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【七峰】宵霧亭日報 20240601

の屍を越えてゆけ

 いろいろ思うことがあってPSPリメイク作のPS4リマスター版「俺の屍を越えてゆけ」をせっせとプレイしている。

 同時期に始めた配信者のプレイを見たり、攻略本を買って読んだりしながら、今は朱点童子討伐を目指して力を溜めているところだ。

おれが見ているバーチャルストリーマーだ

 PSVitaでPSP版『俺の屍を越えてゆけ ご新規体験版』をプレイした時は(あれってもう10年前なのか?)どうにも暗中摸索感が強く途中放棄してしまった。

 なので今回は攻略ノートや合間にメモをしたためながらとにかくゲームシステムとその攻略の手がかりに馴染むことから始めた。

 そうして世代交代のサイクルを回しながらダンジョンアタックや討伐隊選考試合(回りくどいのでおれは「甲子園」「春のセンバツ」と呼んでいる)の報酬を増やしていくことで一歩ずつだが着実に家中かちゅうが強くなっていく醍醐味を味わっている。

 攻略本のインタビューにて「シナリオよりもまずシステムありき」「あくまでもシミュレーター」とする開発者の言が忘れられない。シリアスに眉根を寄せようとするとくだらないジョークで笑わせてくる本作だからこそ、セーブ&ロードに加えてリマスター版に追加の巻き戻し(リワインド)機能も臆さず利用している。

 むろん、不慮のクラッシュやセーブ忘れ以外のケアレスミスならば受け止めてやり直さない気概ではいるが、「あっさり」〜「どっぷり」の難易度調整を必要に応じて変える、レアアイテムの出やすくなる「熱狂の赤い火」を確認したら巻き戻して目当ての迷宮に向かう……くらいは攻略の近道として許容されるだろうと考えている。

 また、子孫の性別決定の計算式を応用すると男女の産み分けもテクニックとしては可能という事実にはおれも驚いている。まあ、もともと2:1の割合で女性の生まれやすいシステムではあるのだが。

 今回は「夕霧オウカ」という女性名の当主で始めたので、女系当主縛りで進めるにあたって「今月は女性が生まれるから交神(神と交わり子をなすこと)をしよう」と考える目安になった。

NARRATIVE……

 おれは「西の『ウィザードリィ』、東の『俺屍』」として両者を並べている。どちらもシナリオはあってないようなものなのに、ゲームの深みにハマればハマるほど、そこから何かしらの物語を拾って現実世界に帰還することができるからだ。

 俺屍の場合、基本的には交神の神選びや出撃隊のメンバー選出などはプレイヤー自身が選んでいるにもかかわらず、時としてゲーム側から「この人は◯の神が好きだそうだ」とかいうフレーバーテキストを渡されると、なんとなく「で、この中の誰が好きなんだ?」「意外と一途なのかな」「そうは言っても男と女」……などと想像力を膨らませたり、あまり前線に出せなくて忠心(いわゆる忠誠心)が下がっているから贈答用アイテムで機嫌を取ると「茶器を愛でる趣味人なのかなあ」と家の中の生活を妄想したりする。

 そうやって何かしらの思い入れがあるし、紛れもなくこの外世界に生きる人間だと信じるからこそ、彼らの今際の際は涙するほど哀しいのである。

「あっさり」モードならば総プレイ時間は2〜30時間とされるものの、まだ先は長い。おれがこの世界の謎を明らかにし、すべての戦いに勝利するのがいつかは誰にもわからない。

 だがきっと、おれたち夕霧の一族は勝てる。オウカとは、そのために生まれた決戦にして必勝の存在なのだから。


 しかし……それは京の人々や戦士たちにとってはどうなのか、考えてしまう日もある。

 攻略本が示す通り、戦いの日は続く。朱点童子討伐は通過点でしかないという未来視は、プレイヤーのおれとプレイヤーキャラクターである歴代当主たちをおののかせる。

 ゆえに、おれたちはその戦力の余剰を増やすべく、鬼との戦いを長引かせなければならない。

 だが、それは人間側の犠牲を増やす策であることは白骨城とかで完全に証明されている。
 帝のやつも内心「あいつ選考会で毎年優勝してんのに、いつ朱点の首取りに行くんだよ。大江山すら登ってねーじゃねーか」とか絶対思っているはずなのに、京都人特有の奥ゆかしさで隠しているに違いない。

 選択のときが、せまっている。

 おれは……



 おれたちは【復讐者】である。ヒーローではない。

 まずはその自覚を持つべきだ。おれたちは京のみやこを守護するために遣わされたのではなく、朱点童子にかけられた二つの呪いを解いて人間らしさを取り戻すために生命のバトンをつないできた。そのことを忘れてはならない。 

 たしかに京の復興予算として鬼から奪いかえした財貨を出資しながら、その鬼による被害に目をつぶるのはマッチポンプを疑われてもしようのないことだ。

 だがそれでも、それでもだ。おれたちのつかみ取るべき未来は、宿敵との辛勝ではなく圧倒的な勝利であるべしと考えるならば、夕霧の一族が費やすべき時間は、すべからく完全勝利のための鍛練に費やされるべきだ。

 そのためには天地人、人も神も世のことわりもことごとく利用する。

 そのはてにおれたちの復讐は成される……はずだ。せかいがおれたち勝利の実存を要請された本質決戦存在の跋扈ばっこを、ゆるせなくなるその日まで。

(了)

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