗議行動に対する警察力の導入とその後の「でっちあげ」を疑わせる大学側の不可解な説明および情報公開拒否など、現執行部の動きには、対話の拒絶と反対言論封殺にむけた執拗かつ非論理的な陰検さが感じられます。藤井総長以下執行部が、東京大学としてDiversity&Inclusionを掲げながら、多くの声を無視して「政治的強行」を行った愚鈍な総長として歴史に記録されることを大いに危惧します。何より、こうした中で本学学生が自分達の社会的状況を正面から受け止め、行動を起こしていることに、大きな希望を感じます。

石川洋行(教育学研究科卒、明治学院大学社会学部・非常勤講師)

国立大学の財政基盤の強化のためには、学費値上げよりも政府による財政措置が必要と考えます。国の財政状況は識者により評価が分かれますが、教育分野への政府支出乗数が7以上という報告もあり(Reeves et al.2013)、国の財政や経済の状況を改善するためにも、教育分野への政府支出を増やし家計負担を減らすべきと言えるかもしれません。

室生暁(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・講師)
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親ガチャで教育のチャンスが失われるようなことがあってはなりません。教育は尊厳ある個人を成長させ、公正な社会を実現するその根本にあるものです。いま小中学校給食費無償化、高校学費無償化の動きが大きく広がりつつあります。なのに大学学費を値上げするのですか。東京大学がその先鞭をつけようとするのですか。考え直してください。

小原隆治(早稲田大学政治経済学術院・教授)

東京大学の財務状況が芳しくないのは事実だとしても、それが在学生や将来の入学者の責任でないことは明白です。責任のない者に負担を押し付けるのは道理に反します。責任は、国際人権規約(社会権規約)第13条に定める「高等教育の漸次的無償化」を履行しないばかりか、国立大学の運営費交付金を削減し続けてきた政府にあります。

小野塚知二(東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム室特任教授/名誉教授)

学費値上げは、高等教育を享受できるか否かの、経済資本に基づく分断を強化します。このことは、単に教育を享受できるか否かの差異を生み出すだけにとどまらず、学歴差別など、社会的な分断をも強化することが目に見えています。日本国内における最高学府の東京大学が、学費値上げに踏み切るということは、その他の国公立大学の学費値上げに、きっと波及するはずです。相対的に、経済的に貧しい人であっても、高等教育を受けることができることは、国公立大学が、その下支えを伝統的にしてきました。その支えが失われれば、前述の格差が、東京大学のみならず、全国的に展開されることを意味します。経済的な貧富があれども、できるだけ公正・公平な社会であってほしい。そのため、東京大学の学費値上げに、強く反対します。

土屋誠一(沖縄県立芸術大学美術工芸学部・准教授)

今日の大学には国公立大学と私立大学の格差、大都市の大学と地方都市の大学の格差、大学に行くことのできる人とそうではない人の格差などさまざまな問題があります。日本政府は高等教育の漸進的無償化を定めた国際人権規約を批准しているのですから、これらの格差は、誰もがもしも望めば大学に通って学べる権利を保障できる方向で修正しなくてはなりません。すなわち、運営費交付金の現状を前提として大都市の国立大学の授業料を上げる方向ではなく、私立大学や地方都市の大学へのへの助成金を増やす方向で解決しなくてはなりません。さらに、そもそも今日の国立大学の窮乏が運営費交付金のカットと、いわゆる「アベノミクス」による人為的な円安・物価高によりもたらされている以上、すでに実質賃金の目減りに苦しんでいる学生・保護者たちに円安・物価高のツケを転嫁するのは不当であり、政府与党は円安で潤っている大企業の内部留保などを原資として予算を調達し、公費の適切な再配分を行うべきです。大企業を支持基盤としているのでそれはできないというならば、政府与党の顔ぶれをすげ替えるほかありません。

駒込武(京都大学教育学研究科・教授)

日本は、2012年、社会権規約13条2(c)の「特に、無償教育の漸進的な導入により」に拘束されない権利の留保を撤回しました。「高等教育」を受ける「機会」を、「すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により」「能力に応じ、すべての者に対して均等に」提供しなくてはなりません。授業料の値上げは、不十分な就学支援制度の中で、高等教育を受ける機会の不平等を増大させます。

影浦峡(東京大学大学院教育学研究科・教授)
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今回の大学側の措置は、高等教育を受ける者がより高い収入を得る可能性が高いため、その教育費用を自ら負担すべきだとする「受益者負担主義」の論理を受け入れたことを意味します。しかし、この考え方には以下のような重大な問題があります。受益者負担主義は教育の機会均等という基本理念と根本的に対立します。すべての人に平等に教育を受ける機会を保障するという原則は、個人の経済的背景に関わらず維持されるべきです。また、この方針は社会の流動性を低下させ、格差を固定化する危険性があります。経済的理由で高等教育へのアクセスが制限されれば、世代を超えた貧困の連鎖が強化され、社会階層の固定化につながります。さらに、受益者負担主義は教育を単なる個人的投資とみなす傾向を助長します。その結果、学生は短期的な経済的リターンを重視せざるを得なくなり、即座に高収入が見込める分野に集中する可能性があります。このような傾向は、人文科学や基礎研究など、直接的な経済的リターンは低いものの社会にとって極めて重要な学問分野の衰退を招く恐れがあります。学費減免制度や奨学金の拡充により機会均等は確保できると大学側は主張していますが、実際には制約が多く、また特に貸与型奨学金は、学生に多額の債務を負わせることになり、卒業後の人生設計に大きな制約を課します。これは実質的な機会均等とは言えず、むしろ経済的背景による格差を将来にわたって固定化する危険性があります。教育は個人の利益だけでなく、社会全体に大きな便益をもたらす公共財です。高度な教育を受けた人材が増えることで、社会全体の生産性が向上し、イノベーションが促進されます。したがって、教育への投資は運営交付金の拡充など、国立大学の設置者である国が主に負担するという設置者負担主義原則に立ち戻って社会全体で負担すべきです。大学は安易に学生に負担を転嫁するのではなく、これらの問題点を政府や世論に向けて本気になって強く訴えかける責任があります。

逸見龍生(新潟大学人文社会科学系・教授)

私は現時点での値上げには賛成できません。対話のプロセスが形骸化していることが、その理由の一つです。今回の値上げをめぐる議論において、本学は総長のリーダーシップのもとで「対話」の重要性を強調してきました。しかし実際には、学生との対面での意見交換を避け、学生たちがともに対話の場を分かち合うことを、本学は禁じたとされています。私が尊敬する納富信留先生が『対話の技法』(2020)で指摘したように「誰が聞いていて、誰が誰に向かって語っているかが見えていない状況では、対話は成立しません」(p. 132)。そして「対話は何か特定の目的を達成するための手段ではありせん」(p. 69)。大学はこの原則をふまえた上で「総長対話」を実施できているのでしょうか。私には、そう見えません。「対話は必ずしもうまくいくものではなく、それにもかかわらず対話にチャレンジするには大きな勇気が必要だ」、納富はそのようにも指摘します(p. 68)。言葉を通じた真摯な検討のプロセスを大学が体現せずして、社会に、政治に、同じことを期待できるでしょうか。学内外に十分な情報公開が行われ、納富が掲げた実質的対話が東京大学という場において実現することを、まずは期待したいです。

山本浩司(東京大学大学院経済学研究科・准教授)

