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2019プラハ旅行記~その6・回収編~

あっという間に、丸一日遊べるのも最後の日になってしまった。朝からこんなにたくさん食べるのも今日が……いやそれはまだ明日がある。でも例によってこの日もたくさん食べた。朝食バイキング、毎日そこまで大きな変化があるわけではないけれど温菜は日替わりだったし、パンやチーズ、肉製品は種類が多いのでそう簡単にはコンプリートできない。少なくとも我々は滞在中まったく飽きることなく楽しめた。
しかしここで毎朝しっかり食べすぎたおかげでちっとも外食しなかったと言えないこともないので、それはそれでちょっともったいなかったような気もするね……。まあでも最初の2日で訪れたお店が自分の中ではマストだったので、最低限の楽しみは味わったということで。

この日の午前中、わたしは勤め先のプラハ事務所にちょっと顔を出すことになっていた。さすがに両親を連れていくわけにもいかなかったので、ほんの数時間ではあるが最初で最後の別行動が決定。お昼に待ち合わせすることにしたので、せっかくだからペトシーン公園を散歩するのはどうかと事前に提案していた。この日は天気も良く気温も上がって絶好のお散歩日和。我ながら良い提案をした。

両親を先に部屋から送り出し、わたしものんびり行動開始。まだ時間があったので、軍団橋の途中から射撃島へ降りてみた。実はここ降りたことなかったんだよね。

降りてみたら上から眺める以上に緑がこんもりとしていて、日差しが遮られて涼しい風がさらりと吹いてくる。公園のようになっている島内には観光客もほとんどおらず、もしかしてここ、すごくいい憩いの場なのでは……。
日陰のベンチに腰掛け、キラキラ輝くVltavaの水面と対岸の国民劇場を眺めながらしばらくぼーっとしていた。東京から遠く離れたプラハで、時差のあるTwitterのタイムラインを眺めたりソシャゲにログインしてみたり。はるばるチェコまで来て何やってんだって思われそうだけど、なんかすごく贅沢な時間だったな。やっぱり根っこが信濃川と久慈川の民なので川が好き。

その後ゆっくり島を一周し、この島からじゃないと撮れないようなアングルでカレル橋の写真を撮って満足しまた軍団橋に戻って事務所へ向かった。中心部からちょっとした散歩レベルで辿り着けたので、つくづくいい場所にあるな……。
建物の構造がわからなくて、インターホンで通話した後もどうすればいいかわからず途方に暮れていたらわざわざお迎えが来てくれた。今回の旅行にあたって軽い気持ちで「おすすめのお店とかあったら教えて」と尋ねたら超大作のメールを送ってくれたスタッフにも直接感謝の意を示すことができたので何より。
こっちは日本からたくさん持ってきたお菓子を配って終わりくらいの気持ちだったのに、わりと普通に仕事の話が始まったのは完全に準備不足だったのでブロークンなEnglishがさらにブロークンに……。最終的にお互いの住んでいるところをGoogle Map上で示し合って終わった。世界中どこでも雑談の種は似たようなものなのである。
ちなみに持って行ったお菓子、どれが人気だったか後日尋ねてみたらエリーゼ抹茶味がチャンピオンだったらしい。あの手のウエハース菓子は向こうにもあるから馴染みやすいだろうし、海外での抹茶味人気は本当に鉄板オブ鉄板なんだな~と実感。EU圏でも抹茶キットカットが発売されたと聞いて今回は選択肢から外したのだけど、まだ全然一般的ではないらしいからこっちでもよかったな……。次の機会があればだな!

