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2019プラハ旅行記~その1・出国編~

夜遅くから少し降っていた雨は、朝になる頃には止んでいた。前回と違って1週間しかない滞在で、スーツケースの中身もずいぶん余裕があるような気がしていたが、いざファスナーを閉めてみると意外とずっしり来た。持ち方に気を付けないと変なところが筋肉痛になりそうだ、と思いながら自宅を出発。ゴールデンウィーク初日早朝の電車はまだ人もそこまで多くなく、両親との待ち合わせ場所にはスムーズに到着できた。上野駅の構造はいまだによくわかっていないので、事前に構内図をよ~く確認しておいたのが大正解だった。新幹線の乗り換え改札で切符を取り損ねてさっそく駅員さんのお世話になった父は、この旅行での要注意人物としてわたしの脳内にしっかりマークされた。

乗り込んだスカイライナーの車両は半分以上が空席だった。わたしのように複数予約しておいて流す人が多いのだろうか。それにしてもスカイライナーは座席の足元が広くて快適である。遠い遠いと感じる成田にも1時間ちょっとで着いてしまうのだからすごい。はやい。

あっという間に6年ぶりの成田空港である。とりあえずエスカレーターを乗り継いで出発ロビーへと向かったが、エスカレーターに乗っているだけで6年前よりはるかに空港内が発展している雰囲気を感じる。6年前はぜったいこんなんじゃなかった!
モスクワ乗り継ぎのアエロフロート、という不安要素にちょっとでも保険をかけるべく、まずはバゲージラッピングへ。タッチパネル式の案内板には「北ウイングにもあるよ~」と表示されたのに、結局南ウイングにしかなかった怒りはどこにぶつけたらいいのだろうか!? 最初から事前に調べておいた公式サイトの情報だけを信じておけばよかった……。肝心のバゲージラッピングはいたってスムーズにぐるぐるにしてもらえた。1000円で安心が買えるなら安いもんだぜ! と思っていたが、実際やっといてよかったので(後述)イマイチ信用しきれないエアラインで乗り継ぎする民みんなにおすすめしたい。成田空港のバゲージラッピングはちゃんとスーツケースの持ち手部分をきれいにカットして調整してくれるところに日本のサービスを感じる。
海外用Wi-Fiも無事受け取って手荷物にIN。思ったより軽いし、専用ポーチにコンパクトにまとまっているので取り扱いも楽。わたしの荷物の一眼レフカメラのほうがよっぽど重いしまとまっていない(カメラバッグを買え)。

アエロフロートはオンラインチェックインができるはずで、アプリまでダウンロードして準備したのだが……いざ時間になってチェックインしようとしても何故か座席位置が選べず、そうなるともうそこから進むこともできないので結局諦めてしまった。仕方なく空港の自動チェックイン機でチェックインして、手荷物ドロップオフカウンターへ。周辺のカウンターの列がすごいことになっていてどこに並んだらいいのかちょっと見失ったが、アエロフロートのお姉さんが機内持ち込み手荷物にタグをつけると同時にカウンターに案内してくれた。カウンターのお姉さんは航空券にクレームタグを貼って渡してくれて、いやこれ当たり前なのかもしれないけれど、6年前のエールフランスはパスポートの裏表紙にクレームタグ貼っつけてきたせいで今でもそこ粘着テープでガビガビなんだよな……。あと6年前のエールフランスはこんな厚紙のちゃんとした航空券くれなかったような気がする。定かではないが。