学費が上がるということは、学資ローンに頼る学生が増えるということであり、それは借金を返すことを第一目標とする人生設計をするということである。大学を就職学校にするのではなく、学びを通して社会を見る目を養い、自分もより良い社会を作っていく一員であることに気づくことが今の閉塞感ある日本社会にそこ必要ではないか。

水口良樹(大学非常勤講師、ラテンアメリカ探訪世話人、井戸端人類学F2キッチン世話人)

大学の教育研究環境の維持のために必要な財源が不足しているとすれば、求められるのはまず、法人化以降およそ100億円が削減されてしまった運営費交付金の増額のはずです。政府は、高校・大学までの段階的な無償化を定めた国際人権A規約(13条2項b、c)に則り、家庭の経済状況によって教育の機会が左右されない社会の実現を今こそ後押しするべきです。今回の問題は、一大学に留まるものではなく、OECD加盟国の中でも高等教育機関に対する公的支出の対GDP比率が最低水準に留まる日本という国家のあり方を問うものです。東京大学本部による授業料値上げ案の提示は、とりわけ大学という場所において尊重されるべきはずの民主的手続きを尊重していないという点でも大きな問題があります。東京大学構成員のあいだの開かれた「対話」によって、広く世論の喚起につなげていくのが望ましいと考えます。

渡辺優(東京大学大学院人文社会系研究科・准教授)

私も苦しい生活状況のなかで勉強する院生を多く抱えています。仮に学費が一〇万円上がっていたら、彼女ら・彼らのうちの何人がここにいるだろうかといつも考えざるを得ません。大学・大学院への進学者の減少は、この社会を支えるはずの学問のインフラを確実に毀損します。個人的に発言したことの繰り返しになりますが、毎年億単位の赤字を出すほどに経営が苦しいのなら、その窮状を訴え、国が教育にお金をかけるように全員が声を合わせて働きかけるのが本筋だろうと思います。その努力を諦めて、言うことを聞かせやすい学生・院生のほうに圧力をかけるのはどう考えても恥ずかしい振る舞いだとしか思えません。学生たちが起こしてくれた今回のアクションへの反応を見て、世論は国の教育への投資の拡充に対して決して批判的ではない、という希望を持つことができました。学生や世論とともに声を合わせて進んでいくことは不可能ではないと思っています。

村上克尚(東京大学大学院総合文化研究科・准教授)
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学生は大学にとっての最重要構成員です。東京大学の憲法ともいえる「東大憲章」には、大学の構成員の責務の項に、教職員と学生は「その役割と活動領域に応じて、運営への参画の機会を有する」と書かれ、運営の基本目標の項には、「公正で透明な意思決定に財政計画のもとで」体制整備を図る、との理念が掲げられています。授業料は学生にとって極めて重要な事項です。公正で透明な意思決定過程の説明なしの値上げは許されません。

加藤陽子(東京大学大学院人文社会系研究科・教授)

貧富にかかわらず広く教育の機会を保障するために高等教育は無償になっていくべきところであるのに、東京大学に限ったことではありませんが、国立大学の運営費交付金が削減されているのは、正しいことであるとは思えません。それを学費値上げで学生の負担によって対応しようとすることに反対です。

中倉智徳(千葉商科大学人間社会学部・准教授)

「受益者負担」という言葉で学生(およびその親)が学費を負担するのが当然であるかのような論理があります。しかし社会のための人材養成という面がある以上、受益者は社会であり国家でもあります。だから、学費は無料でなくても、もっと安くあるべきです。それは国立も私立も同じです。普段はすぐに世の中に範を示すことに熱心な東大が、この件に関しては、「それぞれの大学の判断」と言うのは詭弁です。東大が学費を上げれば、他の大学からも上げる可能性はとても高いでしょう。それくらいの責任感は持ってほしい。あと、反対の意思表明をする教員や大人があまりにも少ない気がします。まるで政府の代弁者のように、「国家も大学も財政的に苦しい」「法人化以降政府の方針で運営費が減らされているのだから仕方ない」というあたかも見識があるかのような態度で反対しないのも詭弁です。自分たちはもっと安い学費の時に大学に通って得をしたのに、今の若者たちの利益は平気で毀損する。未来は若者のものであり、私たち大人は彼らを応援する義務がある。学費の値上げに反対すること、そしてさらに(無料化でなくても)値下げのために声を上げることは、誰にでもできることです。反対しなければ、政府も大学も、大半の人はそれでいいと思っているんだと、無視するだけです。政府の方針は変えればいい、財政は優先順位の問題です。だから変えようという意思表示が大事です。これは東大だけの問題ではなく、大学教員だけの問題でもなく、すべての大人の問題です(学費を払うのは親の世代です)。

梶谷真司(東京大学大学院総合文化研究科・教授)

東京大学の学費値上げに反対する抗議活動の趣旨に全面的に賛同します。この抗議活動は東京大学に限定されるものでも、学費値上げのみに反対するものでもなく、国立大学はもとより私立大学にまで及ぶ高等教育全体の学費軽減や無償化、および、過去数十年に亘って不当にカットされてきた運営費交付金の増額を求める、幅広い世論喚起の端緒となるに違いありません。この運動が学生主体で立ち上がってきた意義は大きく、先日の総長対話が示したような、「受益者」としての学生のみに呼びかける東京大学本部・総長の姿勢は──それは「受益者負担」というサービス業的大学「経営」の誤った論理に依拠するものです──、深い反省を要求されることでしょう。このように「受益者」と「経営者」を分断するのではない、大学における真に民主主義的な意思決定もまた、この抗議活動は要請していると思います。この運動がやがて、東京大学の学生・教職員・総長ほか役員が一体となり、国に対する運営費交付金の増額などによる基盤的経費の回復要求を行なう、社会に広く支持された活動を生むことを強く願っています。

田中純(東京大学・名誉教授)

私自身、地方から出てきた女子学生で、授業料免除と奨学金で博士課程まで何とか修了することができました。奨学金を返還し終えたのはつい最近です。現在も、家計状況にかかわらず、家族に頼ることができずに自活せざるをえない学生を複数知っています。学費値上げによって多くの若者の人生や進路選択が変わってしまうかもしれません。他の方々も書いているように、高等教育は無償になっていくべきですし、それがまだ難しいのであれば、私たち教員も、学費値上げ以外の方法での大学の財政の健全化についてきちんと考えていくべきだと思います。

大塚類(東京大学大学院教育学研究科・准教授)
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東京大学を含むすべての大学の学費の値上げに反対します。高等教育の無償化を進めるべきであるところ、逆にその負担を増やすような対応は看過できません。
東京大学は「持続可能な開発目標(SDGs)」を「最大限に活用します」と謳っています。そのSDGsには、「2030年までに、すべての女性及び男性が、手頃な価格で質の高い技術教育、職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする(外務省仮訳)」とのターゲットが掲げられています。すべての人が大学教育に平等にアクセスできるようにするためには、学費負担を引き上げるのではなく、低減させるべきであることには疑いの余地はありません。SDGsの都合のよいところだけを切り取って自らの既存の取組みのアピールに「活用」するチェリーピッキングは、だれも取り残されない社会をめざすSDGsの理念からは、最も戒められるべきものです。

伊与田昌慶(東洋学園大学・非常勤講師、環境政策論)

