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折り返して、その先へ

 分厚い小説を読む時、半ばを超える時に憶える特別な気持ちがある。物語がまだ盛り上がりを迎えていなければ、ここからどう盛り上げてくれるのかと期待が募り、逆にかなり盛り上がっていれば、この先どんなことがまだ待っているのかとますます期待が募る。それは、電子書籍では得られない楽しみだ。つまらない映画を見ている時に、スクリーンがすこし明るくなった瞬間にチラリと時計を見てまだ半分を超えていないと思うとガッカリするし、テストを受けている時は表裏や左右で半分の解答用紙を、半分以内の時間で解き進められていたら自信が持てる。
折り返しとは、半分を超えるとは、全部、全体、完走を考えるにおいて、特別な感慨を持つものなのだ。

いま僕は舞台の稽古の真っ只中。

https://stage.parco.jp/program/federico

まだ2作目ゆえに初めての経験が幾つもあるけれど、戯曲を書いていた時にとことん悩み、かつ、とびきり面白い壁だと思ったのは、物語を一幕と二幕で「折り返す」ことだった。―――インターミッションが出来る!そうワクワクしたのだ。
昔の大作映画、たとえば「アラビアのロレンス」「風と共に去りぬ」「大脱走」にはインターミッションがあった。

アラビアのロレンスは、間のインターミッションを挟んで前半と後半でガラリと物語のトーンが変わる。それがあの作品をさらに引き締める。前半で砂漠の美しさを、仲間たちの絆を描きそれをインターミッションの間に反芻するからこそ、後半のかなしさ、残酷さが生きて来る。
今ではほとんどの映画にインターミッションは無く、前後編に分けて2度入場料を稼ぐビジネスのほうが主流だが、インドの映画に今もインターミッションが多いのを見ると、かの国ではまだまだ配信よりもロードショーで映画を見ることが尊ばれているのだな、とうれしくなる。


僕が長くやってきたテレビの場合も、CMをうまく使うドラマやバラエティには唸る。昨今は視聴率の奴隷と化した作り手が多いのでCM前と後の演出にそこまで鮮やかなものを見ることは少なくなったが、たとえば「古畑任三郎」。あのスポットライトの独り語りをCM前に入れて、CM明けたら犯人を追い詰めてゆくパートに入る、というのは実にあざやか。CMをインターミッションとして使う三谷幸喜さんの筆にひたすら唸った。
そして、そんなインターミッションの文化はもともと演劇の「幕」が生んだもの。
演劇にはもちろん一幕で語り切るものも多いけれど、二幕、三幕と幕が入ることで一気に物語を押し上げるものも多い。だから今回の舞台「破門フェデリコ」では、一幕と二幕のあいだでどう物語を変えるか、ただ変えるだけでなく違うステージのものにするか、そこに腐心した。ゴールに向かうまでの真ん中、折り返しは、本当に大きな意味を持つものだから。

前置きが長くなった。この文章は、つい先日、新たなステージに踏み出してから2周年、3年目へと踏み出したかの人のために記している。

ほとんどの人の場合には、2周年は5周年や7周年と別に違う意味は持たない。いやむしろ5や7の方が長く続くことへの言祝ぎとしては大きな意味を持つだろう。だが、かの人にとっては。

2年は、4年の、半分である。

およそ人類が生み出したあらゆる人の中でも、「4年に一度」にここまで集中して、集中の結実を獲得して来た人はいないのでは、と思う、かの人。
2年は、4年の折り返し。
ここまでの2年を受けて、どんなこの先の2年を描き、その年―――2026年―――を迎えるのか。

幸い、僕はこの2年を数々の場で見届けて来た。
世界にこんな大きく美しく悲しくしかし胸を打つ物語は無いのでは、と思ったほどの2つのICE STORYと、綺羅星のごときショウの数々と。


それだけではない。
選手であった時代にも横行した愚者の愚行は、この2年のあいだ、更に加速し、かの人を追い込む事例も数々目にし、耳にしてきた。

本当なら、ただ素晴らしいものを見せてくれているだけで十分すぎるかの人が、なぜ周りのせいで苦しめられるのか。義憤としか言えぬ思いで見つめてきた。

かの人は、この2年を、次の2年にどう繋げるのか。そして4年の節目となる2026年に、何を見せてくれるのか。
ここからは、妄想と言われても仕方ない、願望に似たエールを贈ろうと思う。

4年ごとに遡ってみる。

2020年

4年前は、、、2020年!このことに少し驚きを覚える。2020という年号はオリンピックの年だったはずが、未曾有の病の年として刻まれた。21世紀の世界史を5つのキーワード、いや3つに絞ったとしてもきっと入るであろう、コロナ禍。世界がひとしく病み、命を無慈悲に失い、弔い、さまざまな形で病と戦って来た。
この年のかの人の発言に、こんな言葉があった。

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