見出し画像

タイの教育問題:識字率から見る教育格差の現実

識字率94%と推測されてるタイ王国だが、多くのタイ人の友達は100%でないことに不思議がっていた。なぜなら残りの6%にあたる読み書きができないタイ人を見たことがなかったからだ。だがつい最近、北部の某県某銀行で、帰省したタイミングでインターンを行った友達がこんなことを言っていた。ある女性が口座開設のために来店したそう。そして友達は、「口座開設に必要な情報をこの用紙に記入してくれませんか」と尋ねると、その女性客は「すみません、読み書きができないんです」と。これにはタイで生まれ育った彼女も、初めて識字ができないタイ人を見て驚いたと言う。
では他の実体験を共有しよう。あるカリキュラムの一環で、イサーン地方の山々に囲まれたレストランで食事をしていた所、ウエイターとして料理を運んできてくれたのは子供(小学低学年くらい)だった。平日で学校がある時間なのにと、その場にいた学生、教授は同じことを思っていただろう。これらの出来事は、タイ社会に存在する教育格差を象徴している。タイは急速に経済成長を遂げているが、その恩恵は都市部に偏っている。一方で、田舎では依然として基本的な教育すら受けられない人々が多々存在する。(特に山間部)読み書きができない大人は、情報にアクセスする能力が制限され、社会的な機会を逃す可能性がある。また、子供たちにも教育の機会を提供できないため、貧困は世代を超えて続くことになる。

タイが抱えてる問題

タイでは、ほぼ100%の子供が初等教育を完了しているが、高校を卒業しているのは65%。これは、国家統計局とユニセフが共同で作成した2019年の報告書によるもので、報告書によれば、全国で最大16万人の若者が遠隔地に住んでいるために教育を受けることができず、最大3万人の若者が薬物関連の罪で服役しているために教育を受けられないとされている。さらに約40万人の子供が路上生活をしているか、移民労働者の子供であると推測されている。近隣国(ミャンマー、ラオス)と比べると、高い最低賃金が保証されてるタイでは、国境を不法に渡り労働してる彼らをタイ警察が摘発したというようなニュースが毎日のように報道され、彼らに対してバイアスがかかっているタイ人は多いように感じる。だが子供の教育、未来を考慮すると、彼らにも教育の場を与えることは、タイ社会にとって重要な役割を果たすだろう。

教育者たちが抱えてる問題についても触れておこう。記事「Thai education beset by poor management, inequality, and high teacher debt」によれば、タイの公立教育システムは、格差、不均等な資金調達、教育省による頻繁な政策変更、そして教師の高い負債といった多くの課題に直面しているという。記事は、地方の学校が月5000バーツ(タイが定める最低賃金よりも安い)の低い給与で英語とコンピューターの教師を募集している事例を取り上げている。また、教師達の仕事量が多く、一部の教師は収入を補うためにオンラインで商品を販売していると報じている。教育省の遅い行政手続きや失敗したイニシアチブ、不十分な資金調達とその不適切な使用が、タイの教育の問題の大部分を引き起こしていると指摘し、教育大臣の頻繁な交代も問題を悪化させている。さらに、タイの教師は、平均的な給与が低いだけでなく、大きな負債にも苦しんでいる。全国の現役および退職した教師900,000人以上のうち、1.4兆バーツ以上が債権者に負っており、一人当たりの平均負債は150万バーツ以上だそう。

タイが抱えてる教育問題を一部紹介してみた。解決は簡単ではないが、これらの問題を無視することはできない。なぜなら教育は社会の基盤であり、個々が自己実現を達成し、社会的、経済的な機会を得るための手段であるからだ。教育格差が存在すると、その機会は一部の人々にしか開かれず、社会全体の発展が阻害される。タイの教育問題は、地方と都市部の間の格差、教育へのアクセス、賃金問題といった多くの要素によって複雑化している。これらの問題を解決するためには、政策の改革、資源の再分配、教育の質の向上など、多方面からのアプローチが必要だ。タイの子供たち、そしてタイの未来のために、それは必要な道のりであり、教育格差を解消することは、タイがより公正で平等な社会を構築するための重要なステップになる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?