東京大学の学費値上げ案に対する抗議活動の趣旨に全面的に賛同します。また、東京大学のみならず、日本のすべて国立大学の学費値上げに反対します。すでに他の方々も指摘されているとおり、国立大学法人化以来、運営費交付金の削減が続けられてきました。交付金削減のスピードが緩和しても運営費交付金を競争的に使えという文科省側の指示によって教育・研究の基盤に使える経費が減り続けています。国大協会長が「もう限界です」と声明を発したのは異常な事態です。国際卓越研究大学・特定国立大学に限らず多くの大学で学長・総長ですら大学の構成員の意思で選出できなくなっており、大学の自治も瀕死の状態です。このような状態では、自分の頭で考え、自分たちの生きる道を自分で選び、変化の激しい世界にあってたくましく生きる知恵と勇気の担い手となる若者を、広く多様な人材層から集め育成することはできません。次世代育成の失敗は国を衰退させることになります。まず、大学教育の受益者を学生と保護者のみとする価値観を改めていただきたい。大学で教育を受けた人が社会をよくしていくのだから、未来の国民も含め、国民全員が大学の受益者であると認識してもらわなければならない。大学人がそう言えば世間の認識が変わるというものではないことはわかっています。大学人も価値あるものを世界に提供できるよう努力しています。国立大学というのはそういう協働の営みであると理解していただくことを願い、授業料値上げ案の撤回と、すべての国立大学の運営費交付金の復旧を求めます。

谷村省吾(名古屋大学大学院情報学研究科・教授)

国民の教育による最大の受益者は教育を受ける個々人ではなく国家であり、今回の学費の値上げは学生個人のみならず国家の成長をも著しく阻害するものです。私は断固として反対し、東京大学には学生達の側に立った大学の制度改善のため共に戦うことを強く望みます。

高見大地 (大阪大学工学研究科・特任助教)

この抗議活動の趣旨に賛同します。今回の学費値上げが多くの学生・受験生の進路選択に多大な影響を及ぼすこと、それが将来的に社会全体の利益の損失につながりうることは論を俟ちません。学費免除や減免措置が拡充されても、その申請にかかる労力、免除・減免認定が個別的で不透明にならざるをえないこと、さらに学生本人と世帯収入者との関係が良好でない場合が少なくないことを考えると、解決にはなりません。大学の財政は運営費交付金の拡充など他の手段によって健全化するとともに、学生の経済的負担の軽減を目指すというこの活動の趣旨は、長期的に見れば、本学のみならず日本の社会全体に益をもたらすものだと思います。

小西いずみ(東京大学大学院人文社会系研究科・准教授)

学費値上げに反対します。東京大学は、「東京大学 ダイバーシティ&インクルージョン宣言」
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400190664.pdf
にある「多様な構成員によるたゆまぬ対話の実践」を今こそ行い、「多様な構成員が、意思決定プロセスを含む東京大学のあらゆる活動において、様々な属性や背景を理由に不当に排除されることなく参画の機会を有すること」を今こそ「保障」すべきだと思います。 

三枝暁子(東京大学大学院人文社会系研究科・教授)
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今回の学費値上げに関する一連の大学執行部主導のプロセスには、唐突で拙速な印象が否めません。すべての当事者が対等な立場で参加できる透明で開かれた対話と検討のプロセスを作り直すことから再スタートすべきだと考えます。

平松英人(東京大学大学院総合文化研究科・講師)

東京大学学費値上げに対する抗議活動に賛同します。東京大学のみならず日本のあらゆる大学と教育機関に関わる問題です。交付金削減によって生じた負担を若者世代に押し付けることはあってならず、大学には、学生と真摯に対話し、少子化に直面するこの国がとるべき教育制度拡充に向けた議論を盛り上げる役割を担ってほしいと考えます。

左地亮子(東洋大学社会学部・准教授)

1. 拙劣な手法による学費値上げに反対いたします。
これまでの当局の対応を見るに適切かつ有効なガバナンス、経営が行われているとは到底推認し難いので、一度広い構成員に決定権、情報を委ねて、経費節減及び資金源それぞれの選択肢をゼロベースで検討することを勧めます。
2. 学ぶに値する、働くに値する大学へ
現在の当局の対応はマネジメントの失敗に起因するリアクション含め本学のレピュテーションの低下にも大きく影響しております。学生や教員に選ばれる大学であり続けるためにも、速やかに第三者的視点からも適切な対応を望みます。
3. 本学の固有の価値を見据えた上での決定を
特に米国の事例を過度に参照した値上げの正当化は筋が通っていません。最終的に「世界水準」の授業料を設定することで最優秀層を海外大に逃し、不備が指摘されており、更に事前に確証を得ることができない授業料軽減措置により、本学だからこそ発見できた困難な状況にある才能を取り零す恐れがある制度改悪に反対いたします。本学及び国家の競争力の根幹に関わる事項である以上、エビデンスベースで理にかなった再検討をお願いします。

木場智之(東京大学法学政治学研究科・講師)

本アクションに賛同すると同時に、東京大学を含むすべての大学の学費の値上げに反対します。日本政府は、社会権規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)第13条2項b・cに則り、「無償教育の漸進的な導入」により高等教育を「すべての者に対して」開いていく責務を負います。階層、性別、性自認、性的指向、障害の有無、国籍、人種・エスニシティ等にかかわらず、高等教育へのアクセスの機会を保証することは大学が取り組むべき課題であり、このことは東京大学が2022年に定めた「ダイバーシティ&インクルージョン宣言」にも通底するものです。学費の値上げではなく、政府に対して教育への公的支出を拡充させるべく大学として働きかけることことが望ましいと考えます。

福永玄弥(東京大学教養学部教養教育高度化機構D&I部門・准教授)

学費値上げに関する抗議運動、当事者の一員である学生から声を上げることに大きな意義があると考えます。日本の教育のあり方は日本社会のあり方に大きな影響を与えています。社会が、国民が、日本の政策の何をどう変えていきたいのか。それによって、どのような国を、社会をつくっていきたいのか。主体的に声を上げるべきであり、沈黙していてはならないと考えます。政策のプロセスにしっかりと関わっていきましょう。私も大学で働く人間として、国民の一人として、関わっていきたいと思っています。

阿古智子(東京大学大学院総合文化研究科・教授)
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今回の学費値上げに反対する抗議活動に賛同します。この運動が、まだ出会ったことのない多くの仲間たちのために立ち上がったものであることに思いを致すべきです。大学が開かれた場所であってほしい、経済的な理由によって断念する人がないようにしたいという願いは、立場を問わず共有するものではないでしょうか。2021年9月に東京大学が公表した基本方針のタイトルには「対話が創造する未来」とあります。未来を創造するのは現在にほかならず、まさにいまがその対話のチャンスであろうと思います。東京大学が、日本の大学のあり方についての議論を先導するものであってほしいと願っています。

宮田晃碩(東京大学UTCP・特任研究員)

