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漫画家が一番気になる「ぶっちゃけどこまで経費に入れられるのか」問題を税理士さんに聞いてみた

昨年末に公開した、「今さら聞けない確定申告「超基本のキ」を、漫画・同人・イラスト制作に詳しい税理士さんに聞いてみた」では、ナンバーナインが提携する税理士事務所・いぶき総合会計事務所の代表税理士・西守正希(にしもりまさき)さんにご登場いただきました。

このnoteは、その後編です。「基本のキ」の次は、より実践的といいますか、漫画家さんたちの実益につながる話題に踏み込んでいきます。

「ぶっちゃけ、経費ってどこまで申請できるの?」

今回は、漫画家さんたちから寄せられた疑問を中心に私が突っ込んでみました。気になる方は、ぜひ読み進めてみてください。そして、これを読んでも「分からない…つらい…」となってしまった方は、即刻弊社の確定申告代行サービス「ナンバーナインタックス」をお申し込みください。最安プランは9万円(税別)でみなさんの確定申告をお手伝いします。(8000文字OVERの超大作となっておりますので、お時間がない方は気になる見出しをクリックいただくことをおすすめします)

素朴な疑問① 作画の資料代、どこまで経費に入れられますか?

ーーここからは、漫画家さんから多くいただいているご質問に答えていただこうかと思います。まずは「作画の資料代というのはどこまで経費に入れられるか」という質問。例えばですが、「マ◯クのチキン◯ゲットを描きたいから買ってくる」なんかは作画の資料に入れてもいいのでしょうか?

西守
「さっそく答えるのが少し難しい質問がきましたね(笑)。例えば、モノの外見ならネットで検索すれば画像が出てきますよね。ですので、そのモノの香りや味を表現したい、ということでの購入であれば入れてもいいかもしれません。
 ほとんどの人が食べた経験があるモノではなく、そのお店に行かなければ体験できないようなものであれば、それは漫画を描くために必要な費用になります。
 これが体験のための出費であれば構いませんが、形に残るようなモノを購入した場合であれば、冒頭で話したようにネット検索などで解決できる可能性があるため、経費にするのは難しくなってきます。ちなみに、お仕事の関係者とのミーティングでマ○クを利用した場合の飲食代は経費に入れて構いません」

ーー形に残るモノを購入する場合は、”それがないと漫画が本当に描けないのか”という点が重要になってくるんですね。

西守
「そうですね、そのモノを買った後どうしているのか、という話にも関わってきます」

素朴な疑問② 「家を買いました!」は経費として計上できますか?

ーー極端な話ですが、「家を描きたいから家買いました!」は家に住むことが主目的だから違うよね、ということでしょうか?

西守
「そういうことですね。
 例えば、漫画を描くために洋服やゲーム機を買って経費に入れるとします。そこを詳しく調べていくと、『使い終わった後は自分で着ている、使っている』となってくると、それはおかしいよね……となりますね」

ーー漫画の表現で必要不可欠なモノだったのか、漫画の売上に対して妥当な経費なのか、そういった部分は当然厳しく見られる訳ですね。極論を言えば100万の売り上げに対して1億使ってたらそれはもう経費じゃないじゃん、と(笑)。

西守
「そうなりますね(笑)。1億円は極端ですが、金銭が高額であればなおさら重要性は問われます。よく言われる話で、『もしアシスタントの方が同じモノを経費精算で申請してきた時に認められるモノか』という視点に置き換えて考えてみるといいと思います」

素朴な疑問③ 「取材で旅行に行きました!」は経費として計上できますか?

ーー続きまして、取材で旅行に行かれる作家さんも多いのですが、その場合はどういった扱いになるんでしょうか。

西守
「それは先ほど述べた体験にあたりますので、仕事のための体験であれば私は経費として扱っても問題ないと思います。もちろん関係ない方まで参加してその人の分まで、となると話は別ですが。
 主目的が仕事用であるということが重要ですので、例えば撮影した写真を背景の参考として漫画にも反映している、というのであれば該当すると思いますし、それを後で説明できるように資料として残しておけばより確実ですよね」

ーー経費にする場合は、しっかりと理由付けしつつ、証拠となるような記録を残しておくことが重要、ということですね。

西守
「旅行の中で純粋な観光をする時間ももちろんあると思います。ただ、仕事とプライベートが混在する旅行の場合には、旅行の全行程のうち仕事をした時間に限って、按分して経費計上する必要があるのでご注意ください」

素朴な疑問④ カフェで作業した時の飲食代は経費として計上できますか?

ーー続いての質問です。カフェで作業したんだけど…といった質問も多いのですが、これも同じようなケースになりますか?

