見出し画像

AKBラジオドラマ劇場風のシナリオを書いてみた。タイトルは「私たちの未来は絶対領域!」


《解説》
2011年から2013年までニッポン放送にて放送された「AKBラジオドラマ劇場」のコンペ用に書いたものです(もちろんボツ!)
週替わりテーマは「放課後」でした。
2013年に書いたものです。

《あらすじ》
高3のはるかは最近、親友で同じ美術部員のナツミの行動が気になっている。いっも一緒に下校していたのに、最近はひとりで下校してしまう。しかも何処かに寄り道している様だ。
ついにはるかは、ある日の放課後、ナツミを尾行することにしたのだが……

《人物》
○榊原はるか(18) 秋葉女子高校3年生で美術部員

○前島ナツミ(18) 同上     美術部部長 

○小田原 (20代半ば)  女性警察官

《本編》
はるかM「考えてみれば、あたしは中等部の頃からナツミの背中をいつも追  
 いかけていたと思う……ナツミ……キミは何処に行こうとしてるんだよ……」

 SE パトカーのサイレン音(F・O)
 SE 警察署内の軽い喧噪(F・I)
 SE 内線電話のコール音

小田原「(通話)はい、少年係です……あーはい……氏名、榊原はるか、学生    
 証で確認済みッす」

はるかM「おぅっと、そうでした。そんな感傷つーか『友を尋ねて三千里』
 モードに入ってる状態じゃぁ無かった……しっかりしろ、はるか!……しか
 し……三千里って何キロだ……いやッそうじゃ無い!……落ち着け!……そう 
 だこんなときはいつもクールな遠藤憲一を思い出せ……エンケンさまな
 ら、愛するエンケンさまなら、あの憂いに満ちた瞳でジッとわたしを見つ
 めてこういうだう……」

はるか「……そうですね、ザっと……一万二千キロ……じゃ、ないッすか……」

はるかM「ヤバい。聞かれた……タシの目の前にいる刑事のネーサンに聞
 かれた。アアッ……アタシをサメの意ような目でジッと見てる……やばい。
 まさか1万2千キロのヤバいブツをもったヤツとかに思われたら……
 ああ、どうしようエンケーン!」

警察無線『(遠くで)……秋葉原3より司令本部、先ほどの48事案、何か 
 叫びながら徘徊中の若い女であるが、該当すると思われる女性を外神田4 
 丁目3−3の路上にて発見、19時45分、これより職質、どうぞ』

はるか「え〜なんだか、お忙しそうすよォね」

小田原「(キッパリ)キミに関係ないよね」

はるか「はぁ、ハイ」

小田原「それよりまずは自分の事を心配しようか。キミは補導されたんだ
 よ。忘れてないよね? 榊原はるかさん」

はるか「あッ、はぁ……」

小田原「お母さんの携帯だけど、繋がらないみたいなの。伝言は残しておい
 たけど」

はるかM「……そりゃ、そうだろ今、ママはカルチャーセンターでアロハ踊
 ってる頃だもの……そして、やがて、母は束の間浸ったアロハの心など
 ぶっ飛んで激怒するだろう。携帯に残されたメッセージ聞いて怒り狂うだ
 ろう。ああ、へるぷみー、エンケン……」

小田原「でッ、お父さんは仙台に単身赴任中なんだね」

はるか「そうなんです。家には幼い小心者の弟のユウヤがきっと帰りの遅い
 アタシの事を心配しているんです! 弟のユウヤはまだ小学4年生なんで 
 す!」
小田原「……実は最初にご自宅に電話したんだけど、弟さんが電話に出て 
 ね…」

はるか「泣いてませんでしたか?ユウヤ!」

小田原「……ユウヤくんが言うには……」

はるか「? ……言うには」

小田原「お姉サンはずっと旅に出ているそうよ」

はるか「へッ……」

はるかM「また旅に出された。あのクソガキ、またアタシを旅立たせてくれ
 やがったよ。ついこの前までアタシの行く先々に金魚の排泄物みたいにベ
 ッチャリ着いて来て……いつの間にやらあんまりウザいから『しぇがらし
 かぁ』って一言、言って以来、親類縁者、友人、知人、彼氏……はいませ
 んでした。スミマセン見栄はりました。とにかく各方面に対してアタシは
 『旅に出ました』とアナウンスメントされてます。おいちゃん、オレまた
 旅に出されちゃったよ、って寅さんかよ」

