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珈琲に魅せられた話 (3杯目)

香りがキラキラ輝いて見えるほどに、珈琲豆から立ち上がる甘い芳香に心を奪われた。

目と口をを閉じて深く息を吸い込み、甘い芳香を堪能した。一生、この香りに包まれて過ごせたら、どんなに幸せだろう…と思っていた。

パチパチと珈琲が爆ぜる音で我にかえる。

目を開くと、辺り一面に白っぽいモノが飛び散っていた。

キラキラ見えていたのは目の錯覚で、 焙煎パンの蓋の隙間を通り抜けた珈琲豆の皮だった。

甘い芳香に舞い上がった気持ちは、珈琲豆の皮とともに飛び散った。

焙煎をすすめていくと、それまで甘く感じていた芳香か香ばしくなっていく。爆ぜる音も徐々に高い音に変わってゆく。

ここからは時間との勝負。すぐに豆を冷まさないと、加わった熱で焙煎が進んでしまうからだ。

コンロの火を止め、焙煎パンからザルに珈琲豆を移す。左手にザル、右手に団扇を持ち、玄関の外に向かって駆け出す。ザルをフライパンを返すように振ると同時に団扇で煽り、珈琲豆の皮を吹き飛ばしながら冷却をする。

自分で珈琲豆を焙煎し、そして味わう。皮まみれになってもいい。あの芳香が楽しめるなら。

そんな日々を繰り返していた。

つづく

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