西守
「それは問題ないでしょうね。ただし、すでに固定の作業場があるという方が大半だと思いますので、なぜカフェで作業する必要があったのか?という理由付けはあった方がいいと思います」

素朴な疑問⑤「S◯itchを買いました」は経費として計上できますか?

ーーちなみになんですが……、皆さんS◯itchが欲しいみたいでして、それは経費になるのかという質問も多いのですが、これはどうなんでしょう?

西守
「それは体験ではなくモノになるので難しいですね……。ただまぁ、どんな作品にその購入が活きているのか、といったところ次第では経費として計上することはできると思います。
 これ、実はゲームを作っているクリエイターの方であればOKなんです。これが漫画家さんの場合ですと、その商品を作品にどこまで関わらせるかというのが重要になってきます。
 例えば、それが『形状を描く為』だけであればネットで検索すれば出てきますので、作画資料の理由付けとしては弱くなりますよね。あと、先程の『素朴な疑問②』でお話ししたように、その後プライベートで使用するようになると、そもそも購入した主目的が違うんじゃないですか?ということになってしまいます」

ーーなるほど。ということは、逆に漫画家は漫画であれば経費で落とし易いということでしょうか?漫画を読んでインスピレーションを受けたり、コマ割りや構図の参考にする方は多いですし、経費で落としやすい部分になるんじゃないですか?

西守
「そうですね!そこは落としやすいと思いますよ」

素朴な疑問⑥ 「整体に行きました」は経費として計上できますか?

ーー次のご質問は、「整体は経費で落とせますか」です。仕事は体が資本ということで、いかがでしょう?

西守
「これもゲームや旅行と同じで、整体やマッサージを体験しないと描けない漫画を描いている場合は、その体験を取材費や資料代として経費で落とせる余地はあると思います。美容院などで毎月カットしてもらうように定期的に通うとなると、それはもう私的利用になるので厳しいですね。
 一般的に私的利用としての整体・マッサージを経費で落とすというのは難しいのですが、整骨院だったら医療費控除の対象になります。この場合は、経費ではなく所得控除の医療費控除として含まれますね。
 他には歯の治療などがありますが、医療費控除は年間で10万円以上の医療費を払った人は、その額を超える部分を所得から差し引くことができます。ちなみに、所得が200万円未満の方は、10万円でなく所得の5%を超えれば医療費控除の対象にできますので、医療費の支払いが年間10万円に満たない方も適用できる可能性はありますよ」

ーーなるほど、控除をよく理解して上手く使えば負担が減らせるんですね!

素朴な疑問⑦ 「備品の購入」は経費として計上できますか?

ーー漫画家さんが購入する備品といえば、PCや液タブなどが挙げられると思います。そこで、これも多くいただいている質問なのですが、これらを購入する、または買い替えるとなると、どのタイミングで購入するのがベストでしょうか?

西守
「この質問については、会計や節税の観点から見てみましょう。白色申告なら10万円、青色申告なら30万円という一括経費で落とせる金額ラインの話が前編でありましたよね。上記ライン未満のものであれば、買った瞬間に一括で経費に落とせるので節税向きです。逆に上記ラインを超える備品の場合は、数年かけて減価償却(げんかしょうきゃく)を行う形になる、という話でした。
 では、その購入タイミングはいつか。これは1月に購入する方が良いかと思います。例えば、青色申告の方が12月に29万円のモノを買ったとしたら、当然それは一括で経費に落とせますよね。これがもし12月に31万円のモノを購入した場合、資産計上すると12月分しか落とせない。つまり、減価償却の1ヶ月分しか落とせないんです。
 ですので、金額ラインを超える高額な備品は1月や2月などの年初に購入すれば一年間での減価償却費を増やせるので、タイミングとしてはベストだと言えます。例えば、48万円のPCを購入した場合、PCは4年間(48ヶ月間)で減価償却することになりますが、1月に購入すれば1月〜12月の12ヶ月分で12万円経費計上できますが、12月に購入した場合には、1ヶ月分の1万円しか計上できないことになります」

ーーそれは知らずに購入すると大きく損してしまいますね。ということは、今年は儲かったので何か節税できるものないかな……と年末駆け込みで買う場合は金額のラインを意識して、一括経費で落とせる金額ラインを超えないようにした方がよいですね。

西守
「そうですね。もちろんお仕事をするうえで必要不可欠なものや、故障して今すぐ買い換える必要があるものはタイミングは気にせずすぐ購入されたほうが良いので、そこはしっかりと吟味していただきたいですね。
 償却の話が出たので、ここで減価償却のやり方について知っておいてほしいことを少しだけ説明させていただきますね。実はこの減価償却なんですが、これはやり方を選べるんです」

ーーやり方が選べる、と言いますと?