はるか「あのぉ、刑事さん」

小田原「なに」

はるか「あたしは本当に旅人になった方が良いのでしょうか?」

小田原「……えーっと……その手の話しはまた今度にしようか」

はるかM「スルーかよ! その手ってどんな手だよ、間の手かよ、孫の手か
 よ、上手出し投げかよ! おーい、向こう正面の浅香山親方さーん。
 まったくコレだからさ、警察なんてさ!」

小田原「……まぁ、分からんでもないよ」

はるか「へっ?」

小田原「アタシの場合は齢の離れた妹だけど」

はるか「あら……北海道警にでも転属させられましたか?」

小田原「殉職、三回」

はるか「ほーっ」

小田原「合わせて6階級特進。この春には警視正になっちまったさ」

はるかM「エンケンさま、この刑事さん、案外と良いヒトかもしれませ
 ん……」

はるか「刑事さん」

小田原「なに?」

はるか「宙を睨みながら口元だけニタッとするのはとっても怖いからやめた
 方が良いと思います」

小田原「……アタシの事心配する前に自分の事を心配しようか? はるかさ
 ん」

はるかM「あッ、鮫の目に戻った」

小田原「で、アナタがさっきから言ってるナツミがどうしたこうしたってい
 うのを、もう一度、説明してくれるかな?」

はるか「だからですね、おまわりさん。とにかくアタシはナツミの事が心配
 で、心配で。嘘じゃないですよ」

小田原「(遮って)そのナツミさんって云うのは、高校のクラスメートなん 
 だよね」

はるか「ちなみに二人とも美術部なんです。以前は互いにデッサンしあっ 
 て、今日もキレイに仕上がってるねーなんてね、あ、デッサンのことです
 けど」 

小田原「(多少、イラッと)で、そのクラスメートの彼女を探しにこの秋葉
 原に来た……っていう事なのね?」

はるか「ただのクラスメートじゃ、なくて……」

小田原「じゃ、なくて?」

はるか「(軽く絶唱)し、親友なんです! だからナツミの事が心配だった
 んです! 最近、行動が怪しくて……」

小田原「そう。でもね、さっきのアナタも、とっても、怪しかったよ」

はるか「怪しかったですか? ワタシ」

小田原「こんな時間にビル街を一人でソワソワウロウロしてたら……しかも
 だよ、その制服の上に着てるショートのトレンチコート、私服だよね。
 おまけにキャップまで被っちゃって」

はるか「いやぁ〜、やはり尾行する時は、トレンチコートは定番かと思いま
 してぇ〜」

小田原「……だったら、制服のスカートが隠れるくらいの丈のにしないと 
 ね」

はるかM「あちゃー」

はるか「さすがプロ。それで分かったんですね」

小田原「プロでなくてもワカルから」

はるか「……はあッ……」

小田原「(一転、冷たい口調で)話をもうどうそか、はるかさん。今日の放
 課後の話しから聞かしてくれるかな?」

はるかM「そうだよ。思い返せば、今日の放課後、部室でナツミが例の黒い
 大型バックを持って、下校しようとしていのに気付いたのが始まりだった
 ……」

 SE 警察署内の軽い喧噪(F・O)
 

 SE 学校の終業ベル
 SE 女子高校舎内の喧噪(F・I)