なぜか緊張してしまう手荷物検査。何を別のトレイに載せないといけないんだ? カバンから出す必要があるものは? さんざん調べてもいざ検査場に行くと妙に焦ってしまうので、ベルトコンベアーに載せる前にもっと落ち着いて荷物を整理できる場所があればいいのに……といつも思う。
そして出国審査は顔認証が鬼門と化した。パスポートの写真と今のわたしの前髪が違いすぎるせいなのか、見事にひっかかる。そしてひっかかっても係の人はあまりすぐには助けてくれず、やや放置されるといういたたまれなさMAXボルテージ!! でもそのままもう一度認証にチャレンジしたらなぜか成功したんだけど、果たしてシステム的にはそれでいいんだろうか……?
渡航先で何があるかわからないので、出国スタンプは押してもらう。記念としてもやっぱり欲しいし。成田の係員さんは何も言わなくても整然とスタンプを押してくれるが、そんなホスピタリティともあと数時間でお別れなのである。

出国手続き後のエリアにも新しいお店がたくさんできていて、ものすごく便利になっていた。スタバでコーヒー買って一服しながら搭乗時刻までのんびり待つなんて、6年前にはありえない優雅さだぜ……。感慨に浸りながらのんびりしていたら、いつの間にか乗る便が30分のディレイ。搭乗待ちの列がさっきのチェックインカウンター周辺並みにすごいことになっていたのでとりあえず並んでおく。アエロフロートのお姉さんが列を回って航空券のチェックをしていたので、チェックイン時に離れてしまった席を一緒にできないか尋ねてみたがやはり満席で難しいとのこと。まああれだ、これから嫌でも1週間ずーっと一緒に過ごすわけだから最後の一人で過ごす時間だと思えば……と微妙な納得の仕方をした。

航空券は全行程エコノミーで手配したはずだったのだが、購入手続き後にeチケットを確認してみるといつの間にか成田→モスクワ間のみコンフォートになっていた。いろんな航空会社で増えてるらしい、いわゆるプレミアム・エコノミーの席種だ。アエロフロートのコンフォートはエコノミーより足元が広めで、後ろの席に影響しないタイプのリクライニングとフットレストがついている。機内食もビジネスクラスに準じていて2食分のメニューがあらかじめ配られるという充実っぷり。超快適! なはずだったのだが、コンフォートのシートはエコノミーよりやや座面の位置が高くなっているせいで、わたしの足の長さでは座ると微妙に足が床につかない。そして肝心の足置きが不安定&小さいのに加え、フットレストも結局水平位置までは持ってこれないのでほぼレストできず、9時間のフライトで膝の裏あたりに疲れが溜まって痛くなってしまった。帰りのエコノミーではぜんぜんそんなことなく快適に過ごせたので、これは完全に貧乏が身体に染み付いている……。ややショックw

シートが身体に合わなかったこと以外は快適なフライトだった。窓側の席でずっと景色を眺められたのも楽しかったし、隣に乗り合わせた人ともずいぶん話が弾んでしまった。「わりとしょっちゅう海外行くんですけど、普段こんなに隣の人と喋ったりしないのになあ」とその方がしきりに不思議がっているのがなんだか面白かった。あの人も良いGWを過ごされていたらいいな。
ちょうどフライトの残り時間が半分くらいになったところで、両親とトイレ前で集合した。正確に言うと両親が同時にトイレに立つのが見えたので、わたしも合流してしばし3人で喋ったという流れだ。全員それぞれに隣り合わせた人とあれこれ喋っていたのには笑った。コミュニケーションおばけの一族……。

検索結果に出てきたシェレメーチエヴォ空港、というのがどこのことかすぐにはわからなかった。というかそもそも、モスクワには2つ空港があるということを今回初めて知った。Wikipediaによると、かつてはハチャメチャ治安が悪く各国の航空会社が乗り入れを拒否していたらしい。今回は新しいターミナルしか使用しなかったので過去のこととはいえそんなに評判が悪かったとは思えなかった。まあ、じゃあ抜群にサービスが良くて使いやすいかって言われたらそんなことはないんだけれど……。
乗り継ぎなので、空港に到着すると再度パスポートコントロールと手荷物検査を受けることになる。この列がグダグダになりがちという情報を事前に調べていたので、いざ行ってみたら想像していたよりはちゃんと列を成していたので驚いた。しかし係のお姉さんがカウンターに斜めに寄りかかりながらやる気のない感じで乗り継ぎを急ぐ人の呼び出しをしていたり、航空券にスタンプを押す係のお兄さんも手荷物検査を待つ人がグチャッと待っているゾーンに何故か単身突入してひとりひとりにスタンプを押そうとしていたり(その後諦めていた)、グダグダはグダグダである。それにしてもここでもっと時間がかかると思っていたので、思いのほかスムーズに手続きが完了したことには心からほっとした。