西守
「先程のPCの例のように、定額で落としていくパターンと定率で落としていくパターン、この二種類から選べます。何もしない場合、原則は定額で落ちていきますが、定率の届け出を購入した年の翌年3月15日(確定申告期限)までに税務署に出しておくことで、”率”で落としていくことができるんです。
 例えば、分かりやすく100万円のPCを購入したという前提で計算しましょう。PCは4年間で償却していますが定率法では50%の率を用いて初年度が50%で50万円、残りが50万円になります。2年目は残りの50%で25万円、残りが25万。3年目はその残りの50%なので12万5千円、残りが12万5千円……。つまり、少しずつ落とす額が減っていく、というのが定率の仕組みなんです」

ーーなるほど。早めに費用に落とせるので、節税の効果が得られるんですね。

西守
「その通りです。先ほどお話した節税の考え方の一つですね。あえてこの定率に変えた方が有利な方もいらっしゃいます。ただ、4年かけて償却するという結果に関しては変わらないため、30万円を少し超える場合などは定率に変えても目立った節税効果は見られません。なので、定率を選ぶ場合は営業車など高額な資産をご購入の際にお考えいただければと思います」

素朴な疑問⑧ 「クレジットカードで分割払いした場合」はどのように計上されますか?

ーーそういえば、もし高額なものをクレジットで分割払いした場合はどのように計上されるんでしょうか?

西守
「単純な分割払いであれば普通の購入とほとんど変わりません。ただ、分割払いですと金利手数料の上乗せされた分がトータルになりますので、若干金額が膨らみますよね。そうなると、やはり先ほどの金額ラインの話にもダイレクトに影響してきます」

ーー例えば青色の場合、手数料分で上限金額の30万円を超えてしまった場合はどういった扱いになるんでしょうか?

西守
「その場合、どちらか選択することができます。つまり、金利分を分割で支払いした時に金利分として分けて計上する方法か、金利分を含めたトータル金額を資産ごとに決められた年数で減価償却していく方法ですね」

ーーなるほど、これもギリギリで12月で購入する際は30万未満になるように本体代金と金利分を分けて計上した方がいい、ということですね。

素朴な疑問⑨ ふるさと納税はやった方がいいのでしょうか?

ーー節税に関する質問で、二点ほどピックアップしてみたいと思います!まずは、「ふるさと納税はやったほうがいいのか」という質問です。

西守
「私はやったほうがいいと思います。ふるさと納税といえば各自治体に寄付した結果そこの特産品などがいただける返礼品がありますよね。それはダイレクトに生活費として使えるものになりますので、ぜひともやっていただきたいです。
 ですが、注意すべき点があります!というのも、『じゃあなんでもかんでも、いくらでもやればいい』というものではないんです。ふるさと納税は、年間所得額によって最低限の負担でいけるラインというのがそれぞれ違ってきます。
 この最低限の負担というのが2,000円、つまりどんな人でも2,000円は負担することになります。最低限の負担でいけるラインは、所得が高くなればなるほど上がっています。逆にいうと所得が少ない方が何十万と寄付してしまったら、2,000円どころでない大きな負担になってしまうことになります。そのため、『1年間の所得に対して適正な2,000円でいけるライン』というのを各々で判断していただく必要があります。『自分は10万円であれば2,000円の負担でいける、だから10万円を12月までにどこかに寄付しよう』という考え方ですね。
 寄付先は無数にありますので、ご自身でより良い寄付先を探してみてください」

ーーふるさと納税で税負担を減らす場合、その人それぞれで適正な寄付金額があるということなんですね。ちなみにこの2,000円の負担というのは、一体何の負担なんでしょうか?

西守
「例えば、ご自身でシミュレーションをして10万円までいけると判断された方がいたとします。10万円を自治体に寄付すると、3万円程度のお肉や果物などが返礼品でいただける。そして確定申告をすると、9万8千円分の税金の負担が減ります。10万円を寄付すると最低限の負担ラインである2,000円を差し引いた残りの分の税負担が減ります。
 つまり、2,000円の負担で3万円相当の特産品が買えた、ということになる訳です」

ーーなるほど、節税もしつつ安価で贅沢なものがいただける…これは確かにやったほうがいいですね!

素朴な疑問⑩ 生命保険には入った方がいいのでしょうか?

ーーでは、生命保険は入ったほうがいいのでしょうか?