はるか「(やや緊張)あ、……ナツミ部長?」

ナツミ「あっ、はるかちゃん。どうしたの?」

はるか「えッ、あっ、実はその……クロッキーがまた10枚程仕上がったん
 で、部長に観てもらおうかなーって……」

ナツミ「本当? でもゴメン。今日はあまり時間が無いんだよォ、明日、ゆ
 っくり観させてもらうから。本当にゴメンね」

はるか「……そっか……いきなりでごめんなさい、部長」

ナツミ「はるかちゃん、その『部長』っていうヤメてって言ってるでしょ 
 ぉ。昔みたいに『ナツミ』って呼び捨にしてよー」

はるか「あッ、いや、そんな……ところで、その黒いバッグ……タマに持って
 来てるけど……」

ナツミ「あ、このバッグ? ……気になってたの? 超安モンだよ。ダッサ
 いでしょ? あ、だから気になったの?」

はるか「いや……そういうワケじゃ無くて……」

ナツミ「ああ、ひょっとして、中身とか気になってた?」

はるか「……ま、マサカ、全然」

ナツミ「(逡巡)……どうしようかな……」

はるか「い、いやイイだよ。今度で、時間ないんでしょ」

ナツミ「……そだね。今度ね。……。あ、駅まで一緒に帰る?」

はるか「……駅までって……何処か寄り道するの?」

ナツミ「まぁチョとね、逆方向にね、用があるの」

はるか「そう……アタシ、まだやる事があるし……」

ナツミ「そうか、じゃ、又、明日ね」
 
 SE 遠ざかる歩行音。
 SE ドアの開閉する音。

はるか「怪しい……やっぱり……」

    Mは適時F・Oで
  
 SE 警察署内の軽い喧噪(F・I)

小田原「で、後をつけちゃったんだ?」

はるか「で、思わず尾行しちゃったワケで……」

小田原「実は最初から尾行する気だったんじゃない?」

はるか「(図星で)さ、さすが……プロ」

小田原「プロでなくても分かるから。だから今日、学校にトレンチコート持
 って来たんでしょ? 私服のトレンチ」

はるか「(ぐぇッ……)でも、これはホントウなんです、ずっと仲が良かっ
 たんです。家も同じ方向だし、帰りとかもいつも一緒だったんです……」

小田原「(真剣な口調に変わって)……ふーん。そのナツミさんてコのこ
 と、もう少し聞かしてくれない?」

はるか「……そうですね……なんかヨソヨソシクなったのは……進路を決めた頃
 からかな……」

小田原「進学なんでしょ?アナタの学校なら」

はるか「本当は二人とも美大に行きたかったんですけど」

小田原「やめたの?」

はるか「それぞれの事情で。アタシは幾ら作品を仕上げても悲しいくらいセ
 ンス無いし……」

小田原「彼女……ナツミさんは違うの?」

はるか「彼女は顧問も認める程の才能があるんですけど……」

小田原「けど……?」

はるか「お父さんの事業が上手く行ってないみたいで……とりあえず大学に
 は進学するけど、就職に強い学部に進む様に親から言われてるみたい  
 で……ナツミはもともと成績全般が良かったし、これから他の文系の方へ
 進路変更してもナンとかなるんだろうけど……」

小田原「彼女、ナツミさん、進学の費用に困ってたの?」

はるか「……わかりません。自分の事とか、最近は全然話してくれないんで
 す。進路の事でいろいろあった頃からは特に……」

小田原「……ふ〜ん」

はるか「あのォ」

小田原「なに」

はるか「おまわりさん、アタシの事よりナツミに興味を持ってません?」

小田原「(軽く動揺)えっ?そんな事、全然無いから」

はるか「アタシ達、名門私立のお嬢様高校だし」

小田原「自分で言うなよ」

はるか「週刊誌とかにデカデカと……」

小田原「妄想好き? アンタ」

はるか「……『名門女子校生のマル秘な放課後』……なんちゃって。おまわり
 さんも取材されたりして」

小田原「(少し図星で)そうじゃないでしょ! だいたいアナタはね……」

警察無線『(!緊張)至急、至急、秋葉原3より警視庁、先程の48事案に
 おいて、女に職質を掛けたところ、女は、持っていた大きな黒いバッグを
 振り回し、これに抵抗。現在、中央通り方面に、東進しつつ逃走中!』

はるか・小田原「大きな……黒い……バッグ……だとーぉ!」

警察無線『なお、マルヒは秋葉女子高校のものと思われる制服を着用して
 おり、『親友が、人相の悪い女に、車両に無理やり乗せられた』などと、
 叫びながら……』

はるか・小田原「えっ? 秋葉女子?」

  SE パトカーのサイレン(一旦高まってから、ゆっくりとF・O)