この度の東京大学の学費値上げに対し、国内の大学で歴史学を学び、究め、教えることに同時に携わる身として、以下のように強く反対します。

⒈ 日本近代の理念的基礎の荒廃に反対する
近代の存立根拠は、誰もが一人前に世界を学び、真理の前で平等に議論しながら、自分たちの社会を自分たちの手で作り上げていくという理念にあります。より多くの人が、より高度な知に触れ、生まれや境遇にかかわらず、自由に学問に関わることを可能にする制度的前提は、公教育にあります。知を循環させる主兵としての高等教育機関の役割からすれば、東大の学費値上げは、帝国大学の発足以来、内外で多くの世代が、様々な成功と失敗、人々の喜怒哀楽の上に育ててきた、日本近代のかけがえない遺産を大きく傷つけることとなります。
⒉ 学生の「時の貧困化」に反対する
大学生・大学院生の貧困化は、この10年間で急速に深刻化しましたが、その本質は「時の貧困化」にほかなりません。大学生が「生徒」ではなく「学生」たりえたのは、「金はなくても暇はあってよい」という共通了解が残っていたからです。それは理念的には人々の「学問への敬意」に、実体的には「労働の一定の免除」に支えられてきました。しかし、全国的な物価・家賃の高騰は後者をむしばみ、今回の学費値上げはそれに追い打ちをかけ、やがては前者の次元も突き崩していくでしょう。そうなれば、本来は学生の守り手であるはずの大学はいまや、彼らの限られた「大いなる暇」を、その他の市場原理の参加者とともに「アルバイト」や「インターン」の名の下、収奪する存在に成り下がるでしょう。
⒊ 短期的かつ一方的な「経営」に反対する
大学側もまた経済不況や少子化によって金銭・時間・労働力の各面で貧しくなりました。多くの現場では、教職員の給与・待遇は悪化し、人手が足りず、施設維持やサービス運営も限界を迎えています。値上げによって財政的問題を短期的に解決しようという論理が出てくる情況は確かに否定できません。しかし、大学の学費を抑えてきたのは、一人前に世界を学び、社会を担う技を身につけるのに不可欠な時間を学生に投資するという長期的な「戦略」に基づいていたはずです。なぜ、このタイミングで、東大がそれを撤回し、荒療治的な「戦術」を打つだけの必要性があるのか、そしてそれが学生と様々な形で高等教育に関わる国民にとって許容される理由があるのか。この点について、東大の経営陣からは合理的な説明が行われたようにも、学生・国民との間に十分な議論の場が設けられたようにも、私には思われません。客観的な事実の把握と、冷静かつ多面的な解釈、批判的かつ双方向的な分析・検討を、様々な専門家がそれぞれの尺度から行うというのは、近代的学知の前提であります。
私は、日本語圏で生長してきた近代的精神をしっかりと肯定し、国内の至るところ、世界全体に向けて発展させることを切に望みます。今回の値上げ策は、そうした歴史的視点から大きな不安をもたらすものです。
一方、それに関わる者にとっては思考の機会でもあります。なぜ、近代社会はこの1〜2世紀あまり、「学問」だけで飯を食ったり暇を潰したりできる場を一部の人々に与えることを許してきたのか。今や「学問」や「研究」がそれだけで称揚されることに胡座をかく態度はあってはなりません。所謂「文化」なるものは、「経済」の次元と実体的な関係にあることを、大学運営に関わる者一人ひとりが、自分ごととして反省的に受け止めること。
迂遠なように見えますが、この基礎的な問いから出発することで、真の意味での学問の長期的な「経済」(経世済民)をみんなで思考し、実践していくことが不可欠なのではないでしょうか。

吉川弘晃(明星大学国際教育センター・特任講師/
総合研究大学院大学文化科学研究科・博士課程)

東京大学の学費値上げに反対します。学費値上げに反対する学生主導の思慮深い抗議活動に賛同し、また尊敬します。東大に限らずすべての大学の学費の値上げは、これからの世代の学ぶための機会、進路の選択を狭め、若い人々の未来に大きな影響を与えることになります。大学は学費の値上げとは別の方法で財源を確保する道を最後まで検討するべきです。
I am against the University of Tokyo's tuition fee increases. I support and respect the well-considered, well-planned student-led protests against them. Raising tuition fees at all universities, not just the University of Tokyo, will significantly affect the future of young people by restricting the opportunities for future generations to pursue their education and choose their future. Universities should explore other methods of obtaining financial resources than raising tuition fees.

アルヴィなほ子(東京大学総合文化研究科・教授)

すでに他の教員が述べているように、学費値上げが必要だとしても、その原因は政府からの運営費交付金の漸次的な減少にあります。「学生の教育環境を今後も維持・向上していくために、必要となる財源を確保すること」が目的なら、まず運営費交付金の増額を政府に要求するべきです。学費値上げは運営費交付金の更なる減額につながる可能性が大きいです。そうなると、学費値上げは運営費交付金減額の埋め合わせにしかならず、教育環境の維持・向上にはつながりません。
この「教育環境」維持・向上という目的ですが、「総長対話」では、体験活動プログラム、初年次長期自主活動プログラム、TA・RA賃金の上昇、D&I、DX、GXなどに、学費値上げ分を充てるという説明が、総長からなされたと聞きました。これは、いずれも選ばれた学生・院生に宛てられる恩恵です。全学生・院生から、値上げという形で薄く広く取るけれど、一部学生にしか還元されないというのは、不満の原因となるのではないでしょうか。
 また、国立大学の中では比較的恵まれた東京大学が、率先して学費値上げをすることの波及効果は極めて大きいです。東大だけの問題に留まらなくなります。つまり、日本全国の大学生・大学院生に影響があるということです。
次に、その効果に疑問があります。令和4年度の経常収益は266,388百万円、授業料等収益16,590百万円で、たった6%です。ここを1.2倍に値上げしても、1%程度の増収にしかなりません。
また、長期的な無償化の方向性との齟齬は理解に苦しみます。他の教員も指摘しているように、社会権としての大学無償化を日本政府は国際社会に約束しています。短期的にも、政府の発表によれば、2025年度からは多子世帯(扶養する子ども3人以上)の支援が拡充し、授業料・入学金が無償化されることになっています(私立大学も含む)。今回の学費値上げの提案は、そうした少子化対策に逆行します。子ども3人以上の多子世帯は、経済的に余裕がある家庭である可能性があります。来年度、多子世帯無償化と学費値上げが同時におこなわれれば、学生の間の不公平感は高まることは間違いありません。
こうした不公平感は、学生のメンタルヘルスに悪影響を及ぼします。東大の『2021年度(第71回)学生生活実態調査結果報告書』によると、「経済的なことや経済的自立」について悩んだり不安を感じたりしている学部生は、「よく悩む」「ときどき悩む」を合わせて60.7%(28頁)で、大学院生は68.4%(132頁)です。どちらも6割超えで、特に大学院生になると約7割にまで上がります。
また、メンタルヘルスの指標として、最近6ヶ月で「強い不安に襲われた」という項目を取り上げるなら、「しばしば」「ときどき」を合わせると、学部生が52.0%、大学院生が54.9%といずれも過半数で、大学院生の方が高くなっています。以上から、学費値上げは学部生より大学院生に大きな影響を与えることが予想されます。
その結果、企業が人手不足の中、有利な就職が可能となっている状況で、大学院への志願者数が減少すると予想されます。特に、人文系は分野によっては若手がどんどん少なくなっています。学問レベルの水準低下がごく近い将来に起こる可能性があります。
最後に、学生と教員から一番多く出た批判が、学内の合意形成の欠如です。あまりにも急に、理由の説明もなしに、マスコミからリークされたことは不信感を高めています。東大のステークホルダーである教職員と学生・院生、そして国民の頭越しに、外部(慶應大の塾長、自民党調査会など)からの意見によって、根拠も効果も乏しく学費を値上げしようとしているように見えます。このように重要な決定事項が、トップダウンに降されることは国立大学の「私物化」の一端と受け取られるでしょう。
わずかな増収のために、日本の大学の質の低下を招き、少子化に拍車をかけるのが、今回の「東大学費値上げ」だと言えます。大学本部は、東大のステークホルダーとの真の対話をするとともに、学費値上げの「検討」を凍結し、国際社会と日本政府の、大学授業料無償化の動きを見極め、運営費交付金の増額を訴えるべきです。