西守
「これは節税という観点より、現状生命保険に個人で加入されていない方がまず考えるべきは、保障が足りているかどうか。本来の生命保険の機能として入るか入らないかを決めていただくのがよろしいかと思います。ここでは、その結果として生命保険に加入された場合のお話をさせていただきますね。
 結論から言うと、生命保険料として一定額、払った保険料の一部分を所得控除として引くことができるので、若干の節税効果も受けられます。ただし、保険の所得控除はどれだけ払っていても上限があります。
 保険には三種類の控除があり、一つあたり上限4万円しか控除はされません。つまり、どれだけ払っても最大でも受けられる控除は12万円なんです」

ーー保険は節税のためではなく万が一の際に自分や家族を守るためのものですからね。現状必要な保険をご自身で見極めていただいて、そうして加入した場合はしっかりと控除も受けられるように控除証明書を保管していただきたいですね!」

素朴な疑問⑪ 同人誌の売上はどういう扱いになりますか?

ーー次は「同人誌はどういう扱いになるんですか」という質問です。同人誌のイベントはその場で現金支払いですので、レジも通さなければ何冊売れたかもいまいち分からない…といった状況も少なくありません。

西守
「なるほど。現金決済でしっかりと管理していない場合は、売上管理が明確にできていないというのもあって、それ故に売り上げが申告から漏れてしまうというケースが多発していると思うんですよね。ですが、もちろん収入を得ている以上は申告しなければなりません。
 同人誌の売上があって、印刷費など経費も発生していて、そこで儲けが出ているのであれば当然申告は必要です。逆に、儲けが出ていない場合でも、本業の収入と合わせて計算することになりますので、そこもやはり申告をしていただく必要があります」

ーーでは、それらをどうやって管理したらいいのでしょうか?

西守
「まず支払いの面では、印刷費だと印刷所から届く請求書などが資料として証拠になります。では次に問題の売上です。これはもうExcelでもノートでもいいのでしっかりと管理していただく、それしかありません。
 何月何日のイベントで何がいくら売れたのか、結果的に現金としていくら増えたか、というのをしっかりと項目ごとに管理していただきたいです。
 そこまで管理する余裕がない方も、”記録に残す”ということが重要ですので、現金売り上げを封筒か何かに入れてもらって、早ければその日のうちあるいは翌日にでも銀行口座に入金してしまいましょう。そうするとそれが通帳に記録として残りますので、あとで見返した時に分かりますよね。通帳を記帳したら必ず何月何日イベントによる売り上げと記載していただければ記録として成立します」

ーーなるほど。

西守
「ここで一応税務調査の話と絡めてお話ししますと、通帳に記載されたものが売上の全てだと主張するじゃないですか。その時に税務署はどういう見方をしてくるのかというと、印刷の請求書だとか、納品書とかを見て刷り部数を確認するわけです。
 刷り部数に売価を掛け合わせた時に、通帳入金額と差があると『何かおかしいですよね?』となるんですね。決して誤魔化さず、適正に申告するためにもしっかりと全ての金額を入金して記録していただくことが最も大切なことなのです」

ーー同人誌はその日のうちに全ての売上金額を銀行口座に入金して記帳する。そして、部数もしっかりと管理する。面倒かもしれませんが、これが一番理想的で安全な方法だと。税金申告上もそうですし、経営的に見てそれが売れてる売れてないという指標にもなりますからね。

西守
「そういうことですね!」

ーーあとは実務面で、支払明細がちゃんともらえない、という方がいまして。印税を払っている出版社ですと幾ら払いましたよという明細を出版社からいただけるのですが、それがいただけない会社もあるみたいでして。そういった場合はどうすればいいのでしょうか?

西守
「支払明細、つまり『支払調書』は原則、会社に送付義務はないんですね。ですが、こちらから送付を依頼した場合には対応しなければなりません。それでもどうしてももらえないという場合は別の手段で証明するしかないですね。振込であれば通帳の入金額でしたり、あるいは手間にはなりますが請求書を発行してコピーを取って送る、といった手段が挙げられます」

ーーありがとうございます。最後になりますが、いま確定申告で迷っている漫画家さん、イラストレーターさんたちにメッセージをお願いします。

西守
「手前味噌になりますが、ナンバーナインさんの確定申告代行サービス『ナンバーナインタックス』は、サービス内容に対して料金は非常にリーズナブルだと思います。より多くの漫画家さんやイラストレーターさんが、1年に1回の慣れない作業に時間を大幅に取られてしまうことなく本業に注力していただけるように、そして、正しく安全で損のない確定申告を実現するために我々も尽力します。そしてもちろんナンバーナインさんにも頑張っていただきたいですね」

ーー本日は貴重な時間をいただき、本当にありがとうございました!

西守
「ありがとうございました!」

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