当初はターミナルDからターミナルEへの乗り継ぎ予定だったのだが、いざ電光掲示板で確認してみるとターミナルF、しかもその中でも本当に端っこのゲートになっていた。ターミナルやゲートの変更はよくあることとはいえ、文字通り空港の端から端まで歩くことになってしまったのでちょっと大変だった。乗り継ぎ時間に余裕があってよかった……。
クレジットカードが使える自動販売機の操作手順がよくわからず格闘したり、読めないキリル文字の看板をぼーっと眺めたりしつつ搭乗時刻を待つ。成田→モスクワ便にはあんなにいっぱいいた日本人も、ここまで来るとほとんど見かけない。パリでプラハ行きの便を待っている時もそうだったな、なんて懐かしい気持ちになった。それでも乗客はそこそこ多く、例によって乗り込むとすぐにタキシングが開始した。そういうもんなんだな。こっちの機体には機内エンタメのシステムがないので、CAさんが通路に立ってシートベルトの締め方や緊急時の対応を実演してくれる。でもぶっちゃけシートベルトして座席に座ってるとよく見えないよね!

この翻訳がやばい2019。どこの機械翻訳なんだ……

モスクワからプラハは3時間もかからないので、先ほどまでのフライトと比べると本当にあっという間だ。夕暮れのモスクワを出発して、プラハの上空で高度を下げ始めるころにはすっかり日が沈んでいた。夜景を眺めながら両親にあれがどこで、これがどこで、と説明するだけで胸が躍る。6年ぶりに来ることができた。長旅の疲れも忘れるほどウッキウキだった。
空港に到着して、入国審査の列を見るまでは。

最初は甘く見ていた。到着便がたまたま多かったのだろう、今だけはちょっと人がたくさんいるけど並んでればすぐだろう……。そんな楽観的な見通しをわずか10分くらいで後悔することになった。列が全然進まない。ぜんっぜん、進まない。どういうこと? 本当にゲートに審査官いる? なんでこんなに遅々として進まないんだ??
よーく観察していると、結構な割合で「妙に審査に時間がかかり、審査官からあれこれ聞かれている人」がいるのだ。いやまあ、昨今のヨーロッパ情勢を考えれば日本よりはるかに入国審査が厳しいっていうのはわかる。それは仕方ない。だがしかしこの長蛇の列を前にしても審査官は鋼鉄の意志でもってのんびり(めっちゃオブラートに包んだ表現です)お仕事をされているので、列の進みはただひたすら遅くなる。というか止まってる。応援? ないよ! そして良くも悪くも、単純な見た目からでは時間の掛かる人を判別できない……。どの列に並ぶべきか若干の選択ミスもあり、ようやく次が自分の番というところまで来た時には並んでから1時間近く経過していた。嘘やん。
そしてこれがまた悔しいことに、我々の入国審査は質問すらされず文字通り一瞬で終わったんだな~~~~~!!!!! なんだったの今まで並んだ時間は!! せめて質問のひとつくらいされたらこっちだって仕方ないよねって気持ちにもなれるのに!! こんなに早く終わるんだったらEUパスポートと同じように優遇レーン作ってほしい(これが本音)。

さて、ようやく地獄の入国審査から解放されて預け荷物を受け取り、ぐるぐるにしてもらったラッピングが結構傷どころか穴が開いてボロボロになっていることに驚いたりしつつ急いで到着ロビーに向かった。お忘れかもしれませんがね、出国前から予約しているんだよ。空港送迎を。ね?(前回記事参照)