堀江宗正(東京大学大学院人文社会系研究科・教授)

日本の高等教育機関に要する国の予算の問題は、国のそれ以外のところで使用されているお金に関する財政問題と直結します。今、日本の国公立大学に注がれるべきお金が、アンバランスな形で別のところに回っているという事実を差し置いて、未来の学生とその家族たちに負担を負わせようとする論理は間違っているように思われます。上記の問題を直視し、財政の仕方に関する批判的問いのメッセージを送るためにも、今回の東京大学の学費値上げは実行すべきでないと考えます。他にも無数の理由が挙げられますが、ここでは割愛させていただきます。

桑山裕喜子(東京大学大学院総合文化研究科教養学部附属
共生のための国際哲学研究センター・特任研究員)
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東京大学の学費値上げに反対いたします。学費値上げはあらゆる人が高等教育を受ける権利を阻害するものと考えるからです。
東京大学が値上げをすれば他大学の追随が起こることでしょう。東京大学は授業料値上げが意味することを考えるべきです。
また日本は高等教育の漸進的無償化の国際人権規約b13条2項に批准しているわけですから、東京大学は政府にその実行を訴えるべきであると考えます。

ボイクマン総子(東京大学総合文化研究科・教授)

学費値上げに強く反対します。
(教職員や学生に対する情報の提示の不十分さを始めとする)これまでのプロセスという手続き問題、学費値上げの根拠・理由の薄弱さ、運営費交付金の増額という根本的な解決策の軽視、さらに、国際人権A規約という法制度を支えとした学費無償化というあるべき姿の無視等々、いかなる観点からしても、今回の学費値上げ案は正当化されるべきものではありません。
東京大学の将来だけを考えた場合でも、富裕層の出身者の比率を高め、のっぺりとした等質的な大学を生み出すことは、大学の本来的な理念にも東京大学の掲げる理念にも相応しくありません。

鈴木泉(東京大学人文社会系研究科・教授)

学費値上げ反対、どころか、学費を徴収すること自体に反対して当然ではないでしょうか。国立大学が学費を徴収するなど、本来あってはならないはずです。

柳原孝敦(東京大学大学院人文社会系研究科・教授)

本アクションに賛同します。東京大学が厳しい財政状況にあるとしても、学生にさらなる負担を強いるのではなく、日本政府の側に、運営交付金の増額をもとめていきたいです。日本は高等教育への公的支出が低く、高等教育に占める家計支出の割合が高い状況にあります。国立大学協会が訴えるように、多くの国立大学は「もう限界」なのかもしれませんが、だからこそ、運営交付金の拡充、教育への公的支出の拡大をもとめて、学生とともに声を上げるべきではないでしょうか。
経済的困難を抱える学生への支援は、そもそも学費値上げの件とは関係なく検討されるべきです。授業料免除の拡充や奨学金の充実といっても、世帯単位の、家族主義にもとづく制度や、学力基準など支給要件を伴う制度では、経済的困難に直面するすべての学生を救済できず、かえって負担を強いる可能性があることが在校生の訴えから伝わってきます。むしろ「無償教育の漸進的な導入」(社会権規約13条2(b)及び(c))を政府に強力に訴えていくべきだと思います。東京大学が掲げる「ダイバーシティ(多様性)の尊重」と「インクルージョン(包摂性)の推進」のためにも。

土屋和代(東京大学大学院総合文化研究科・教授)

東京大学の学費値上げに強く反対します。そして学生主体の本アクションに全面的に賛同し、連帯の意を表します。大学は多様な学生がお互いから学びあえる場所であるべきです。出自や経済的状況に関係なく幅広い学生を受け入れるための環境を整えるのが教育機関としての東京大学の責務です。学費値上げが東京大学に進学する学生の均質性をさらに高め、新しい視点から世界を見るための学びの機会を学生から奪ってしまうことを強く危惧しています。

井上博之(東京大学大学院総合文化研究科・准教授)
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東京大学はダイバーシティーの尊重を理念に掲げています。しかし、現実には、女性学生の比率は2割にとどまり、また、首都圏以外出身学生の比率が低いことが指摘されています。学費値上げにともなう保護者・学生本人の経済的負担の増加は、この2つの比率をさらに低下させる要因として作用する可能性が高いと思われます。くわえて、低所得者層出身の学生の就学をより困難にすることは明らかです。したがって、学費値上げは、ダイバーシティーの尊重という理念とは相反する結果をもたらすことになります。東京大学は、学費値上げによってではなく、公費の拡充を政府に要求することによって、研究教育活動の充実を図るべきであると考えます。

松本武祝(東京大学農学生命科学研究科・教授)

国公立大学の財政の学費収入への依存度を高め、「自由競争」を行わせることは、学費を値上げできる都市部の大学へのアクセスを低め、値上げできない地方大学の体力を奪うことになり、結果的に高等教育への全体的なアクセスを悪化させることになるでしょう。そのような状況を押し進めるであろう東京大学の学費値上げに反対します。目指すべきは無償化です。

河野真太郎(専修大学国際コミュニケーション学部・教授)

今回の学費値上げは、学生に対する経済的負担を増すだけでなく、次世代の研究者を養成し、学問の継承維持を図るべき大学そのものにとって自殺行為となりうる。東京大学は、独立法人化以降、事業規模・予算規模を拡大させ続けながら、運営費交付金の減少を理由として今回の学費値上げの提案に至った経緯を明らかにし、学生に負担増を強いることのない大学の経営方針を再考すべきと考えます。

王寺賢太(東京大学人文社会系研究科・教授)

「お金がないんだから仕方がない」という見解を内外で簡単に表明してしまう人が多いことをたいへん憂慮しています。学内にいて、「値上げもしかたない」という立場の方から聞いた説明に私自身が「なるほど」と思ったことはなく、値上げの具体的根拠が非常にあいまいです。
大学全体で資金繰りが苦しいのはよく承知していますが、そこから学生の学費に手を付けなければならないという結論に至るまでには何段階ものステップがあると思っています。その説明が明確でない案には、私は賛同できません。

中村高康(東京大学大学院教育学研究科・教授)

本アクションに賛同し、学費値上げに強く反対します。 Diversity and inclusionを掲げる東京大学が、学生に負担を強いるのは矛盾した行動であり、不条理でしかありません。藤井総長をはじめとする執行部は、「対話」と称する説明会で真の対話が行われたかのようなふりをすべきではないし、強い反対の声に対して真摯に耳を傾けるべきです。東京大学が行うべきは、安易な学費値上げの検討ではなく、高等教育の漸進的無償化を行う義務を負う日本政府に対して運営費交付金復旧を求めるアクションを起こすことではないでしょうか。 

河合祥一郎(東京大学大学院総合文化研究科・教授)
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東大の学費問題は東大だけの問題ではありません。
私大では授業料がすでに高額で、家計で購うのはほとんど不可能です。東大学費値上げは地方国立大・私立大にも波及します。それを許せば教育の機会均等という原則が崩壊してしまうので、今回の値上げには反対いたします。

米谷 仁志(関西大学・非常勤講師(情報系))

