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真価を問われた一戦。闘志と情熱を引っ提げた攻撃的なローマへ。|セリエA 24節 ローマ vs インテル|

割引あり



豪雨のスタディオ・オリンピコ。モウリーニョ監督を解任して新たな監督として招聘したのは、ローマのレジェンドであるデ・ロッシ。
就任当初はどうなるかと心配していたが、蓋を開けてみると就任から3連勝。しかも攻撃的なサッカーへと変貌を遂げたローマ。抱えているタレント軍団の能力を遺憾なく生かし切っている。
前線のタレントをいかすための戦術については以下の動画で触れてきるので、ご覧になって頂きたい。

とは言っても、ここまでは順位が下のチームとの試合だった。だからこそ、『首位インテル』との一戦は真価が問われるものと位置つけられた。

そして迎えたキックオフ。ローマの戦士たちは闘志を全面に押し出し、先制はされたものの、逆転してロッカールームに帰ることに成功。内容もインテルに引けを取らないものだった。いや、前半は確実に上回ったと言ってもいいだろう。

迎えた後半。インテルの修正によって、プランを練った守備を少しづつずらされてしまって逆転を喫してしまった。さすがはインテル。その強さを改めて感じるものだった。

デ・ロッシ監督率いるローマはシモーネ・インテルの喉元までナイフを突き付けた。ではどのようにローマはインテルを追い詰めたのか、闘志と情熱を引っ提げたローマがどのような戦いをしていたのかを中心に試合を振り返っていこう。

なるほど!と感じて頂けたら、ちょい足しも読んでみてください!

対インテル用の守備

デ・ロッシが就任してからの試合と違うのは守備の局面だ。ローマはインテルをリスペクトしながらそのプランを用意した。
これはインテルの土台に対して制限をかけることで、擬似カウンター気味の攻撃を潰すこと、そしてキーマンでもあるチャルハノールを潰すことを行った。
これによってローマはショートカウンターと速い攻撃の予防のセット、ローブロックとロングカウンターのセットで試合を作り出した。
ではその守備プランを考えていこう。

ハイプレスのセット

いつもと違ったところ。それはエルシャーラウィが下がって外側のエリアを管理するところにあった。だから、その後ろのアンへリーニョはエルシャーラウィの守備の方向と、インテルのWBとIHの動きを見て対応を変えていた。

またローマは土台を潰しにかかるために、インテル3CBに圧をかけていく。ここのメンツがルカク、ディバラ、そしてペッレグリーニとなっていた。ここでペッレグリーニを押し出すところもいつもと違ったところだろう。

ではここからどのように守備を行なっていたのかについて詳細に触れていく。

左サイドの守備

特に左サイドはエルシャーラウィとペッレグリーニのタスクが普段と違っていたので、こちらのサイドから触れていこう。

バレッラが外側に流れる場合

まずバレッラが外側に流れる場合。この場合も、後に解説するバレッラが流れない場合も、このプレスの生命線となるのは『外側の誘導』となる。なぜこれが大切になるかというと、後ろの選手に対してマーカーまで出る時間を稼ぐことになるからだ。

これでパヴァールを経由させることで、後方の選手たちはそれぞれの守備タスクへ移行する。
まずエルシャーラウィのタスクは先にも触れたように『外エリアの管理』となる。だから外側に流れるバレッラの対応を行う。インテルはIHを外側に流すとWBを押し上げる傾向があるので、これに対してはアンへリーニョが対応を行う。
またバレッラの並行のサポートとパヴァールの出口を作るためにポジションを取るチャルハノールにはパレデスが対応。これは外経由を行なっているからこそ、間に合う守備対応となっていた。

これでミスを誘発させる、もしくは有利な状況で守備に入れるのでボールを奪い切ってショートカウンターに出る回数は多かった。自然とこの試行回数が上がっていたことは良かったと思う。

そしてもう一つ。それがバレッラが外側に流れないパターン。

バレッラが列を上げるパターン

この場合もアンへリーニョとエルシャーラウィの大枠の守備タスクは変わらず、エルシャーラウィは大外の対応、アンへリーニョはエルシャーラウィの守備の方向を見てマーカーの対応を行なっている。またバレッラが列を上げて場所を開けるので、ここにCFが降りて引き取ることが多いインテル。
ここに対してはCBがきっちりとついて潰し切ることで、プレスから脱出をさせていなかった。

右サイドの守備

では右サイドはどのようになっていたのか。以下の図をご覧になってほしい。

右サイドは基本的にSBにはSBを押し出すスタイル。この時にエルシャーラウィがしっかりとバックラインまで下がることで、プレスを回避されたとき、もしくはプレスを回避するにあたっての配置的優位性を潰しにかかる。
当然エルシャーラウィが下がると、中盤の管理が難しくなるのでここでもペッレグリーニが中盤まで下がって場所と人の管理。
だから捨てる場所がパヴァールとなっていた。そのため、右サイドの生命線となるのがディバラとルカクのプレスの性能。彼らが逆サイドへの逃げ道を1stプレスの時点で切ることができないと、このプレスは機能しない。そして彼らはそれをしっかりとやってのけた。
だからこそ、こちら側のプレスも機能してショートカウンターの試行回数をあげれていたのだろう。

