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国際金融のトリレンマが面白い話

 みなさんは国際金融トリレンマというものを知っているだろうか。国家公務員試験を受けた方ならご存知のマンデルフレミングモデルを金融政策にまで拡張させたもので、下記の政策のうち2つは同時に採用できるが、残り1つは採用できないというものである。

①自由な資本移動

②為替相場の安定した運用

③独立した金融政策

 自由な資本移動と為替相場の安定した運用を選択すれば、国家は国際経済に合わせた金融政策を取らざるをえなくなり(通貨発行権の実質的な喪失)、無制限の金融緩和や大規模な財政出動はほぼ不可能となる。史実におけるEUの独仏以外の諸国がこれに当てはまる。

 為替相場を安定して運用しながらも、独立した金融政策を取りつづけるならば、国家は中国や北朝鮮などのように完全に諸資本の動きについて統制をする必要が出てくる。金融政策が影響する諸資本の売買を規制しなければ、為替相場そのものが安定しないからである。

 最後に、為替相場の安定を捨て去れば、日本やアメリカのように自由な資本移動と独立した金融政策を享受できる。国家はただ為替相場のディーラーとなり、活発な資本移動を金融政策によって交通整理をする役目に立つことになる。皮肉なのは、EUの独仏は加盟国に1番目のような苦境を強いておきながら、欧州中央銀行に影響力を持つことで、日本やアメリカと同じような立場にいる点である。

 上記のように、国際金融のトリレンマは世界中の金融政策の取り方を大枠に見ることができる。謂わば、国家が国際金融というカジノにおいて、客を演じるか、そもそも賭けには載らないか、胴元になるかの違いだ。実際は、胴元にとって都合の悪い盤面(相場)になればイカサマ(市場介入)をしたり、客側も額面をごまかしたりしているわけだが。

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