大学教員として、また長い苦学の道を歩んだかつての学生として、今回の学費値上げに反対する学生たちの訴えに心から賛同します。現在は、私が大学で学んでいた頃よりもさらに、学生たちを取り巻く経済状況が悪化しています。過去最高額となる税収がありながら、次の世代への実質的支援を頑として拒む政府の態度こそ最初に見直すべきであり、ただでさえ苦しい経済状況にある学生および各家庭に負担を押し付けるべきではありません。また、私はちょうど子育て世代に当たりますが、将来の学費負担を懸念して二人目、三人目を諦めるという友人も少なくありません。国立大学の学費値上げは、さらなる少子化を招くことにもなるでしょう。

針貝真理子(東京大学大学院総合文化研究科・准教授)

東京大学の学費値上げは東京大学だけの問題にとどまりません。そもそも、法人化以降運営交付金を減らされ続けていることに根本的な問題があります。根本的問題を放置したまま学費を値上げしても、その場しのぎに過ぎません。東大が値上げをすれば確実に全国の国立大学に波及します。長引く不況により経済的余裕のない家庭も多く、進学を諦めざるを得ない高校生がますます増えることになります。学費の値上げが更なる受験生減少を招くことは目に見えています。これ以上学生とそのご家族に負担を強いることはできません。日本の教育水準を押し下げ、国際的競争力を失うことにつながる愚策です。断固反対致します。

高橋優(福島大学人間発達文化学類・教授)

私自身、国立大学しか選択肢がないと両親から言われた環境に育ちました。進学を断念するかもしれない、潜在的な受験生の一人一人の顔を思い浮かべ、今一度、再検討をしていただきたいと思います。また万が一、学費値上げを挙行するにしても、匿名ではなく、顔や声がわかるかたちで交渉を進めていただくことを強く願います。

阿部賢一(東京大学大学院人文社会系研究科・准教授)

ゲーテ『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代』の一節に、「国家にとってもっとも必要なのは、心意気ある当局者である」とある(第3巻第11章)。いまの場合に、「国家」はもちろん「大学」と置き換えてよく、しかし同時に「国家」のままでもよく、というのも、東京大学にとっていま、もっとも必要なのは、なによりも学生を中心として上げられた声を正面から受け止め、ひるがえって、息が詰まるというほかない現行の教育・研究政策の流れを根本から転換させるべく、国家に向けてみずから声を上げることだからである。反対意志の表明は、大学がいまこそ心意気を示すことへの強い期待と表裏一体なのだとあえていいたい。そして、当局者がその期待を裏切ることはないはずだとあえて信じたい。

森元庸介(東京大学大学院総合文化研究科・教授)
55

海外出張中のため、賛同文は後日!

秋葉淳(東洋文化研究所・教授)

東京大学における今次の学生たちのアクションに、心より連帯の意を表明します。本来高等教育の漸進的無償化を謳った条約を批准しながら、運営費交付金を減額し続け、国立大学法人の財政状況を悪化させてきた責任は日本政府にこそあり、それを学費値上げという形で学生や保護者に転嫁することは、そもそも筋が違っています。全国の国立大学関係者は、学生・保護者も、教員も、東京大学の判断が波及することを恐れています。また、学費値上げという重大な運営上の判断に対し、そのプロセスを透明化せよという学生の当然の要求に、真摯に向き合わない執行部の姿勢も大問題です。東京大学にはかつて、教授会だけでなく、学生・院生・職員もひとしく大学自治の担い手であることを、確認書の形で世に示した輝かしい歴史があります。現在の国立大学法人では、教授会自治すら否定され、執行部のトップダウンによる運営が、政府・文科省より強く求められています。その中で、学生自身が大学の運営にコミットする、少なくとも説明を求める権利があることを高らかに掲げた学生たちの今次の行動に対して、大学自治を取り戻す大きなステップのひとつとして、敬意の念を抱きつつ、応援しています。

原直史(東京大学人文科学研究科修了 新潟大学人文学部教授)

学費を上げることそのものの問題ではない。環境省によるマイク切断事件が象徴するように、学費値上げの根拠と、その結果としての教育的余波について検証し、討議し、声を上げる機会を剥奪することに対する倫理的抵抗と、コミュニケーションを重視する社会への危機の表明である。 

稲垣諭(東洋大学文学部哲学科・教授)

今回の東京大学における学費値上げに強く反対します。経済状況が苦しい学生にとって10万円の値上げは学業をあきらめろというに等しいものです。給付型奨学金を拡充するといってもいくつかの条件を満たさなければならず、例えば病気により休学した場合などその対象から外れてしまう可能性が大いに懸念されます。また、この値上げにより学生の出自が均一化し、富裕層や首都圏在住者の割合がさらに高まることは、考え方の一層の画一化を生む危険があります。「多様な出自を持つ学生を受け入れる」とは、単に海外からの留学生だけを受け入れていればよいというわけではありません。国内にいる様々な出自、階層の人びとと学内で出会い、互いを知ることは、自らのそれまでの価値観を問い直す上でも、貴重な経験となるはずです。さらに、日本は高等教育における公費負担が36%とOECD加盟国平均の67%を大きく下回っています。この20年の日本の大学教育に関する施作がことごとく失敗であったということは、すでに多くの人が認めるところでしょう。弱者である学生の学費値上げという安易な方法に頼るのではなく、むしろ東京大学は国に対してそうした施作の方針転換を強く求めていくべきです。

福島祥一郎(同志社女子大学表象文化学部・准教授)

僕が学んだボローニャ大学は、大学の起源のひとつとされており、それはまずは学ぶ者の集まりが教える者を雇うことからはじまりました。ゆえに大学は学生のものであり、学生不在の議論・決定はありえません。今回のことで大学や教員が学生の信頼を失ってしまうのは、増収額以上の損失となります。学生とともに議論を再出発させることを望みます。

土肥秀行(東京大学大学院人文社会系研究科准教授)
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今般の学費値上案には、多くの問題があります。
1. 学内外熟議が未了です。その証拠に、教職員や学生など学内者の多くが、この件を初めて知ったのは学内筋からではなく、学外の報道からの「寝耳に水」でした。
2. 諸物価高騰の折、実質学費を従前通りに保つにはその名目額を物価に比例して上げざるを得ない、という主張であれば、一理あります。而るに今般の案は、国立大学法人法に認められている上限まで、一挙に2割値上するもので、物価高騰分を明らかに上回ります。
3. 物価上昇分を大幅に超える、しかも突然知らされた学費「爆増」にも拘らず、激変緩和措置が真面目に議論されていません。
4. 学費の爆増は、自宅から通学できない地方出身者を直撃します。東大の下宿生:自宅生比は、昭和末期には6:4でしたが、現在では3:7と逆転、「駅弁大学」化が進んでいます。学費爆増でこれが更に極端化すれば、東大生の出身地ダイバーシティは終焉します。
5. 授業料減免の基準として、御多聞に漏れず「多子世帯」がお出まし。要は、多子を産める若いうちにヨメに行け、という都議会セクハラ野次的、『女性手帳』的なメッセージを国立大学から発信し、東大生の母親たちを「産む機械」扱いする、流石ジェンダー・ギャップ指数118位!後進国の面目躍如です。
6. 授業料減免の世帯所得上限6~9百万円は、実際の経済的必要性というよりも、「共働きだと超えてしまうが専業主婦なら収まり易い」微妙な水準に(恐らく故意に)設定されていて、今般の学費爆増は事実上「共働き増税」です。「子どもを東大に入れる母親=専業主婦」という、これまたジェンダー・ギャップ指数118位!ならではの良妻賢母翼賛メッセージです。
7. 授業料を2割も上げても、大学経費の断トツ最大費目である人件費すなわち教職員給与が2割上がる計画とは聞きません。増収分が何に食われるのか説明がありません。累積赤字の補填? 内部留保? 大学債償還積立金? どれも学生や教職員の責任ではないはずです。
8. そもそも諸外国で学費高騰が社会問題化しにくいのは、給付型奨学金が充実しているからです。英語で奨学金(scholarship、fellowship)と言えば給付型を指し、貸与型はstudent loanと言って市中銀行も参入しています。日本の「奨学金」は後者、それも高利貸が主力ですから、日本で「海外並」「国際標準」の学費値上を強行すれば、罪の無い学生・卒業生たちを借金漬けにするだけです。
これら数多の問題の解消が、拙速・安易な授業料改悪よりも優先であるべきことは、言うまでもありません。