事務所を後にして、ケーブルカー乗り場の近くで両親と合流。大まかな場所と時間しか決めておらず向こうはほぼ通信手段を持っていないも同然だったが意外となんとかなってよかった。なんとかならなかったらどうする気だったのかとか考えてはいけない。まあとにかく無事ベンチに両親が座っているのを見つけたので階段を駆け上がったら、ケーブルカーに並ぶ人々の列がどえらいことになっていた。なんでも両親が乗る前はここまでじゃなかったとか。綺麗な花壇を写真に収めるついでに、地獄のような行列も収めておいた。

両親はペトシーン公園を散歩しただけでなく、日本大使館を見てきて広報文化センターにまで立ち寄ったらしい。前の晩に大使館の場所を何気なしに教えたのは自分だが、そんなセンターがあるとは知らなかった。聞けば大使館の近くにまた別の日本国旗を掲げた建物があり、なんだろうね~と近付いていったら受付のおばさんが気を利かして入れてくれたのだそう。中では日本語のできるスタッフさんがずいぶんあれこれ説明してくれたらしいのだが、父が謎の塩対応で母はハラハラしたらしいw
肝心のペトシーン公園は展望塔のエレベーターに乗るのにかなり待ったものの、やはり街で一番高いところから見渡すプラハの街はとてもよかったとのこと。帰りはケーブルカーに乗らず公園内を散歩しながら下ってきたらしい。えらいなー(普通に行き帰りケーブルカー乗った人)。

プラハにはベトナム料理店が多い。日本食レストランはリアルガチにせよパチモンにせよたいてい観光地価格よりさらにお値段が張るものだが、ベトナム料理店はプラハ中心の好立地にあってもリーズナブルで美味しいお店が多い。アジア系の味が恋しくなったらベトナム料理店で食べるのがいいんだよー、なんて話をしていたら両親がずいぶんその気になってしまい、別にそんな食べ飽きるほどチェコ料理を食べたわけでもないのにアジアの味を求めに行くこととなった。いやいいんだけどね! 美味しいしね!

Rememberは6年前の拠点近くにあるのだが、自分で見つけたわけではなく同時期に留学していた大学の友人が教えてくれた。ちょうどランチタイムということもありお店はなかなかの繁盛ぶり。「ここから右に向かって2番目のドアから入って! そっちもうちの店!」とホールのお兄さんに言われたので移動してドアを開けると、レジの裏からさっきのお兄さんが出てきた。裏つながっとるんかい!
フォー2種とチキンライス、生春巻きを注文したのだが完全に頼みすぎだったな……。写真からもわかるようにとにかく量が多い。美味しいんだけどほんとにとにかく量が多い(大事なことなので2回言いました)。食べ盛りなんてとっくに過ぎ去った我々には若干どころかだいぶキツかったけど、でもやっぱりアジア系の料理、ダシがうまい。フォーのスープを一口飲んだだけで安心感がハンパない。どうにかこうにか完食……くるしい……でもおいしかったし何よりお店のサービスが良かったと感じたので、チップを多めに乗せてお会計。ごちそうさまでした。

腹ごなしを兼ねて、スーパーお土産購入タイムのスタート。母の誕生石がガーネットなので、名物チェコガーネットのアクセサリーをプレゼントしたいなと思いまずはTurnovへ。ガイドブックにも載っている有名店だけど、小さな石をちりばめたシンプルでごてごてしていないデザインのものが多く、いわゆる宝石のわりにはお財布にも優しめで選びやすい。ショーケースを眺める母を眺めていたら父が「ガーネットって何月の誕生石だっけ……」とか聞いてきたので「1月! そういうこと!」と返したらようやくわざわざこの店にガーネットを買いに来た理由がわかったらしく、「じゃあここはお父さんが」とさらっとお支払いしてくれた。やるやん。
母が選んだネックレスはこの春の新商品だったらしい。落ち着いたかわいらしさで、合わせる服も選ばなそう。いい買い物ができてよかった。

