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【七峰】ストリートファイター6のストリートファイターが面白い ほか

いらっしゃい。

 おれは誰でもなく逆噴射聡一郎文体を摂取すると出てくる人格だ。

おれより強い奴の背中越しに見る、STREET FIGHTERというムーブメント

 おれがSTREET FIGHTER 6発売から一週間を過ぎて思うことは、体験版に触れた先月から含めて完全に出遅れたな、ということだけだ。

 おれは体験版のワールドツアーでルークスタイルの勝ち名乗りを上げる自分のキャラクターを見て以来ルークを使うと決めたが毎日のコンボ練習を怠り、18キャラクターの対策も知らず、おまかせでフラッと訪れたサーバーにいた見知らぬ誰かの連勝記録をたすける……その繰り返しだった。

 ソロプレイヤーからすれば馬鹿げた言い訳なのだろうが、スト6はコミュニケーションツールになりうるオンライン対応ゲームでありながら、おれは自分の友人知人(インターネット上の)がどの程度本作をプレイしているか知らないし、駆け出しのモダンプレイヤーであるおれでも入れそうなDiscordコミュニティのあても無かった。

 このままMEXICOの荒野に骸をさらすのみか? それとも一山いくらのネガティブキャンペーンのように「スト6はくそ。8000円がむだ」と吐き捨ててそれきりPS4をアマゾンプライム起動するだけのマシンにするのか?

 ボシュではないが、それではダメなのだ。このままでは格ゲーという巨木はたおれ朽ち果てるのみになる。カプコンはそうゆう危機感をもっておれたちにこのゲームをゆだねている。

 そのことをわかっているやつらはすでに行動している。道のはるか先を目指し、最初の一歩を踏み出した。

 サロメ嬢は幼き時分から同人格ゲーを嗜んでいたという情報もあるから、まるっきり格ゲーの初心者……それもゼロからのアケコン(クラシック)操作という難行に耐えられぬ者ではなかった。それでも比較的変化に乏しく同接数とか評価とかが難儀しそうなトレーニングモードの耐久生配信というものを真剣にやり抜き、その背中をおれたちに見せてくれた。

 いつかおまえはおまえ自身の強さを信じるに足らず、あるいは我が身の弱さを思い知らされ、身を半歩後ろへ退いてしまうこともあるだろう。

 そんな時には彼女の背中を思い出し、折れかけた心の芯棒に、もう一度熱い鉄を注ぐのだ。

昇龍拳を覚えぬかぎり、勝ち目はない

 などといったきれいごとを夢想しつつおれは対戦台を離れ、旧作ビデオゲームの並んだ一角ではじめてSTREET FIGHTER 1をプレイした。

 ファイティングコマンダー OCTAを買って以来波動拳コマンドと昇龍拳コマンドは嗜む程度に練習していたが、当時の感圧式ボタンによるものだというコマンド入力難度の高さゆえに最初はひたすら6236とこすりながらPを連打するようにして必殺技が出るのを祈るプレイングだった。

 移植のバージョン違いによって技の出しやすさ・出しにくさはあるように思えるが、ゲーセンミカドの配信では正確なコマンド入力と強P連打によってドラゴンダンスを達成していたから、これが攻略の正道なのだろう。

 だが、肝心な時に昇龍拳が出ない。スト1の洗礼とはこういうものかと思う。

 これは何度か試してみて自分で感覚をつかむしかないのだが、肝心なのはやはりコマンド入力の正確さだ。
 一息に流れる筆しらべのように623の「3」でしっかり止める……それもニュートラル(立ち・キー入力なし)から始動するというところに注意すると成功率が微増するように思われる。
 もっとも、ひどい処理落ちとそうでない時の予測不能な挙動を見るに確実とは言えないが。

 果たしてドラゴンダンスは高難度のテクニックだ。無敵時間が入るので続く限り敵なしだが、ひとたび失敗すれば接近してきた相手の攻撃で大ダメージを受けるリスクもある。また、左右反転しても必殺技が出せるようにならなければ慌てた挙句レバガチャお祈りプレイに走ってしまうだろう。
 なおサガットはタイガーショットも通常技も強いのでどうしようもない。ドラゴンダンスで胸先を切り裂いてやる以外に最適の攻略法はないのだ。