佐々木彈(東京大学社会科学研究所教授・
東京大学教職員組合副執行委員長・東京地区大学教職員組合協議会議長)
 

東京大学の財政状態が芳しくないのが事実として、その最大の原因はどこにあるのでしょうか。過去四半世紀にわたる運営費交付金の削減にあります。そして、その苦難は東京大学以上に他の国立大学により大きくのしかかっているはずです。ここで財政改善策として東京大学が学費値上げに踏み切れば、研究教育条件を軽視する政府の大学行政を容認し、その弊害を学生にしわ寄せするという、そういう方向での「解決」を全国の国立大学に指し示すことになります。大学行政は国家100年の計です。問題はひとり東京大学の行方にとどまらず、21世紀の日本の浮沈に関わるものです。今こそ東京大学が先頭に立って、全国の国立大学と協同して、政府に大学予算の拡充を求める運動を起すことを要望します。その運動には大学に関わる全国のすべての階層(学生・院生・教員・職員)が賛同するでしょう。

平野 健(中央大学商学部・教授)

東京大学の授業料値上げが及ぼす全国の大学への影響は計り知れないと予想されます。東京大学が財政的に極めて困難な状況にあることは理解でき、授業料値上げは苦渋の選択であることも承知しておりますが、それでもやはり授業料値上げは最後の手段であるべきと考えます。このような財政的状況を招いた本質的な要因、すなわち運営費交付金の削減、教育への投資の軽視という国策が見直されるよう働きかけることは,本当に無理なのでしょうか。

梅野宜崇(東京大学生産技術研究所・教授)

大学とは学生と教職員の連帯の場であり、ときに対立し、意見に齟齬が生じたときであっても、対話を通じてお互いを尊重することで問題を解決していくべき場だと考えます。しかし、今回の事案に関しては意思決定のプロセスが不透明であり、開かれた議論の場が作られないまま、なし崩し的に物事が進行していくことに強い危惧の念を抱きます。とにもかくにも、まずは執行部、学生、教職員たちが同じ当事者として面と向かって話し合える場を作り、そこから当事者(ならびに「将来の」当事者、そして社会)にとって最善の策をともに練り上げていくことが必要だと考えます。

乘立雄輝(東京大学大学院人文社会研究科・准教授)

学費の値上げについては、日本が高等教育の漸進的な無償化導入を定めた社会権規約に拘束されていること、特に世帯収入を基準とした学費減免や奨学金などの充実は様々な事情を抱えた学生の不安を取り除くものにならないことなど、多くの問題点が繰り返し指摘されています。教育を受ける権利は全ての人に保証されるべきであり、そこからこぼれ落ちる人を出さないということを重視するならば、授業料の値上げではなく、運営交付金をはじめとした大学への公的資金の増加を図るべきと考えます。
 今回東京大学の学生さんたちが起こした抗議活動に対して、伝え聞こえてくる大学の対応は誠実さを欠き、「対話」と呼べるものになっていないように思われます。もちろん正確なところは外部にいる者からはわかりません。しかしその様子を、東大生だけでなく全国の学生やこれから大学で学問を志そうという人たちが見ています。東京大学およびその中で責任ある立場についている方々には、学問と教育を担う機関として、あるいは学者・教育者として、あるべき振る舞いは何なのかを今一度考えて頂きたいと思います。
 この問題は東京大学、あるいは国立大学のみの問題ではなく、全ての高等教育機関が関わる問題です。近年、いくつかの国立大学が学費の値上げに踏み切りましたが、その時点で多くの大学関係者がもっと声をあげて議論すべきだったのだと思います。大学教員としての自らの責任を顧みています。そして、今回学生さんたちが自ら行動を起こしたことには、大きな感銘を受け、希望を感じました。

磯部洋明(京都市立芸術大学美術学部・准教授)
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学費値上げに反対します。政府には大学への運営費交付金の増額を求めます。私自身も金銭的な理由により一度は進学を諦め、就職してお金を貯めてから大学院(東京大学)へ進学した身です。大学院では貯金残高が減っていく不安を抱えながら、研究をしていました。その中で、私よりもよほど優秀な研究者の卵である仲間たちが、奨学金返済や将来の不安を理由に就職していった姿を見てきました。研究が全てではないですが、教育の機会が金銭的理由で奪われてはなりません。

風間勇助(奈良県立大学・講師)

私の所属していた千葉大学では、数年前に学費が値上げされましたが、当初約束されていたような形で貧しい学生全員が支援されることはなく、とても酷いことになりました。
値上げ分によって拡充されるとされていた授業料免除についても、優秀な博士課程の学生を国が支援する日本学術振興会 特別研究員DCの採択者(年収240万円程度)が全額不採択になり、生活保護レベルの生活を余儀なくされている実態が、先行事例としての千葉大学にはあります。さらに、千葉大学では、授業料免除の審査の基準は学生に開示されておらず、翌年度以降の生活保障がない状態が永遠に続くため、学びの道を諦める優秀な博士課程の学生が後を断たず、焼け野原のような惨状です。
東京大学の授業料値上げは、いわば失敗事例としての「千葉大学化」です。これは、今後の日本の学術の発展を、疑いなく大きく遅れさせ、いわゆる「先進国」の立場を転げ落ちていく速度を加速させていくでしょう。

鈴木南音(早稲田大学文化構想学部・非常勤講師)

すべての大学の学費の値上げにつながりうる東京大学の学費値上げに反対します。
現代社会に生きる私たちは、現実問題として互いにより掛かり合いながら生きており、皆で共同で次世代を担う若者たちを支援してきています。学費の値上げはその助け合いを弱め、家族や若者自身の負担を強めるものです。教育を商品と見なすこの傾向を強めることは、そこで培った能力を自分のためだけに使う利己的な態度を正当化することになります。仮に私たちが国家という枠組みを重視するのであれば、あるいは国家の外における助け合いの有効性を信じるのであれば、どれほど欺瞞的に思えるとしても、受益者負担という言葉によって失われるものが何なのか正視していく必要があります。
先を見通す学生の皆さんの慧眼と勇気に敬意を評して、多くの皆さんの支援を呼びかけたいと思います。

浜田明範(東京大学総合文化研究科・准教授)

教育基本法第3条では、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって差別されることなく、すべて国民はひとしくその能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならない、とあります。そして、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない、と国・地方公共団体の義務も述べています。10万円という値上げ額は、この経済状況の悪い中皺寄せを受けている経済的に恵まれない方々にとっては、東大への進学を諦める・諦めさせるのに十分な理由となります。将来よい社会をつくりあげるポテンシャルのある優秀な人が進学と学びを諦めることで、結局損をするのは国や社会です。私たちだれもが、いい社会の恩恵を受けることができず、損をするのです。 世界と対等に渡り合える頭脳は、決して恵まれた人からだけ出てくるものではない。ダイバーシティがないと、今世界と対等に渡り合えません。東大の学費値上げに反対します。