ティーン教会の裏、ウンゲルトへ移動してチェコのコスメブランドBotanicusのお店へ。日本にも数店舗展開していて買えるっちゃ買えるんだけど、こういう場合のあるあるで日本だとこっちの3倍くらい高い。そして日本では販売されていない商品もあると聞いたので、せっかくだからそれを買おう! となった。
店内は中国人団体客がたくさんいて、いわゆる「爆買い対応店」になっていた。棚に並んでいる在庫の数が半端ないし、店員さんがチェコではありえないくらいテキパキしている。そして極めつけは、ボーッと店内を見ていただけの我々のところにまでスタッフのお姉さんがやってきて、日本語の商品解説とレジで使える割引クーポンを渡してくれた。もう一回言うけどこんなサービス普通チェコではありえないからね!?
レジはそこそこ並んでいたけど、オペレーションがきちんとしているのでさほど待たなかった。もはや逆に信じられない光景。お世話になっている人とかに渡すお土産としてちょうどよかったので、日本では売っていないロープ付きで吊るせる石鹸(便利)を我々比ではたくさん買ったのだけど周りの中国人に比べれば全然たいしたことなかったなw
とはいえそこそこ買ったため、免税適用額に到達。一度のお会計につき、日本円でだいたい1万円以上買うと免税。商品を購入したレシートとは別に免税手続き用のレシートと封筒をもらう。さっき対応してくれた日本語を話せるお姉さんが「この部分に必要事項を記入して、空港の免税カウンターで手続きしてくださいね」と教えてくれた。

天気が良いので旧市街広場も人でいっぱい。大道芸の人たちも稼ぎ時なのでそこかしこでいろいろやっていた。
そういえばイースターの市はもうとっくに跡形もないね。

両親が小さな文房具などのお土産も欲しがっていたので、これまたガイドブックの鉄板であるBlue Prahaへ。あまりにも有名店なので混んでいるかと思いきや、ほぼ我々の貸し切り状態。冷蔵庫やホワイトボードなんかに貼るマグネットが大好きな両親は、プラハの建物をデザインしたマグネットが気に入ったようでたくさん選んでいた。他にもふせんやらメモパッドやら、こまごましたお土産を買ったらこっちでも免税適用額に。Botanicusとは違う会社の必要書類だったけど、やることはおんなじっぽかったので一安心。

このあたりで荷物がすっかり重くなってしまったので、ホテルに戻って荷物を下ろしがてら一服。旧市街広場方面からまっすぐ帰ったことがなかったので、母がいまさら「こんなに近かったのね!? 便利~」と驚いていて面白かった。確かに便利。

身軽になって再度お土産調達の旅に出発。母は昔からビーズアクセが好きなので、Národní沿いのファサードの中にある(わかりにくい)これまた有名なビーズ店へ。お店のおじさんがめっちゃ日本語上手で、良いのか悪いのかわからんがとにかく日本人御用達感がすごかった。アンティークのチェコビーズを扱っていることで有名なお店なので、実際ビーズやってる日本人がかなり買い付けにくるらしい。素材となるビーズだけではなく完成品のアクセサリーもいろいろと扱っていて、かわいいブレスレットがたくさん売っていたので妹のためにひとつ選んだ。

TESCOに向かうついでに、その向かいにある本屋さんに立ち寄る。大学生の時に四谷の「だあしゑんか」でふと手に取った小さなきのこ図鑑のことが今も忘れられなくて、なんかいいきのこ図鑑はないだろうか……と思って本屋に寄ったのだけれどそもそもきのこ図鑑が見つからず。時間がそんなに取れない中で探すにはちょっと下調べ不足だったなと反省。1日ウロウロできるんだったらいけたかもねw
この本屋さんは奥が古書店になっていて、父は古いレコードの品ぞろえがいたく気に入ったらしくしばらく眺めていた。写真は日本のマンガコーナーに並んでいたエマ。
さらに、両親はミュシャのカレンダーを見つけて大喜び。ミュシャ美術館のミュージアムショップは正直イマイチだったので、まさかここで見つかるとは。大判で美しいカレンダーを2種類購入していた。

お土産フィナーレはTESCO。もうどんだけTESCO好きなの。まず自分とうちの人用に日本だとなかなか飲めないKozelとGambrinusを選び、VitanaやMaggiのスープの素を大量にカゴへ。お湯を入れるだけのインスタントと違い、これらは鍋で10分くらい煮る必要があるのだが日本にはない味がして好きなのだ。前回もそれなりに買ったけど全然足りなかったので、心の赴くままにどっさり購入。気が付いたらレバー団子のスープばっかりになってた。
さらに、会社へのお土産用にBohemiaのTyčinky小パックを購入。もういい加減スパ・ワッフルには飽きた雰囲気を感じていたので、そういうやつじゃなくてチェコっぽいやつ……と考えた結果がコレ。3種類買ってったけどそこそこ好評だったのでまあ良し。
加工肉製品とか持って帰れたらそれこそサラミやハムを大量に購入するところだが、その類のものは基本的にダメなので仕方ない。両親もジャムやマスタードなど、「税関で引っかからず日本で買うと高いもの」をあれこれ選んでいた。