ミドル/ローブロック

当然のことだが引いて守る時間帯もある。この場合もインテルの配置的な優位性と、動きを加えてズレを生み出す攻撃に対応できるプランを用意。

5-3-2ないしは5-4-1のブロック

例えば左サイドにボールがある場合。基本形としてこの試合はエルシャーラウィがバックラインまで下がって5バックの形を維持していた。

この狙いとして先にも触れたような配置的優位性を潰すためのもの、そして自分が対応するエリアを明確にすることで遅れを限りなくなくすことにあった。
だからこそ、インtネルのWBと攻撃参加を行うCBの入れ替わりなどにも難なく対応することができていた。さらにデ・ロッシ監督が就任してからはディバラがかつてないほどに守備に参加するようになる。だから5−4−1の形でも守備もできるようになっていた。これでボールサイドを圧縮しながら、自陣ゴールから遠ざける基本守備を行なっていく。そしてが入ってきたボールを回収して、まず目指すのがルカク。ここも明確になったことからロングカウンターの発動もスムーズになっている。
エルシャーラウィの逆転ゴールもロングカウンターから生まれてる。これは偶然ではなく、必然と言ってもいいだろう。

デ・ロッシローマはインテルを十分に打ち負かすだけの守備プランを用意して、選手たちもそれに応えるように闘志と情熱を前面に押し出して、スタディオ・オリンピコに訪れたサポーターに豪雨を忘れさせるようなプレーを見せつけていた。
ローマのために闘う戦士。戦士を後押しするサポーター。いやぁ、熱いね。

指標と共有を手にしたローマの攻撃

過去3試合でも見せた攻撃的なローマ。あれだけの前線のタレント達がいれば、魅力的になるのは間違いないのだが、デ・ロッシ監督がまず着手したのは土台と崩しの明確なスイッチだろう。そして基本的な配置を整えることによって、選手たちは『指標と共有』を手にした。

そしてこれは首位インテル相手にも通用することをこの試合で証明して見せた。ではどのような攻撃の構築を行なっているのかを解説していく前に、少しインテルの守備構造に触れておきたい。

インテルの守備構造

サッカーは相手ありきなので、まずは対戦相手のインテルの守備の大枠について触れておこう。

インテルの守備構造の大枠

インテルは基本的に5−3−2で守備を行う。その際に3センターの脇を迎撃エリアとして設定。このエリア、3センターの背後を管理するのがバストーニとパヴァールとなっている。ここにCBを押し出すために、WBはまずバックラインまで下がることが重要となり、かなり上下動が必要なポジションとなっているのではないだろうか。
もちろん、WBが下がるのでSBに対してはIHが出ていくことが基本形。IHが内側から外側の守備を行うことになるので、2トップのテュラムとラウタロは中央を消すことが最優先となっている。そして3センターの脇に降りてくる選手を迎撃!という形だ。この大枠の守備はローマに対しても例外なく行っていた。

ではこれに対してローマはどのように攻撃を行なっていたのだろうか。

土台の安定と崩しのスイッチ

デ・ロッシ監督が行った土台の安定と崩しのスイッチの着手。これを行う過程で大切になったのが配置の整理だ。
だからローマの土台は以下のようになることが多い。

3-2の土台

過去3試合ではクリスタンテやペッレグリーニの外降り、前節はアンへリーニョの3枚化も見られたが、この試合ではパレデスのサリーが多くなっていた。
デ・ロッシ監督初陣、2戦目では「ノリ」でパレデスが3枚を形成することが多くなっていたが、前節と今節はその「ノリ」が解消。これはアンへリーニョ加入が大きく関係していそうだが、このノリが解消されたことによって一気に土台が安定。

さらに3枚の土台を形成したことによってカルスドルプを高い位置に押し出して幅を作らせることでディバラの自由度を上げていく。やはり非凡なものを持っているディバラをいかに生かしていくかは、ローマにとって大きなテーマだ。そしてデ・ロッシ監督は攻撃のタスクをディバラに全振りするのではなく、タスク振り分けを行ったことで一気に攻撃が活性化。

インテル戦ではその振り分けを行うために、以下のようなことを行った。

サイドの繋がりを明確化

まずインテルのIHのプレスを止めるためにクリスタンテとペッレグリーニがムヒタリアンとバレッラの管理下に入る。これによって2トップ脇をマンチーニもしくはハイセンが持ち出すことができるようになっていた。
彼らからの縦パスは多く見られたし、ここを1つの攻撃の起点として考えていたのは間違いないだろう。