はるか「マッタク、どうなる事かと思っちゃったよ」

ナツミ「それっ、コッチのセリフだから」

  SE 電車内、走行音と軽い喧噪。(F・I)

ナツミ「はるかときたらさ」

はるか「ナツミが慌てん坊すぎなんだよ」

ナツミ「だって、遠くから『ワタシは怪しいもんじゃありませーン』ぃて聞
 こえて、声がした方を見たら、黒いコートにキャップまで被っちゃって
 る女の子が車に押し込められるてるし、誰かにに似てるなぁって思ってガ
 ン見したら、キャップが取れたら、はるかだし、車にダッシュしたけど、
 車、走りだしちゃうし……あーもう、どんだけ心配させたと思ってん
 の!」

はるか「……心配してくれたんだ」

ナツミ「……ナニッ? そんな目で見ないでよ」

はるかM「……そう言うと、ナツミは胸掛けした黒いバッグの位置を少し直し
 た。視線はわたしから、車窓の向こうの街の夜景に移り戻らなかった。
 ……急に寂しさがこみ上げてくる……でも、そこには昔からすごく好きだっ
 たナツミの横顔があった……この六年で、どうしょ うも無いくらいに
 凛々しく綺麗に変わったその横顔を、わたしは心の中にデッサンし、焼き
 付けた……」

はるか「あの……ねえ、ナツミ」

ナツミ「だからナニッ!」

はるか「あのね、ずっと聞きたかったんだけど……そのバッグ……何が入って
 るの?」

ナツミ「ああ、コレ? でも……壊れちゃった。振り回したからネ」

はるか「大切なものだったの?」

ナツミ「実はね。アタシ、今、自分で作ったものをアキバで売ってるの」

はるか「……いったいナニを?」

ナツミ「見てみる? もう、残骸だけど……」

  SE ジッパーを開ける音

はるか「コッ……これって」

ナツミ「そう、いわゆる美少女フィギュアってやつ」

はるか「ナツミが全部作ったの?」

ナツミ「もちろん」

はるか「でも、良いの?今頃。こんな事してて。進路変更するんでしょ?」

ナツミ「しないよ。アタシ、とにかく何かを創ることにしたの!」

はるか「そ、そうなんだ」

ナツミ「だからね、その為の資金作りとスキルアップを兼ねてるの」

はるか「美大……あきらめるの?」

ナツミ「まあ、ワタシはわたしなりにがんばるさ。それよりはるかは美大に
 行くんだよね」

はるか「……アタシ……美大はタブン、行かない」

ナツミ「えっ、そうなんだ……で、どうするの、進路」

はるか「アタシ、警察官になるかも」

ナツミ「はぁ? 冗談でしょ」

はるか「結構、マジで」

ナツミ「なんでまた」

はるか「さっきね、警察署でナツミを待ってる間に、担当してくれた、おま
 わりさんにお礼のつもりで似顔絵を書いてあげたんだよね。
 そうしたらそのオネエさん、『アタシも仕事で似顔絵』書いてるんって言
 うだよね」

ナツミ「ふーん……」

はるか「世の中にはそんな形で、自分の書いた絵を役立ている人もいるだな
 って、そう思ったんだよね」

ナツミ「(寂し気)……そうか……そいいう道もアリなのかも……」

はるか「……そうだよ、ナツミ」

ナツミ「(無理に明るく)……そうだ! はるかにこのフィギュアの損害賠 
 償をしてもらわなきゃ」

はるか「えーッ、マジで?」

ナツミ「マジ。じゃ、損害賠償としてー」

はるか「……賠償として」

ナツミ「次回作のモデルになってもらうからね!」

はるか「むむ、無理ッ……」

ナツミ「イイのが閃いた。テーマは『婦警さんの絶対領域』!」

はるか「なんじゃソレ!」

ナツミ「ミニスカでニーハイソックスの女性警察官! よろしくね」

はるか「……絶対に、無理ッ!」     

(終わり)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?