 おれはパッドのアナログスティックではなく方向キーで入力しているので、親指の第一関節あたりが擦れて痛い。かつてゲームボーイアドバンスを愛機としていた頃、使い込みすぎて固くなったボタンを無理やり押し続けたことによる古傷を思い起こす痛みだ。

 それでも自分の記録が残り、全世界と競うことには得も言われぬよろこびがあった。

疑似的なゲーム筐体に投入した100円玉の数を数えるソフトウェアを開発した

 例によって対戦に負けるたびに再戦選択を連打している時に、おれはゲーセンで連コインする感覚を疑似体験した。

 仮想のゲームセンターで使ったお金の額を記録できたら面白い。本ソフトウェアはそのようなきっかけから3DSのプチコン3号で製作した。

 暫定的に日にちごとの数値情報の記録と「元が取れるまで」……予め代入したゲーム等の代金から一年の合計投入金額を引いたものの計算ができるようにした。

 UIの改善や新機能の「月の支出を領収書にして表示」などが今後の課題だ。

 その他の問題点といえば2029年までしか対応していないこと(思うに2030年になったら30年代版にイチから作り直せばいいんじゃないだろうか)、どの月も一律31日まで記録が可能になってしまっているところあたりだろうか。なかなかどうしてカレンダーというものは難しい。

 プチコンは半年に一回くらいの周期で手を付けたくなる、それだけの魅力がある。現在は入手困難となりSwitchのプチコン4にバトンが渡った状態だが、3号のポケットコンピュータらしい取り回しの良さはやはり何物にも代えがたい。

「ファミコン体操」は早すぎたゲーミングストレッチなのか

 スト6のモダン操作を始めたての頃、手指と手首のケアをどのようにしたらよいか気になった。

 何かというと「指の運動」と揶揄されがちなビデオゲームだが、コントローラを握っている間に指全体にかかる負荷は時間をかけるほどに無視できないものとなってゆく。

 そんなときケガを抑制できるストレッチがあれば……と思うとおれの場合、まず真っ先に「ファミコン体操」を思い出すのだ。

 ファミコン体操…………なんだったんだろうな、あれ。
 おれは有野課長の次に高橋名人を知った新参者だからなんとも言えないところがあるが、実際の体操としての効き目よりも記憶にやたらと残ってしまう何かがある。
 子供相手に得体のしれない動作を強要することから「宗教くさい」と断じる口さがない者もいたが、元はといえば高橋名人の代名詞である16連射とは腕の振動を肘で支えて指先に伝えるものであり、ファミコン体操における手指の体操との関連性がほとんどないところも理解を拒む要素であろう。

 当然ながらおれの見たあのビデオ──正式名称を「高橋名人のファミコンゲーム 忍者ハットリくんビデオ必勝法」という──は違法なアーカイブ動画であり、現在をもってしてもVHSの現物を取り寄せる以外に正規の視聴手段は存在しない。

 実は2020年にYouTubeのコロコロチャンネルにて「高橋名人のファミコン体操2020」と題した動画が上がっているのだが、例の人差し指と小指の曲げのばしの初級・中級・上級編の紹介にとどまり、86年版にあるその他の体操は含まれていなかった。
 これ以上の情報──たとえば厳密にファミコン体操が手の筋肉に与える刺激や効果とか──はネット上にはなく、あくまでコロコロアニキ関連でゲスト出演した高橋名人の一連の動画、その一部らしい。

 あとで調べてわかったことだが、86年版ファミコン体操はそれぞれ「みみずの体操(ねずみの体操とも)」、「炭坑節指ダンス」、「指折り体操」、「グーパー体操」がモデルとなっており、このうち人差し指と小指を同時あるいは交互に曲げる体操は高橋名人オリジナルのもの。