いなかったよね☆

どこを探してもいない、とわかった瞬間の絶望を何と説明したらいいだろうか……。ちなみに入国審査に並んでいる段階で業者とは連絡を取ろうとしていたのだが、メッセージを送れど送れど返信がない。この時点で嫌な予感はしていたが、本当にいない。どうする? 6年前は普通にバスとメトロ乗り継いで移動したけど、今回は荷物も多い。プラハの公共交通はだいぶ遅くまでやってるとはいえ、もう夜10時を回っている。石畳の道をスーツケース引きずりながら歩くのは嫌だな……。猛スピードで考えを巡らせながら泣きそうになった。

しかしここでわたしの度胸と火事場のバカEnglish(スーパーブロークン仕様)に火が付いた!!
こっちから連絡してダメなら同じ会社の人に連絡してもらえばええんや!!

大手の会社を選んだことが幸いし、ロビーには同じ会社の運転手さんが他にもちらほらお客さんを待っていた。お2人で談笑中のお兄さんたちに意を決して話しかけ、予約画面を見せつつ事情を説明。あっという間にお兄さんが電話で再配車を手配してくれた。勇気出してよかった!!
「あなたの担当じゃないのに本当にありがとう(意訳)」と伝えたら「これも仕事のうちだからね☆(超意訳)」とイケメンな返しをされた。イケメンか。ありがとうイケメン。
ようやっとわたしの名前が書かれたボードを持った運転手さんが迎えに来てくれた時は心からほっとした……。左ハンドル車の助手席なんて初めて乗ったので、それはそれでなんかそわそわしたけどw

一連のトラブルですっかり疲れ果てていたけれど、それでもプラハの街を車で走るだけでワクワクする。メトロのマークが見えただけではしゃぐ自分をイッタイなあ! とは思うものの、6年ぶりでテンションが上がっているから許してくれ! という感じでもある。運転手さんとの会話の中でチェコ語の発音を褒めてもらえたことにも大変気を良くする単純な自分。お世辞でもうれしいものはうれしい。
ホテルに到着すると、かつてThe King's Singersに在籍していたカウンターテナーのDavidにちょっと似てるおじさまが我々を迎えてくれた。到着が遅れることになって空港から電話を入れた時も「ぜんぜん大丈夫! 気を付けておいでね!(意訳)」とやさしく対応してくれたり、スーパーももう閉まっちゃったし飲み水どうしようかなーとかやっていた我々に「水道水ふつうに飲めるよ」と教えてくれたりとこのおじさまには何かとお世話になったのでした。
ちなみに水道水、「アエロフロート機内で配られた水よりはおいしかった(by母)」という感じで、とりたてておいしくはないけど別段体調を崩したりはしなかった。硬水はとにかく受け付けない! って人じゃなければおそらく大丈夫。

今回宿泊したホテルの部屋はメゾネットタイプで、寝室・トイレ&バスルームがそれぞれの階に1つずつある。いびきのうるさい父を隔離できるというのは、我々にとってこの上ないメリットだ。ひどいと夜あまり眠れないこともあるという母だが、滞在中はよく眠れたようでよかった。ちなみにわたしは今回母と一緒に寝たが、父の真横でも爆睡できる。
へとへとではあったが、スーツケースに詰めてきた荷物を必要なところに配置していく巣作り作業はやはり楽しい。父は早々にテレビ前に落ち着き、持ってきたウイスキーをさっそく空け、「明日補充しないとなあ」などとのたまっていた。家かよ。あとほんとテレビっ子な。

てなわけで、最後の最後にバタバタしたもののなんとか到着。身体は疲れているのに頭だけがやたらと冴えてうまく眠ることができなかったが、どうにか両親と一緒にここに来ることができたという満足感が心地よかった。

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