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IBMとAWSがAIモデルのリスク管理で協業

この記事は、2024年5月30日の sdxcentral の以下の記事を意訳したものです。

Why IBM thinks AWS is the right place to scale responsible AI
IBMがAWSをAIのスケーリングに最適な場所と考える理由


IBMがAWSをAIのスケーリングに最適な場所と考える理由

IBMが先週開催したThink Conferenceで、Amazon Web Services(以下、AWS)と協力し、Watsonx AIおよびデータプラットフォームの全製品群をAWSサービスと統合して、責任ある人工知能(AI)のスケーリングを図ることを発表しました。
ChatGPTの発表以来、AIは大きな話題となっており、ほぼすべての企業が何らかの形でAIに注目していますが、AIの大きな懸念の一つは、それが正確かつ責任を持って使用されることを保証することです。

IBMは、包括的なガバナンスを備えたオープンなハイブリッドモデルを通じて、企業でのAIのスケーラブルな展開を促進することを目指しています。両社は、IBM Watsonx.governanceとAmazon SageMakerを統合する予定です。このサービスは、機械学習および生成AIモデルの構築、トレーニング、展開のための完全に管理されたインフラストラクチャ、ツール、ワークフローを提供するように設計されています。

IBM、AWS統合の利点について

この統合により、Amazon SageMakerおよびWatsonxの顧客はモデルのリスクを管理し、EU AI法のような最近の規制に関連するコンプライアンス要件を満たすことができるようになります。
また、AWSマーケットプレイスでのWatsonxプラットフォームの提供が完了し、すでに顧客管理オプションとして提供されているIBM Watsonx.aiおよびWatsonx.dataが補完されます。

発表の中で、IBMのデータおよびAI製品管理のジェネラルマネージャーであるRitika Gunnarは、同社のオープンAIおよびハイブリッドクラウド戦略が、企業が自社のデータを使用してAIから価値を引き出すのを支援することを目指していると述べました。

「Watsonx.governanceは、AIソリューションを自動化された方法で管理および統治する能力を企業に提供し、企業がより多くのAI機能を導入し、世界中の進化するAI規制に対応する際に、独自のニーズに合わせてソリューションをカスタマイズできるようにします。」と彼女は述べました。
「AWSとの拡大された関係は、IBMの先進的なAIガバナンスをAmazon SageMakerと組み合わせ、顧客に柔軟性、スケーラビリティ、および他のAWSサービスとの統合を提供します。」

ワークフローの最適化とAI展開のスピードアップ

6月に利用可能になると、IBMはWatsonx.governanceとAmazon SageMakerがクライアントのワークフローを最適化し、AIプロジェクトの展開をスピードアップし、複雑なIT環境でAIを管理するのに役立つと述べました。
クライアントは、複数の利害関係者を巻き込んだリスク評価とモデル承認ワークフローをカスタマイズし監視することができ、WatsonxとAmazon SageMakerの両方で監査トレイルを確保できます。

この取引は、生成AIソリューションを共通の顧客に提供することを意図しており、すべての適切なポイントを押さえています。
Amazon SageMakerとWatsonx.governanceの強みを組み合わせることで、企業が生成AIを効果的かつ安全に活用し、ワークフローを改善し、最終的により大きな価値を提供できるようにします。」とAWSのAmazon SageMakerのジェネラルマネージャーであるAnkur Mehrotraは述べました。
「お客様に対して意味のあるAIソリューションを共に革新し続けることを楽しみにしています。」

ガバナンスは課題

発表の中で、AWSおよびIBMのビジネスパートナーであるCleanSlate Technology GroupのCEO、Chris Konowは、このパートナーシップを支持しました。

生成AIの急速な進展と増大するガバナンスおよび規制の懸念のバランスを取ることは、すべての組織が直面する繊細な課題です。」と彼は述べました。
「AWS SageMakerの力とWatsonx.governanceをシームレスに組み合わせる能力は、AIプロジェクトの最も基盤となる層でガバナンスを支援するでしょう。」

GigaSpaces TechnologiesのCEOであるAdi Pazは、このパートナーシップがエンタープライズデータのクエリを求める人々にとって有益であると考えています。
「AWS上のIBM Watsonx.governanceは、Amazon SageMakerの力を活用できる適切なAIガバナンス機能を提供します。」と彼は発表で述べました。
「これらの技術が一緒になって、私たちのRetrieval Augmented Generation Solution、GigaSpaces eraのための非常に信頼できる基盤を作り出します。」