坂内博子(早稲田大学 理工学術院・教授)

教育は単なる私財ではなく、公共財であり、共通財です。学費の値上げは、教育という財の公共的な性質を弱め、私的な享受を推し進めてしまうでしょう。共に生きる社会の可能性を紡ぐために、授業料の値上げに反対します。

浅井幸子(東京大学大学院教育学研究科・教授)
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地方国立大学は東京大学の方針を参照することが多々あり、今回の東京大学の学費値上げの問題は、地方国立大学にとっても無関心でいられることではありません。
またこの問題が、イスラエルによるガザへの軍事侵攻、及びそれに反対する学生たちの世界規模の抵抗運動と同時期に起こったことも、見逃されてはなりません。国家が資本主義の論理と、とりわけて経営管理の観点でことにあたること(例えばイスラエルもガザに入れる食料・カロリー量をコントロールをしていました)、こうした点が、学費値上げというローカルな出来事とジェノサイドという世界中が心を痛める出来事との間で共通しています。
以上のことから、立ち上がった学生と共に、今回の東京大学の学費値上げに反対します。

中村大介(豊橋技術科学大学総合教育院・准教授)

これは高等教育を国に社会としてどう位置づけていくかという問題です。
日本では高等教育にかかる自己負担の割合が先進国の中でとても大きく、機会の不平等や生産性の停滞の大きな原因でもありました。
東大の学費値上げは、高等教育セクター全体の自己負担費のさらなる増大の流れに棹さすもので、その方向性を認めることにつながります。東大だけの問題ではありません。
中間層の所得も長期的に落ち込んでいる中で、学費値上げは子どもや生徒、保護者たちの進学意欲を阻害することになり、それは当事者のみならず社会全体にとってもマイナスです。
学費値上げをするのなら給付金奨学金の大幅な拡充を伴うなど、十分な対応をする必要があります。国がその責任を果たさない中で、安易に学費値上げを行うことに反対します。

仁平典宏(東京大学教育学研究科・教授)

「東京大学学費値上げ反対緊急アクション」を応援します。向学心あふれる若者達の未来を摘み取ってはなりません。政府は国立大学法人法の国会付帯決議に違反して減額されている運営費交付金を元に戻すべきです。問題はこれで解決します。

梶田秀司(中部大学・教授)

東大のみならず、国立大学の値上げに反対します。運営費交付金を年々減らすということを強いておきながら、一層の成果を求めるなど、両手を縛って戦えというも同然です。そしてそのツケを学生とその家庭に転嫁するのは間違っています。「受益者負担」という言葉も聞かれますが、「人材育成」という言葉がはしなくも示しているように、本当の受益者は「社会」なのです。また、「奨学金」という名の学生ローンの問題も大きいと思います。私個人は「免除職制度」で旧日本育英会奨学金の返還を免除されましたが、今はこのようなことすら望めません。あらためて、若者の可能性の芽を摘む恐れのある学費値上げに反対します。

川瀬貴也(京都府立大学文学部・教授)

ヨーロッパ中世に誕生した大学は、もともと教員と学生の自治組織であり、その唯一の目的は普遍的な知を創造し分有することにあった。現代においても、否、現代においてこそ、この理念は堅持されるべきであり、大学教育は無償であることが大原則である。学ぶことは、人間の最も基本的な権利の一つであり、その権利は社会が公的に保障しなければならない。社会が学びを無条件で万人に保障するとき、最終的な受益者となるのは社会そのものである。この歴史的真実を忘却し、大学に市場原理を導入するとき、待っているのは社会の脆弱化であり回復不可能な貧困化である。

守中高明(早稲田大学法学学術院・教授)
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大学教育に携わるものとして、またつい最近まで東大の大学院生だった人間として、今回の学費値上げには断固反対したい。そもそも決して安くない額であり、本来なら減額あるいは無償化に向かうべきところ、なぜここにきて増額しようとするのか。ただでさえ余裕がなくなってきている学生たちに、なぜさらなる負担を押し付けるのか。もっと自由に、足枷なく、学問や研究ができたら(個人にとっても大学にとっても国にとっても)どんなに良いか。経済的不安を理由に研究の道を諦め、大学を去った仲間たちの姿が目に浮かぶ。

須藤輝彦(東京大学人文社会研究科・助教)

国際人権規約A(社会権規約)により、高等教育の漸次的無償化は当然の方針です。したがって、公的領域において安易に「受益者負担」という特殊な観念に基づいて、社会が営利で運営される傾向に反対します。公教育における「受益者」は社会全体です。今日、公的セクターが新公共経営(NPM)の名のもとに営利化される趨勢が続いてきましたが、本質的に「稼げる大学」、すなわち高等教育という部門が営利を生むものだという観念はありえないと知るべきです。逆に、社会的必要性に基づいて必要な資源を投入することが、社会全体を豊かにする鍵であることを忘れてはなりません。

中野昌宏(青山学院大学総合文化政策学部・教授)

次世代の育成は国の未来を左右する。大学教育の受益者は学生個人ではなく国。貧富によらず優秀な学生を育てることが重要であり、学費は低廉であることが望ましい。併せて、大学の教育環境を守るために運営費交付金を法人化前に戻すこともお願いしたい。国民には問いたい、貧窮して教育もまともにできない大学に子供を入学させたいかと。今、教育環境を正常化しないと、この国の未来は無い。

平岡泰(大阪大学大学院生命機能研究科・名誉教授)

国際人権規約の高等教育漸進的無償化違反である、大学の学生納付金の値上げに反対します。東京大学の値上げにももちろん反対です。学費値上げの話には常に、言い訳のように「経済的支援」という言葉が添えられます。私自身もそれらの支援を多く受けて進学、学位取得をしてきたからこそ言いますが、それらは学生の挑戦を阻みます。もしも失敗したら、支援が受けられなくなり、最悪の場合に大学にいられなくなるからです。それは学生自身にとっても、社会全体にとっても損失です。
なお、地方の大学や低所得の家庭の子女の進学先として選ばれやすい高等教育機関の学費値下げを優先するべきという意見もあることは承知しています。自分自身も地方出身なので、そういう観点は重要だと思います。しかし、地方の大学や大学以外の高等教育機関の学生納付金の軽減策は、何も示されていないに等しい状態です。その状態で、他の大学への波及も懸念される東京大学の学費値上げを行うことは、日本国内のすべての若者の教育機会を損なうものだと考えます。

西垣順子(大阪公立大学・教授)

学費値上げに反対いたします。東大にはどのようなバックグラウンドを持っていようとも人々が自由に学問し、夢を追いかけられる空間であって欲しい。これは東大に「『はかせ』になりたい」という夢を叶えてもらった、いち研究者の願いです。

栗林梓(皇學館大学文学部・助教)
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東京大学での学費値上げは、他の国立大学に波及する危険性がとても高いです。これ以上、学費の私費負担が増加することは、「教育の機会均等」を破壊することにつながります。運営費交付金の削減政策を転換し、運営費交付金を増額するよう政府に求めるべきです。

大内裕和(武蔵大学・教授)

以上、6月27日(木)21時から募集させていただき、7月10日(水)10時までに集まった81名(※82名)のご賛同文になります。
今後、随時、更新させていただきます!お楽しみに!
※お一人、賛同文は未掲載で、名前だけの賛同の方がおられます。




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