伝承されていたのは、人差し指だけで行うのですが、これだけだと面白くないので、人差し指だけのVerを初級。

人差し指+小指で同じ動きをするVerを中級。

人差し指+小指だけど、右手人差し指と左手の小指、左手人差し指と右手の小指を同じ動きにする上級を作ったのです。

高橋名人オフィシャルブログ「16連射のつぶやき」(2020)「「ファミコン体操」」

 察するに筋トレというよりは脳トレの側面が強いのだろう。
 ビデオゲームでは右手と左手で違う指の動きを要求される場面が多々あり(格ゲーなどその最たるものと言えるのではないか)、脳と手の働きを活性化させること自体は悪くはない。
 ただそれが即効的なゲーム上達法を求めるプレイヤー心理と結びつかず、指を互い違いに動かす謎の儀式としてゲームオタクの印象に残ったのは、80年代当時から健康的に身体を動かすことを広く訴えかけていた高橋名人のことを思えば、すこし哀しくもある。

現代においてはゼロ年代オタクサークルの内輪ノリを感じるのみである

 これでファミコン体操の検証は一段落した、とおれは考えている。
 あるところでは「ケンコー体操」として紹介されていたとか、例のビデオ以外のメディアで紹介されたファミコン体操の情報(切り抜かれたものやGIF画像はネット上にいくつか存在する)などは興味の惹かれるところだが、しょせんググった情報でいかがでしたか程度の能力しか持たぬおれの出る幕ではない。

 次はこのファミコン体操という文化をおれのような人間が継承する番だ、と思う。かつて伝承歌が、人から人へ風のように移り渡るMEMEだったように。
 本格的にゲームプレイヤー向けのストレッチが読みたいなら、おれがググって見つけたサイトを参考文献に並べておく。おれは医者ではないので筋肉のことは専門家に学ぶといい。

 以上だ。

参考文献

  • 週プレNEWS(2023)「「このままでは新作を出せなくなるかも...」『ストリートファイター6』プロデューサーが語る大胆な方針転換の理由」,<https://wpb.shueisha.co.jp/news/entertainment/2023/06/11/119705/>(参照2023-6-11)

  • ryo_redcyclone(2023)「必殺技の入力が難しいとされている初代ストリートファイターですが、バトルハブゲーセンは236レバガチャとP連打で簡単に波動拳出ました。(調整されてる?) 初めて1コインクリアしました。あと、倒したサガットの眼帯が取れるの、今になって気づきました。#スト」<https://twitter.com/ryo_redcyclone/status/1667753959187161088?t=9h2DkN56_WX-PHkbH8Y-xQ&s=19>(参照2023-6-11)

  • 高橋名人オフィシャルブログ「16連射のつぶやき」(2020)「「ファミコン体操」」,<https://ameblo.jp/meijin16shot/entry-12613690267.html>(参照2023-6-8)

  • Peing -質問箱-(2022)「高橋名人のケンコー体操って覚えてますか? あれは名人考案なのでしょうか?」,<https://peing.net/ja/q/92be6d11-9332-4da1-b29b-2daec2985fef?s=03>(参照2023-6-9)

  • 小山 混(2020)『脳イキイキ! 手あそび指あそび』主婦の友社.(参照2023-6-10)

  • 神奈川県平塚市介護予防チャンネル(2021)「①織り姫とやってみよう!!ちょい脳トレ・指折り体操編」,<https://youtu.be/iRK6pKRMito>(参照2023-6-13)

  • KBC図鑑(2019)「手遊び動画を紹介!『グーパー体操』」,<https://kbc-zukan.com/articles/219>(参照2023-6-8)

  • レッドブル(2022)「【ゲーマー必読!】指・手・手首用エクササイズ&ストレッチ」,<https://www.redbull.com/jp-ja/hand-exercises-for-gamers>(参照2023-6-10)

  • Bauhütte®(2018)「肩こり、頭痛を解消!ゲームや仕事中でも出来る3つの簡単ストレッチ」,<https://www.bauhutte.jp/bauhutte-life/stiff-shoulder/>(参照2023-6-10)

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