最終的な考え

AIは風景を一変させました。AWSはあらゆる角度からの競争にもかかわらず、クラウドの王者であり続けています。クラウドスペースでの革新により、大きな競争優位性を持ちました。しかし、AIではそのクラウドでの優位性が直接的には訳されず、はるかに厳しい競争に直面しています。

AIは永遠に物事を変えました。したがって、AWSができる限り多くのパートナーシップを結ぶことが重要です。IBMは、AIの初期の時代に企業向けAIに焦点を当てていたため、早期に優位に立ちましたが、消費者中心の技術アプリケーションによって凌駕されました。AWSとIBMの両社には共通の目標があります:顧客の選択肢を最大化すること。ベンダーが顧客にとって最善のことを行うことは、通常成功につながります。

以上が、sdxcentral の記事の意訳になります。

記事の考察

IBMのWatson(ワトソン)は、かなり歴史が古く、おそらく2007年に、
IBM Research(研究所)が、「Jeopardy!」というゲームでチャンピオンと対戦できるコンピューター・システムを構築するという壮大な挑戦に取り組み始め、それからわずか4年後の2011年、「Watson」と名付けられたオープン・ドメインの質問応答システムが、全米で放映された「Jeopardy!」の2ゲームで、最高ランクの2人のプレイヤーに勝利したことで、一躍有名になったのがよく知られていることかと思います。

その後も、IBMワトソンは様々なソリューションを発表していましたが、正直なところ話題になるようなもの、皆さんの記憶に残っているものは殆どないと思います。

ChatGPTが脚光を浴びて「そういえばAIと言えば、IBMのワトソンは?」と思ったところ、IBMも2023年に生成AIと機械学習機能を備えたモデルのパートナーによる学習・調整・配布を可能にする watsonxプラットフォームを発表しています。せっかく2011年に先行してAIを進めていたのに関わらず、ChatGPTの二番煎じとなり、watsonxは大きな話題にもなっていませんでした。

しかしながら、ChatGPTを含め、他の多くのAIで今課題になっているのは、生成AIの急速な進展と、増大するガバナンスおよび規制のバランスの難しさです。

AI発達に従い、ヨーロッパではいち早くAI法が成立したように、今後はAI管理が非常に重要になってきます。

さらに、大規模言語モデル(LLM)をやみくもに活用すると、説明可能な出力が最終的に欠如してしまうリスクもあり、AIのライフサイクルを可視化も含めて、ガバナンスを効かせる必要が出てきています。

watsonx.governance

一日の長のあるIBMのワトソンは、これらのガバナンス(AI管理)をすでに備えており、すでに以下の機能を有しています。

  • 利用しているAIモデルの実態を把握するためのモデルインベントリ管理
    AIモデルがいつ作られたのか、学習データはどこにあるのか、検証データの精度、デプロイの情報、などを管理する。
    Amazon SageMaker、Azure Machine Learning、Watson Machine Learningなど各種ベンダーが提供するAIモデルを管理・監視。

  • 法規制・ルールの遵守度合いを可視化するリスクガバナンス
    個々のAIモデルにおいて、法規制や社内ルールとのギャップがどれだけあるのかというリスクを、一元的に管理する。
    モデルの承認ワークフローの仕組みも提供する。

  • AIの精度劣化などを持続的に調べる評価・モニタリング
    大規模言語モデル(LLM)の品質をモノタリングし、事前の定義と比べてどのくらいギャップがあるのかをスコアリングする

この watsonx.governance が最近脚光を得てきていたのですが、どうやら今回AWSと手を組むことになったようです。

watsonx の良いところは、様々なAIを選択できるところだったなのですが、今後AWS一本、AWS傾注にならないことを望みます。

いずれにしてもAI弱者連合、IBMの watsonx.governanceと AWSのAmazon SageMaker 統合が、ユーザにどれだけ支持されるのかは注目です。 

あと、AWSの生成AI「世界の果てまでイッテQ!」、、間違い「Amazon Q」も、やってみた系の話(いまいちだった話)しかないですが、こちらもユーザにどれだけ支持されるのかは注目ですね。



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