怒涛のお土産購入タイムを全行程終了し、ホテルに戻って最後の部屋ディナー。さっきBohemia製品がいっぱいあるところにいたらいつの間にか母がカゴに入れていたポテチも開けてのんびり。ポテチはどうしてこんなに美味しいのかな? そしてこっちのポテチはやはり芋が違う気がする。
写真は、買ってきたパンとチーズ、サラミとハムでサンドイッチを作る父。明日のお弁当にするらしい。ほんとこの人は世界のどこに行ってもやること変わらんなあ(お前に言われたくはない)。

そしてこの日の、というかこの旅行のクライマックス。
ルドルフィヌムのドヴォルザーク・ホールで聴くチェコ・フィルハーモニーである。
・ドヴォルザーク「スラヴ舞曲 Op.46」
・ドヴォルザーク「チェロと管弦楽のためのロンド Op.94」
・ヤナーチェク「ラシュスコ舞曲(抜粋)」
・ブラームス「ハンガリー舞曲(抜粋)」
・ボロディン「だったん人の踊り(オペラ「イーゴリ公」より)」
なんとまあシロウトにもやさしく、かつ「チェコ・フィル」的なものを感じられるプログラムであることか。両親を連れて行くには最適すぎるし普通にわたしも楽しいわこんなの。巡り合わせに感謝……
この演目はワールドプレミアだったので、ロビーでは関係者っぽい人たちが談笑している姿を多く見かけた。開演前や休憩中にはみんなラウンジでお酒を嗜みつつChlebíček(オープンサンド)を食べている。いいな~とは思ったものの、「使い終わった食器はどうするのか」とか「食べきれなかったらどうするのか」とかの作法がわからなかったので、わ~ほんとにそんな感じなんだ~……と眺めるだけで終わってしまった。こういう情報って意外と地球の歩き方にすら載ってないんだよな……次の機会にはがんばって調べて臨みたい。というかアレか、そういう筋の人に聞けば一発か……。

国内でそんなにオーケストラのコンサートを観に行っているわけではないのであまりえらそうなことは語れないが、やはりコンサートホールそのものの佇まいから漂う「非日常感」が桁違いだなと思う。なんだろうね。主にシャンデリアのせいかね。
2階席ということもありチケットはなんと1人4,000円くらいしかしなかったのだけれど、劇場の構造的にステージ全体を見たいなら寧ろ2階席の方が視界が確保されて見やすい。ちなみに柱の影になる席はちゃんと座席表にもそう書いてあって、露骨にチケットの値段が下がる。
そして音が本当に良かった……。ホールの鳴りが全然違う。今までオーケストラの演奏を聴いて「あのパートがよかった」とか「あのパートがうまかった」とか言ってたのはいろんな意味でレベルの低い感想に過ぎなかったんだということがわかった。本当にうまい演奏は、すべてのパートが混然一体となってオーケストラそれ自体がひとつの生き物みたいに感じるんだなって。両親と3人、終わってからずっと「本物は違う」「違うわ」「だったん人の踊りを永遠に聴いていたかった」みたいなことしか言わなかった。
指揮のアルトリヒテルはわりとはっちゃけるところがあったので、人・演目によって好みの別れるところはあると思うけど……とにかく「だったん人の踊り」は今まで聴いたどの演奏よりも自分の解釈と合致してて最高だった。
音楽を好きでよかったと思う、忘れられないような時間が人生に幾度となく訪れてきたけど、この夜のことも一生の宝物だと思う。

高揚感でふわふわしたままホテルに戻り、最後の酒盛り。もう明日にはここを離れるのだと思うとさみしかったけれど、やり尽くしたなという達成感に包まれてぐっすり眠った。

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