さらにSB-IH-WG-CBの繋がりを保てるようになった、もしくは形成できるようになったので、インテルの中盤の門を広げる/閉じることができるようになる。
そしてここでデ・ロッシ監督が着手したもう1つのこと『崩しのスイッチ』が見られる。門を広げた場合には門の先でルカクが縦パスを引き取ること/門が閉じられた場合はハーフスペースでディバラかエルシャーラウィ、ルカクが縦パスを引き取ることで、崩しに入っていく。
特にルカクに縦パスが入った時のスイッチの入り方とサポートの多さはモウリーニョ監督の時とは大違いだ。だからこそ、コンビネーションプレーも多く見るこもできるし、以下のように同サイドからボールを解放することも可能なっている。

スイッチとコンビネーション、そして解放

まずルカクのサポートの多さ。やはりルカクのボールの収まり方は非凡なものがある。(なんでプレミアだったら収まらんかったじゃろ…?)
この試合もアチェルビを背負いながらポストプレーを行なって崩しの導入をこなしていた。さらに門を広げることに成功しているので、インテル中盤をひっくり返してる。だからこそ、クリスタンテやパレデス、ペッレグリーニのレイオフも使えるようになっているのではないだろうか。
そしてここから逆サイドにボールを解放することで、エルシャーラウィやディバラのドリブルでの崩しも促すことができる。

これによってインテルの5−3−2の守備ブロックを回避しながら、さらに配置を整えているのでネガトラも機能するようになっていた。守備陣と攻撃陣の距離が遠くなっていないので、押し込んだ際にもそのままインテルを自陣に閉じ込めることにも成功していたし、ここも大きくローマが変わった局面の1つだろう。

堅守を誇るインテル相手にも十分に攻撃も通用することを証明することができたデ・ロッシ監督と選手たち。敗戦してしまったが、確かな手応えを感じた一戦になったことが間違いないだろう。
そして何よりもサポーターに未来は明るいかもしれないという大きな期待を抱かせる一戦になったのではないだろうか。

インテルの修正:局所の数的優位

スクデットを確実なものにしていくために負けられないのがインテル。前半の内容は機能不全までとはいかずとも、ローマに上回られたことは間違いなかった。
なぜ上回られたのか。それは土台への制限とチャルハノールを消されたことになる。もっというとFW-MFのライン間を使ってローマを引っ張りせなかったことにあると考える。

だからこそインテルはここの修正に着手して流れを引き寄せた。リスタートからローマの守備陣形が整う前に仕留め切ったこともインテルの強さと隙の無さを示したものとなった。
ではどのような修正を加えたのかを解説していくので下の図をご覧になってほしい。

各所の数的優位

キーポイントは『局所の数的優位』だ。狙ったのはローマの左サイドの守備だ。いつもと違うこともあるのでこちらを狙い撃ちしたのではないかと勝手に予想している。
ではどのように狙ったのか。それは出てくるペッレグリーニに対しての数的優位と、エルシャーラウィの守備のタスク(大外の管理)を利用したものだ。
まずバレッラがペッレグリーニの手前に降りることでパヴァールとコンビを組む。これによってWBダルミアンが高い位置に押し出されることになる。これでダルミアンがエルシャーラウィを引き連れることで土台のところ、もっというと左サイドで数的優位を作り出すことが可能になって安定を手にすることができていた。

また中盤でも数的優位を作り出す。チャルハノールのヘルプにムヒタリアンが参加することで、門の先に2人立たせることを行う。そうすると当然パレデスとクリスタンテが出てくるので、ここにラウタロが降りてきて中盤で数的優位を作り出していた。

じゃあここにCBを押し出せばいいじゃん!となるかもしれないが、インテルは土台のところで安定性を手にしているので、仮にCBが出てくるとその背後にボールを落とすことで1発でビッグチャンスを作り出すことができる。さらにそこには身体能力お化けのテュラムがいて、ローマは後ろ向きの対応になるので、クリアに飛距離を出せない。ゆえにインテルは2ndボールに対して優位に向かっていくことが可能なる。

だからこそ、ローマは大局的に見た時にCBをラウタロまで押し出すことが難しくなっていた。
これでインテルは門を広げればチャルハノールが引き取り、門を閉じられれば外側から並行を使ってチャルハノールを使って展開を促すことができるようになっていた。

これでローマのプレスを回避しながら攻撃を仕掛けて、見事に再逆転を手繰り寄せることに成功した。

まとめ

豪雨も忘れさせるほどの熱い一戦。お互いに攻撃に出る姿勢を見せて見応えのある一戦となった。
ローマは敗戦したが、それ以上のものを手にしたことは間違いないし、虚無の負け方ではなく、未来に繋がる、またがは希望の持てる負け方だった気がする。
一方のインテル。強い。やっぱり強い。この感想を改めて!という感じの試合だった。手堅い理由も詰まった一戦だったし、鋭さも兼ね備えていると再認識する一戦だった。
僕は密かに今年のCL優勝はインテルと思っている。

本当に面白い一戦だったし、北川さんの実況がとても聞いてて楽しいので、時間がある方は見返してみて欲しい。

ちょい足し

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